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オペラ「ビリー・バッド」 [オペラ(実演)]

早速初日の批評が出たので、写真とリンクを追加しました。舞台写真は、ぶらさがってるのがガーディアン紙から、他がmusicOMH.comからです。それにしても、結構な数の批評家が「同性愛嗜好的」な演出って書いてますが、個人的にはそんな騒ぐほどに感じなかったんですけど…演劇でもっとあけすけなのを見慣れているからかな?星は3つから4つですね。キーンリーサイドは概ね好評、トムリンソンとロビンソンは評価が割れてますが、公演全体としてはほぼ良い評価がでています。※12月6日更に批評追加。批評についてる写真が殆ど動きまくってるビリーの1シーンというのが笑います。写真家も撮りがいのある被写体でしょうね(笑)


◆ネット上で読める批評と舞台写真◆

ガーディアン紙(☆☆☆☆)写真有
タイムズ紙(☆☆☆☆)
musicOMH.com(☆☆☆)写真有
テレグラフ紙写真有
インディペンデント紙(☆☆☆)
ファイナンシャル・タイムズ紙
Online Review London
Music & Vision写真多数・各ページ左下のContinue>>で次ページへ
The Stage Online写真有
Seen & Heard写真有


今日からいよいよ今年のオペラ鑑賞の最後を締めくくる演目、イングリッシュ・ナショナル・オペラ(English National Opera)「ビリー・バッド(Billy Budd)」が始まりました。このブログではフライヤー→を散々馬鹿にしていましたが、いつになく豪華なキャストを揃えているし、元々英語のオペラ公演の初日ということで満席かと思いきや、バルコニー(最上階)席は空席もちらほら…でも、普段よりは埋まっていたようです。

あらすじ:後日アップします

まずは演出から。今回は初日だし、私はこのオペラを生で見るのは初めてだし、どうせ良い席は残ってないだろうし、と思ってバルコニー席で節約&舞台全体を見ることにしたのですが、とりあえずこの選択は正解でした。舞台の中央に長方形の巨大な上下動する板があって、それに高さの違う階段をつけたり外したり、板を斜めにしたり、高くしたり低くしたりして場面転換するのですが、はっきり言って、これ1階席からだと首が痛くなると思います。ヴィア船長の部屋とか、かなり高い位置で止めていたし、傾いた状態でぐるぐる回転したりするし、そこだけ見てたらなかなか工夫していて面白かったんですけどね~。いかんせん、それ以外の舞台スペースがガラ~ンとしている場面が多かったのは残念です。タダでさえ男しかでて来ない重たいオペラなので、退屈なシーンは寝ちゃいそうでしたから(^_^;)衣装は結構しっかり軍服作って、まじめに階級別に分けていたと思います。余り詳しくないから良く分かりませんけど。ビリーもその他の船員と分け隔てない、ふつ~の格好しています。2000年のコヴェント・ガーデンの演出では舞台上で絞首刑を行ったそうですが、今回は下手の袖から刑の様子がライトで照らされるようになっていました。それでも刑の直前の'Starry Vere, God bless you!'までビリーが舞台上にいるので、言われてビリーの方をはっと振り向くヴィアとビリーの目線が交差するのが印象的ですね。個人的にこの演出で一番印象的だったのは、ビリーにクラッガート殺害の判決が言い渡される場でした。「船長助けてください!」とビリーがヴィアに訴えかけるシーンで、ヴィアに駆け寄るビリーを士官達が無理やり押さえつけて、そのまま部屋の外に放り出す(ビリーは階段の下へ転がり落ちます)所は、部屋から放り出されたビリーの呆然とした顔まで含めて物凄いリアリティでした。もう、ビリーが可哀想で可哀想で。このシーン、ヴィアが無言でいるのがビリーには余計にきついですね。ここで「お前は有罪だ」とか、「命令に従うように」とか言えないヴィアはやっぱり卑怯だなぁ。映像でもCDでも「ヴィアのこういった部分ってむかつく」と思っていたのですが、それは生でも感じちゃいましたね(^_^;)個人的には「きらめく星のヴィア」よりもクラッガートの方がよっぽど人間として逃げ道の無い生き方をしていて潔いと思います。と、そんなことは置いといて。

歌手は、とにかく主役3人が素晴らしいです。ビリーサイモン・キーンリーサイド(Simon Keenlyside)は「ここ2、3年オファーすら来なかったから、自分はもうビリーには年取りすぎてる」ので、これが最後のビリーだと公演前に宣言しているのですが、あの~舞台上ではむっちゃ若く見えるんですけど…(^_^;)席が遠かったからかな。歌の方は全く心配してませんでしたが、正に適材適所ですねぇ。状況に応じた声のトーンの使い分けが物凄く細かくて、歌っているというより語っているような印象を受ける場面もいっぱいありました。こういうところが好きなんですけどね!文字通り舞台を跳ね回る、軍艦の乗組員になれて興奮している17歳の少年って感じでした。細かい仕草がいちいち「ビリー」なんですよ。仲間とじゃれあってたり、寝言を言いながらノヴィスを足で退けてまた寝ようとしたり(笑)、ヴィアに呼ばれて「今は昇進の話じゃない」と言われた後、「分かりました」と口では言いつつ思いっきりがっかりした(もしくは「一人で盛り上がっちゃってオレってカッコ悪い~」という)顔をしたり、本当に生き生きとしたキャラ作りでした。メモ欄で紹介した'In Tune'でも「やり過ぎは馬鹿みたいだけど、役として要求される程度は動けるようにすべき」と言っている通り、期待を裏切らずに動きまくってくれました。階段を2段抜かしで駆け上がる、舞台を垂直に横切る梯子を滑り降りる、舞台の端から端まで走り抜ける、訳の分からないところから階段に飛び乗ってくる、階段から転がり落ちる、上述の長方形の下についているバーに飛びついたかと思うと片手片足でぶら下がって歌う↓…まあ、とにかく元気いっぱいでした。あ、期待を裏切らないといえば、今回も1幕の後半はずっと半裸だったなぁ(笑)本人も堅苦しい衣装を着なくて済んで嬉しいことでしょう。

       
                     …猿ですか?

今回もう一人の豪華キャストはクラッガートジョン・トムリンソン(John Tomlinson)でした。これで私は3ヶ月続けてトムリンソンのでているオペラをロンドンで見たわけですが、今回も相変わらず良く響く深い声で、とっても怖いクラッガートを説得力たっぷりに歌ってくれました。先月まで生えていた髭も綺麗に剃って(軍人だから当たり前)、何だか死人のようなメイクをしていたので最初は「ほんとにトムリンソン?」と思いましたが、格が違う声とは正に彼の声を言うのでしょう。どの場面でも歌えば一声で「あ、クラッガートが出て来た」と分かりました。本当に素敵な声してますね~。今年左膝を怪我(「爆発した(exploded)」って言ってたから膝のお皿を粉砕骨折?)して手術したそうですが、本人が「今はもう大丈夫」と言うとおり、最後までどっしりした重さのあるクラッガートでした。

それから、今回ヴィア船長役デビューのティモシー・ロビンソン(Timothy Robinson)は、2000年のコヴェント・ガーデンの「ビリー・バッド」ではノヴィスだったそうですので、今回は大抜擢ですね。当然まだ若いです。が、老けメイクが良く似合っていたし、ひょろりとした感じの外見が神経質そうなヴィアにぴったり。声も良いし、演技もまずまず、呼びつけたビリーが昇進の辞令を貰えると思って喜んでいるのを見て微笑みながら、「この男が裏切るわけが無い!」と喜んでいる場面と、その後の事故と苦しい選択、最後の独白の「ある男を殺した」とつぶやくシーン、それぞれに説得力があって良かったです。本人の言うとおり「ブリテンに合っている」声だったと思います。初めて聞く人だったので全く白紙の状態で聞きに行きましたが、このヴィアはかなり気に入りました。

他のキャストは、可もなく不可もなくでしょうか。とにかく全員男なので小さい役になるに従ってどうでも良くなってくるというか、見分け、聞き分けが出来なくなってくるというか(笑)今回生で見てもオペラ全体を好きになることは出来なかったし、退屈な場面はやっぱり退屈だったし、重唱部分の歌詞の聞き取れなさとかブリテンの音楽と英語の相性の悪さはやっぱり苦手だったし、はっきり言って脇役まで名前を覚えていられないです…。ブリテン好きな方には申し訳ないんですけどね~。このキャストじゃなかったら絶対見に行くことはなかったでしょう。そして、よっぽどのことが無い限りこれからも見ることは殆ど無いと思います。とりあえず、この12月はキャストに釣られて後2度ほど行ってしまいそうですけど(笑)
カーテンコール:左から演出、指揮、
キーンリーサイド、トムリンソン


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コメント 6

Belle de Nuit

初日のレポート、ありがとうございます! 

sardanapalusさんの記事を読んでいると、やっぱり舞台が観たくなりますね〜。
キーンリーサイドも最後のビリーのようだし、日本在住の身としては
せめて映像にして欲しいものです(泣)。CDだけだと聞き通せなさそうですし。

>状況に応じた声のトーンの使い分けが物凄く細かくて
もっぱらCDとかDVD派の私もそう思います! 声でも細やかに演技しているというか。生だったら、さらに感動的ですね(^^)。
そういえばBBC3のインタビューでびっくりしたのですが、キーンリーサイドの話す声って
思ったより高くて、ソフト(というかナイーブというか)なんですね。
話声も思い切り「若いなぁ」と感じました(笑)。トムリンソンは、話声も渋くてステキでした!
(内容の方は、ファンサイトの方が起こしてくれた文字情報が頼りです^^;;)
by Belle de Nuit (2005-12-04 18:13) 

Sardanapalus

Belle de Nuitさん>
早速のコメントありがとうございます!今日もちょっと追加したりするつもりです。

>CDだけだと聞き通せなさそう
私もCDじゃ駄目です(笑)ヴィアの船室で士官達が「フランス人は嫌いだ!」ってひたすらその理由を言い続けるシーンとかは苦痛以外の何でもないですし、実は最後のヴィアの独白も私には長すぎるんですよね(笑)

>キーンリーサイドの話す声って思ったより高くて、ソフト(というかナイーブというか)
意外に高いですよね。私も最初は「これでバリトンなの?」って思いました(笑)特徴的なのですぐに聞き分けられるのはファンとしては嬉しいですけど。バスの歌手になると皆さん渋くて深い声してますよね。トムリンソンの話し声、私も素敵だと思います☆
by Sardanapalus (2005-12-04 19:51) 

ロンドンの椿姫

ティモシー・ロビンソン気に入って頂けて嬉しいです。彼はちょっと前まで(3年くらいかしら?)ROHのハウステノールで脇役としてしょっちゅう出ていて、よく通る高音で私はファンだったのですが、ここで脇役として安定した地位に甘んじるより小さな歌劇場で主役をやる可能性に掛けたいと言って去っていきました。それから一度も観ていないのですが、順調に育っているようで安心しました。

ビリー役、サイモンより向いてる歌手は絶対いないですよね。2000年のROHのビリーが私にとって初めての生サイモンだったので、特に印象が強いです。映像のト-マス・アレンは立派過ぎますもんね。

私は12日に行くのですが、今回この顔ぶれだからこそ高い最前列席を買ったわけだし、もうこのオペラ観るのも多分最後だから(何度も観たいものではないものね)、楽しみにしています。その前にまた細かい見どころ教えて下さいね。

http://peraperaopera.ameblo.jp/
by ロンドンの椿姫 (2005-12-04 21:35) 

Sardanapalus

ロンドンの椿姫さん>
>脇役として安定した地位に甘んじるより小さな歌劇場で主役をやる可能性に掛けたい
へえ~そういういきさつでしたか。彼はそうして正解だったと思いますよ。イメージにぴったりのヴィアでした。映像のラングリッジとも甲乙つけ難いくらいです。お気に入りの歌手が成長して戻ってきた、なんて嬉しい話じゃないですか~!時間があったら10日のラジオ中継も聞いてあげてください。

>ビリー役、サイモンより向いてる歌手は絶対いない
絶対かどうかは不明ですけど、とっても身軽で元気いっぱいの17歳、というイメージにはぴったりですね。今聞けるビリーの中では1、2を争うクオリティでしょう。

>もうこのオペラ観るのも多分最後
この公演と同じレベルと思えるキャストでなければ、私も二度と生では見ないですね(笑)後味が悪いですから。
by Sardanapalus (2005-12-05 03:41) 

Sheva

こんばんは! いいなぁ~Billy. ビリーに会いたい~~
 「猿?」に爆笑しました。見たいよ~Simon like a monkey!
☆4つというのはどうなんですか? 絶賛? まあまあ?
ところで、「ドン・カルロ」、フランス語版なんですか?
へえ~~演出家は誰でしょう? 何かほかの情報はございませんでしょうか。ぜひ、知りたいです。
このあいだ、イリーナ・コトルバスのROH(ハイティンク指揮)のイタリア語版も買いました。やっとイタリア語Getしたと思ったらフランス語ですか! 
それにしても江川さん情報の「8」は当たりだったんですね。
by Sheva (2005-12-08 21:42) 

Sardanapalus

Shevaさん>
こんばんは~。全体のイメージとしては猛禽類なビリーなんですけどね、ここは正に「猿」としか言えないです(笑)リンクした批評の中のMusic&Visionの2ページ目で別角度からの写真が見れますよ。そっちの方がぶらさがり具合(笑)を良く感じていただけると思います。隣の席のおばちゃんは'Good God!'ってハラハラしながら見てました(^_^;)

>☆4つというのは
☆5つが最高評価なので、かなり高評価ですね。大体☆3つついていれば誰でも楽しめるレベルの公演といえると思います。

>「ドン・カルロ」、フランス語版なんですか?
2008年にロイヤル・オペラが「ドン・カルロス」で来日予定、キーンリーサイドがポーザを歌う、というキーンリーサイドのファンサイトからの「予定」情報しかまだ分かりませんが、おそらくフランス語版ではないかと。
http://www.simonkeenlyside.info/Articles/WhatsNew.html

イタリア語だと'Don Carlo'表記ですからね。新演出で無いならば、実はコヴェント・ガーデンの演出はShevaさんも入手されたパリ・シャトレ座のやつです。個人的には、あの演出でキーンリーサイドのロドリーグが見れるなら何があっても見に行きますよ!(笑)

>江川さん情報の「8」は当たり
まだ3年もありますねぇ~。ああ、詳細発表が待ち遠しすぎる!(>_<)
by Sardanapalus (2005-12-08 23:34) 

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