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最近のマイ・ブーム(1):サイモン・キーンリーサイド [Keenlyside]

ちょっと先まで観劇の予定が無いので、今日から今私の気になっている人・物を取り上げていきたいと思います。みうらじゅん氏の言葉を借りれば「マイ・ブーム」ですね。

第一回目は、オペラ歌手のサイモン・キーンリーサイド(Simon Keenlyside)です。

        

日本では知名度は今一ですが、ヨーロッパでは歌う(演じる)役に「はずれ」がないので、ザルツブルク音楽祭をはじめ、あちこちにひっぱりだこの人気バリトン歌手です。一般的にバリトンと聞いてイメージする歌手像とはかなり違って、小柄でよく動くので、一度見れば「ああ、あの人。」と記憶に残りやすいと思います。1997年にフェラーラ音楽祭でアバド指揮の「ドン・ジョバンニ」を歌ったのが特に有名でしょうか。日本では去年小澤指揮のウィーン国立歌劇場公演で「フィガロの結婚」のアルマヴィーヴァ伯爵を歌ってました。多彩な持ち役の中でも特に「魔笛」のパパゲーノと「ドン・ジョバンニ」ははまり役と絶賛されています。今年も9、10月には東京で「タンホイザー」(バイエルン国立歌劇場・メータ指揮)「ドン・ジョバンニ」(ベルギー王立歌劇場・大野指揮・上写真)に出演するので、興味のある方はぜひ。

 私が彼のことを知ったのは、上にも書いたフェラーラ音楽祭の「ドン・ジョバンニ」をNHKで見た時だから、もう7年くらい前になりますか。それからずっと好きな歌手ではあったのですが、今年の1月にロンドンのロイヤル・オペラ・ハウスで「魔笛」のパパゲーノを見てから、すっかりファンになってしまったのです。そこで早速ネットを漁ってみると、出るは出るは、面白いネタの宝庫のような人だったので、簡単にプロフィールを書いてみようと思います。

まず、公式プロフィールの出だしからして何だか可笑しい「ケンブリッジ大学で動物学を専攻」…って、歌と全然関係ないじゃん!(^_^;)そして、陸上で400メートルを走っていた。それじゃあ、歌は卒業後から始めたのかというと、実は子供のころは有名なセント・ジョンズ・カレッジ合唱団(この学校もケンブリッジにある)に所属していた(そして父親はヴァイオリン奏者)。何だかこの時点で既に「?」がいっぱい。その後歌手になるまでもなかなか可笑しい。イギリスで音楽学校をひとまず終了した後、ドイツに語学留学するも資金が底をつき、ユースに泊まりながら夜中に一人で森のど真ん中に行って発声練習をしていた。「1ヶ月ほどそんな生活を続けた後、なんて馬鹿馬鹿しいことをしてるんだと思った。」そうですが、そんなこと1週間くらいで気付けー!(笑)その後密かに転がり込んだ音楽学校で個人的に勝手に教授と話をつけ、無料で指導してもらうことに。その先生は推薦状も書いてくれて、1988年にハンブルク歌劇場で「フィガロの結婚」のアルマヴィーヴァ伯爵を歌ってデビュー。その後は小さな歌劇場を中心にゆっくりと、着実にキャリアを築いて今の売れっ子バリトンに至る、という感じですか。いや、今に至っても波乱万丈なのは相変わらずのようで、スクーターで事故ったり、舞台の奈落に落ちて手首を骨折したり、それでも手首を固定して出演し続けたり、モダンバレエの振り付けのついたシューベルトの「冬の旅」(下写真参照)を歌ったり、と本当に話のネタには困らない人です。  

       

こういった、ちょっとオペラ歌手の高尚なイメージとはかけ離れたエキセントリックな所も私の好みなのですが…(笑「有名になろうとは思っていない。ただ聴衆に満足してもらえるように曲や役を歌うだけさ。」と宣言する彼の次のオペラは、5月のロイヤル・オペラ「1984(世界初演)」(マゼール作・指揮)の主役ウィンストン(Winston)です。


ええと、こんなヘンな紹介でも興味を持ってくれた人がいたら、英語ですがいくつかリンクを。まずは公式プロフィールをどうぞ。後は、ちょっと不思議な彼の性格が出ているインタビューはこちら(Seen&Heard) 、アメリカの雑誌「オペラニュース(Opera News)」の特集はこちらへ(写真のポーズに笑います)。キーンリーサイドのCDはそんなに多くありませんが、どれも高いクオリティを保っていると思うので、声を聞いてみようかな~と思われる更に奇特な方はこちらへ。特にHyperionから出ているシューマンの歌曲集や去年のグラミー賞を獲得した「フィガロの結婚(伯爵役)」(ヤーコプス指揮)などは評価が高いです。個人的にはイギリスのEMIが廉価版で再販したシューベルト歌曲集が安いし歌唱の質も高いし名曲ぞろいでお勧めです(このCDを試聴したい方はこちらへ)。映像ならやっぱりロイヤル・オペラの「魔笛(パパゲーノ役)」は必見ですね。


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コメント 7

Amy

こんにちは。サイモンについていろいろ探してたら、このブログに行き着きました。私も、2003年にROHの「魔笛」を観て以来、大ファンです。
実はその時が初オペラでもありました。彼を観てどっぷりとはまってしまったんです。破産するからオペラにだけは手を出さないでおこうと思ってたのに、、、
声はもちろん、あのオペラ歌手とは思えない動き!、演技の確かさは彼ならではですよね。
今は秋のモネ劇場「ドン・ジョバンニ」来日公演を楽しみにしています。
by Amy (2005-06-05 19:40) 

Sardanapalus

Amyさん、いらっしゃいませ!キーンリーサイドファンの方に来てもらえるなんて嬉しいです~。私はイギリス在住ですが、秋の来日公演に合わせて帰国するつもりです(笑)彼のジョバンニならいくら払っても見たい!(いや、実際はあまり出せませんけど)

>声はもちろん、あのオペラ歌手とは思えない動き!、演技の確かさ
彼の演技力は本当に凄いですよね。私も最初映像で見たとき、「すらっとしたかっこいいバリトンだな~声も良いじゃん…あれ?ええ~?何か訳分からん動きしてる!(@_@)何だこの人!?名前名前!!」って感じでしたから。そして、生で見たらもっと凄かった、と(笑)あの動きで45歳とはとても思えません。

近くマドリッドのロドリーゴ@「ドン・カルロ」も観に行きますので、その感想をまた書きますね~!
by Sardanapalus (2005-06-05 23:07) 

Sheva

Hello!
私も魔笛でやられました~
タンホイザーは、ギャンビルさんが好きでチケを必死で買いましたが、もういまやサイモン…!
タンホイザー、ドンジョヴァンニ会場ですれ違ってるかもしれませんね。
このサイトのおもしろさには完全に脱帽です。大好きです!
また寄らせて下さいませ。
よろしかったらぜひ当方サイトのブックマークに入れさせてくださいませね。
http://plaza.rakuten.co.jp/syeva/
http://blog.goo.ne.jp/syeva/
by Sheva (2005-09-22 23:19) 

Sardanapalus

Shevaさん>
はじめまして!コメントと素敵なブログの紹介ありがとうございます。こんな馬鹿なことばかり書いているブログにお褒めの言葉ありがとうございます!はげみになります。気に入っていただけて嬉しいな~♪ブックマーク、ぜひお願いします!こちらからもgooの方をリンクさせていただきますね!「タンホイザー」私は28日なので、初日の感想よろしくお願いします!!

>魔笛でやられました~
何年のをご覧になりました?今年のだったらロンドンでもすれ違っているかもしれませんね~。
by Sardanapalus (2005-09-23 14:36) 

olive26

テレビでフェラーラ歌劇場のドン・ジョバンニを見て、しびれました。あの頃はVHSに録画したものを何回も見ていました。 以前はネットで検索してもあまり情報がなかったのに、いまやすごい人気?
メトロポリタン歌劇場のハムレットも彼が主役なので、ライブビューイングを見にいきました。演技力と彼の魅力を再確認できましたよ〜
by olive26 (2011-11-25 18:29) 

Sardanapalus

olive26さん>
はじめまして!コメントありがとうございます。私も、キーンリーサイドを知ったのがフェラーラ歌劇場の「ドン・ジョヴァンニ」のテレビ放送でした。このブログを始めたころ(この記事を書いたころ)はまだ少しだけ話題の歌手、って感じだったのですが、それから6年ちょっとの間に、だいぶ状況が変わりましたね。METやROHに頻繁に出演するようになって、映像で見られる機会が増えたのも嬉しい変化ですね。ぜひこれからも遊びに来てください♪
by Sardanapalus (2011-11-26 14:02) 

サンフランシスコ人

私がキーンリーサイドを知ったのが1993年.....サンフランシスコ・オペラの実演....『カプリッチョ』..

http://archive.sfopera.com/reports/rptOpera-id455.pdf

http://archive.sfopera.com/qry12Webpicspop.asp?x_OperaID=455&z_OperaID=%3D%2C%2C
by サンフランシスコ人 (2016-12-14 04:14) 

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