SSブログ

ルソーとジェフ・ウォール [美術・絵画]

今月3日からテイト・モダン(Tate Modern)で開催中のアンリ・ルソー(Henri Rousseau)'Jungles in Paris'に行ってきました。ルソーのジャングルの絵は不思議な生命力に溢れていて大好きなので、期待していきました。前情報では空いているとのことだったのですが、私が行った日は平日の昼間なのに結構混んでいてちょっとガッカリ。あまりじっくりと絵を楽しむことが出来ませんでした。

それでも、かなり頑張って世界中から集めてきたと思われるジャングルの絵たちは、見慣れたものから初めてみるものまで、たくさんあって嬉しかったです。それにしても、ジャングルの絵と言っても全部想像で描いたものですから、気合の感じられないものははっきり言ってダサい(笑)でも、名作といわれる絵にはやっぱりオーラがありますね。ルソーの絵の中で一番好きな「蛇使い」はやっぱり素晴らしかった!また見れて嬉しいです。ジャングル以外の絵で印象に残ったのが「カーニヴァルの夜」(左上)「戦争」。「戦争」の方はそれなりに有名な絵ですし、前にも見たことがあったのですが、中央の少女の野性味溢れる力強さに圧倒されてしまいました。それとは逆に、今回初めて見た「カーニヴァルの夜」の方は静かに、ひたひたと迫ってくるものがあって、惹きつけられました。皆気になるのか、特にこの絵には人だかりが出来ていました。


今回、もうひとつ楽しみにしていったのが現代の写真家ジェフ・ウォール(Jeff Wall)展覧会。テイト・モダンの4階の半分はルソー、もう半分はウォールの展示に使われていました。宣伝で見た「A Sudden Gust of Wind(突風)」←というタイトルの写真が気に入ったので行ってみたのですが、正直言ってルソー展よりも格段に楽しめました!(笑)「突風」は、北斎の富嶽三十六景からアレンジされています。とっても自然な構成ですが、これは百枚以上の写真をデジタル合成して作られた作品だそうで、北斎の方では笠が飛ばされている人がいますが、こちらでもちゃんと真ん中のコートのおじさんの帽子が飛んでました(笑)人も少ないし、じっくりゆっくり見て回れたのも良かったのでしょう。何よりも彼の作品の持つ雰囲気が私の好みにぴったり。ついつい作品集を買ってしまったほどです。

    
展覧会に入ってすぐ目に入ってくるのがこちらの「破壊された部屋(Destroyed Room)」(左)ですが、西洋絵画好きな方、どこかで見たような?と思いませんか?実はこれ、私のプロフィール写真にも使っているドラクロワの「サルダナパルスの死」(右)を下敷きにしているのです!こんな感じで、初っ端から私の好みにど真ん中(笑)西洋絵画を基にした作品には他にも、マネの「バーメイド」や「草上の昼食」をアレンジしたものなどがありました。

でも、彼の魅力は名作のアレンジだけで終わらない所。彼が路上で体験した出来事を、アマチュアの俳優達を使って考え抜いた構成で再現した作品群がこの後に続きます。これらの作品は社会問題を鋭く描き出していて、どの作品にもはっとさせられました。特に「Milk」←は直立する影、ブロック塀、うずくまった男の腕の縦と横のラインに飛び散る牛乳といった各要素がとても綿密に計算されている作品だと思いました。他にも「Mimic(物まね)では、アジア系男性に対して白人男性が目をアーモンド形に引き伸ばしているシーンが切り取られていて、日常的な人種差別の瞬間を強烈に表現していました。どちらも平凡なタイトルと写真の内容の絶妙なバランスが素晴らしい。この写真が切り取っている瞬間の前後のことまで知りたくなります。もっと非現実的な題材としては、戦地で死んだばかりの兵士達が起き上がってお互いの傷を見せ合って笑ったり、死んだことを悲観したりしている写真「Dead Troops Talk」や、文学作品にインスピレーションを得た作品「After 'Invisible Man' by Ralph Ellison, the Prologue」→など、考え抜かれた構図の中に写真家のしっかりとしたメッセージが感じられる作品ばかりでした。

このウォールの展示はテイト・モダンのページで全作品を見ることが出来ますので、興味のある方はぜひバーチャル体験してください(笑)ルソーは高いしもういいかな、と思いますけどこちらの展示は期間中出来る限り行きたいです。ウォールさん、かなりお勧めですよ!


nice!(2)  コメント(4)  トラックバック(2) 
共通テーマ:アート

nice! 2

コメント 4

dognorah

こちらからもTBしました。混んでいて申し訳なかったですね。私は月曜の午後だったのですが・・・
ルソーのお好きな絵が私と重複していてうれしいです。Carnival Eveningは写真でも見たことが無く、今回はうれしい発見でした。所有もとのフィラデルフィア美術館のサイトではこの写真さえ公開していないんですよね。よく貸し出してくれましたよ。
ところで、もし今後1年以上滞在して頻繁にテートに行かれるなら、会員になっておいたほうが得かもしれません。入場料はすべて無料で、何度でもいけますので。
by dognorah (2005-11-13 22:12) 

Sardanapalus

dognorahさん>
>混んでいて申し訳なかった
いえいえ、dognorahさんのせいではないですから。多分丁度ラッシュ時だったんですよ(笑)

>Carnival Evening
dognorahさんの記事で見たときからピンとくるものがあったのですが、実際に目にしたとたん、ぐぐ~っと絵の世界に引き込まれました。この絵は絵葉書も無かったですね。この絵を見れただけでも行ってよかったです。

>会員
そうですよね、今考え中です(^_^;)
by Sardanapalus (2005-11-14 04:46) 

blanc27

はじめまして、blanc27と申します。
Jeff Wallについてブログを書いたので、トラックバックさせていただきました。
といっても、sardanapalusさんの記事がすごいので恐縮なのですが…!
もうすぐJeff Wall展が終わってしまいますね、もう一度行ってこようと思います。
by blanc27 (2006-01-07 04:55) 

Sardanapalus

blanc27さん>
はじめまして~。TBありがとうございます!ウォール展は、2005年に行った展覧会でベストかもしれないです。blanc27さんの記事はよりアーティスト寄りの視点から細かく説明がしてあって面白いです♪これから覗かせていただきますね。ということで(?)リンクに追加させていただきました。これからもよろしくお願いします~。
by Sardanapalus (2006-01-07 08:41) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 2

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。