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演劇「メアリー・ステュアート」 [演劇]

さて、3日の「ピノキオ」は実はマチネ公演、ということで夜もふらふらと別の劇場へ行ってしまいました。やっぱりウェスト・エンドは毒ですねぇ~。見たいものはいくらでもあるし、当日券も安いんですもん!(^_^;)

今回行ってきたのは開幕から行きたいと思っていたシラー作「メアリー・ステュアート(Mary Stuart)」。センスの良い小劇場のドンマー・ウェアハウス(Donmar Warehouse)で好評だった舞台を大きな劇場に移しての公演です。が、1月の14日で終わりそうなので、昨日ふと通りかかったついでに、気づいたらチケットを購入していました(笑)

あらすじ:スコットランド女王のメアリーは姉でもあるイングランド女王エリザベス1世への反逆罪の容疑者として監獄での生活を送っている。何とか自由の身になりたいと女王への手紙を書いたりフランスの王族に助けを求める手紙を書いたりするが、なかなか上手くいかない。そんな中、監視役パウレット卿の甥モーティマーが隠れカトリックとしてヨーロッパ外遊から戻り、メアリーの救出計画を告げる。彼を信頼したメアリーは彼を使って昔の恋人で今はエリザベスの恋人グロスター伯に助力を頼む手紙と絵姿を渡す。権力のためだけにエリザベスの愛人の地位にいたのにエリザベスがフランス王太子と婚約し面白くないグロスター伯は、メアリーからの要請に影ながら様々に援助をするが、モーティマー達のメアリー救出計画が事前に崩壊し、知らせを受けて逆上したエリザベスはメアリーの処刑を宣告する書類にサインをする。書類は「預かっておくように」と言われたのだが、真意を測りかねた秘書官ウィリアム・デーヴィソンはそれをメアリーの反逆罪の追求者に渡してしまい、メアリーは処刑される。すれ違いに、エリザベスはメアリーを今殺すのは得策でないという忠告を受け入れ、書類を破棄しようとするが既に命令は実行された後。その責任をとらせる形でデーヴィソンをロンドン塔に送り、改めて周囲を見回すと長年の頭痛の種だったメアリーを処刑して荷が軽くなったはずのエリザベスの元には、一人の忠臣も残っていなかった。

はい~暗いです(^_^;)新年から凄いエネルギーの要るシラーの歴史劇を見てしまいました。ああ、疲れた~。でも行ってよかったです!とにかくシラーって凄いですね捨てシーン無し!あ~やっぱり去年やってた「ドン・カルロス」も見ておくんだったー!まあ、どのシーンも退屈しなかったというのはピーター・オズワルド(Peter Oswald)による英語新訳がとっても分かりやすくて現代英語なことと、演出家のフィリダ・ロイド(Phyllida Lloyd)の功績も大きいでしょうけど、ドニゼッティがオペラにしたのも頷ける面白さです。この公演では装置や衣装は最小限、省エネで出費を抑えてます。エリザベスはドレス一着を着っぱなしだし、メアリーもニ着。男性陣は皆スーツです。何故か男女間の衣装の時代差があまり気にならない演出でした。場面転換と舞台の使い方は正に小劇場のドンマーを想定して作ったんだね~と思わされるシンプルなものですが、それも効果的。台詞も現代英語で演技も時代劇になりすぎず、しぐさも言葉遣いも親しみのあるものだったので、力強いストーリーの展開が良く分かって楽しかったです。まあ、言ってしまえばこういう演劇って、俳優が良ければ大げさな装置は要らないんですよね。

その点、今回は主演俳優のレベルが素晴らしかったです。メアリーのジャネット・マクティーア(Janet McTeer)も、エリザベスのハリエット・ウォルター(Harriet Walter)もどちらも文句なし!正に王位と誇りを巡って複雑に交錯する女王の心情を見事に演じきってくれました。

マクティーア(写真右)は本当に自然体で等身大のメアリー。グロスター伯の計らいで、不当な扱いを続けたエリザベスにようやく出合ったメアリーが、下手に出るにも拘らず罵倒されてついにぶち切れて(笑)エリザベスを逆にやり込めるシーンのかっこいいこと!罵倒されたエリザベスが色を失って去った後、「ぐおー!」と叫びながらガッツポーズをしていたのには客席から賛同の笑いが起きました。何て男前なんだ~!処刑の前に、乳母に対して「最期が来たらこれで目隠しをしておくれ」と頼む姿と、泣き崩れる乳母に客席も号泣~。久しぶりに劇場で泣きました。

エリザベスは本当は王としての重圧に押しつぶされそうなのに、意地を張って「女王(Queen)」ではなく「女の王(Woman King)」として振舞っているのですが、グロスター伯の前では甘えん坊。メアリーの存在への恐れと、イングランドの王としての分別のある行動の間で揺れます揺れます。最初は有能な忠臣に囲まれていた彼女が、最後に一人でポツンとたたずむ姿は、ただの「悪役」ではないエリザベスの孤独を示していて、感動的でした。

それから、個人的にはパウレット卿のマイケル・シムキンズ(Michael Simkins)をまた見れたのが嬉しかった!この人イギリスではそこそこ有名な俳優で、本もいくつか書いてます。ガーディアン紙のインタビューもあります。前に彼を見たのは、驚く無かれ大ヒットミュージカル「マンマ・ミーア」です(笑)彼のサムはかっこよかったんだよな~!!お陰で何度も通っちゃいましたから(笑)「トロイの女達」で再会したマクファディエンがロージーだったのも同じ時期です。豪華だったなぁ~。それにしても、シェイクスピアにシラーにアングラに「マンマ・ミーア」…多才な人たちですね。

ということで、今年の劇場はじめは昼も夜も大充実で好調なスタートでした。今年もこのままの調子で面白い作品がいっぱい見れるといいなぁ。


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コメント 6

助六

シラーを含む2連荘とは凄いエネルギー!小生の年代になると集中して観たつもりでも、数年後には観た事実さえ失念する始末なので、本当に観たい時に予算・時間・体力の続く限り観ておくと、一生財産になると思います。
シラー劇はユーゴー劇と共に、イタリア・ロマン派オペラ理解にも重要なのでしょうが、重いから中々行く元気が起こりません。貴重な経験ですね。「メアリー・ステュアート」は、10年ほど前、ロンドンのナショナル・シアターでイザベル・ユペールが演じたのが評判になったのを憶えています。

>フィリダ・ロイド
もうすぐROHでも彼女演出の「マクベス」が再演されるようですね。パリ・オペラ座も同じプロダクションを99年新演出で出してました。当時財政難で1年間休演という荒療治に出たROHから買ったという話でした。仏紙評はコテンパンでしたが。

>演技も時代劇になりすぎず、しぐさも言葉遣いも親しみのあるもの
シラーもユーゴーもまともにやったら、現代の我々には大仰でシラケちゃいますよね。あの強烈なエネルギーを失うことなく、我々にも実感のあるドラマとして見せるのが、演出家と役者の腕の見せ所なんでしょうね。
by 助六 (2006-01-06 07:48) 

Sardanapalus

助六さん>
>シラーを含む2連荘とは凄いエネルギー!
ロンドンの劇場は古くて座席もぼろっちいのであまりこういうことはしないのですが、昼のリンブリー劇場は見やすくて座席もしっかりしていたので疲れなくて、ついついはしごしちゃいました(笑)

>>フィリダ・ロイド
>もうすぐROHでも彼女演出の「マクベス」が再演
今度ハンプソンがマクベスやるあの演出も彼女ですか!って、舞台写真しか見たこと無いですけど(^_^;)ありゃ~これは俄然見たくなりましたねぇ。ハンプソンも、チューリッヒの映像でも説得力のあるマクベスだったし…でも、この期間は日本に帰る予定なんですよね~。ああ残念。

>あの強烈なエネルギーを失うことなく、我々にも実感のあるドラマとして見せる
英語のシラーって、日本語訳されたシェイクスピア劇みたいな雰囲気ですね。上手く演出すれば原語上演にはない魅力があると思います。ドイツではシラーはどういう捉えられ方してるんでしょう?
by Sardanapalus (2006-01-06 09:42) 

YUKI

ご無沙汰していました。(^^;)

メアリー・スチュアートってスコットランドの女王だったんですよねぇ。
この演劇もシラーのものでしたかぁ~?!
シラーのものって歴史的な題材が多い様な気がします。

まだ観た事が無いですが確かメアリー・スチュアートの題材のオペラでドニゼッティ作曲の「マリア・ストゥルダ」って作品がありましたねぇ。
Storyはエリザベス1世と色々あって最後は処刑されてしまうって暗い内容でしたねぇ。
by YUKI (2006-01-09 10:55) 

Sardanapalus

YUKIさん>
お久しぶりです~。こちらこそご無沙汰してます!あ、私がリンクしているブログの内容を変えられたんですね。では、クラシック関係のブログの方に再リンクさせていただきます。これからも引き続きよろしくお願いします♪

>ドニゼッティ作曲の「マリア・ストゥルダ」
それそれ、YUKIさんのブログで読ませていただいたりしましたけど、まさにそのオペラの原作です!この戯曲がオペラではどうなっているのか、俄然興味がわいてきましたよ~。
by Sardanapalus (2006-01-09 21:48) 

YUKI

やはり「マリア・ストゥルダ」だったんですねぇ。(^_^)
ドニゼッティが案外英国の王室のものが多いですよねぇ。
このオペラはまだ日本では上演されているのはあまり聞かないですが、映像かCDが出ていた様な・・・売る覚え気味ですが。(^^;)

リンクお手数おかけしましたm(__)m
有難うございます。m(__)m

livedoorの方も不具合の説明書きをしてBlog復活させましたが、あそこは容量が2.1GBに到達すると更新出来なくなりますので、今ではアメーバ-Blogの「オペラ・クラッシック音楽ノート」の方が有難いです。(^o^)
アメーバ-BlogとDoblogがログ保存容量が無制限なので。(^o^)
それでlivedoorBlogの後継は「オペラ・クラッシック音楽ノート」にする事を考えていました。(^_^)

また機会があれば共通記事を見つけたらアメーバ-BlogやDoblogからもTBさせて頂くと思いますが宜しくお願いします。m(__)m
by YUKI (2006-01-09 22:34) 

Sardanapalus

YUKIさん>
>「マリア・ストゥルダ」
>映像かCD
そうですね、まずは映像で探してみます。どこかで見かけた気がしますので(笑)

>アメーバ-BlogやDoblogからもTB
どんどんしてください!お待ちしています。
by Sardanapalus (2006-01-10 00:10) 

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