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オペラ「売られた花嫁」 [オペラ(実演)]

最近怒涛のように劇場に通っていますが、20日には珍しいベドジッヒ・スメタナ(Bedrich Smetana)のオペラ「売られた花嫁(The Bartered Bride)」を見に、コヴェント・ガーデンへ行ってきました。といっても原語のチェコ語でやるわけではなく、英語翻訳での上演です。歌手も、いつもはENOで活躍している、英語を歌いなれた歌手達を揃えています。特筆すべき歌手としては…この前のビリー・バッドで生真面目なヴィア艦長だったティモシー・ロビンソン(Timothy Robinson)が、打って変わって三枚目役のヴァシェクを歌っています。

あらすじ:貧しいながらも熱愛カップルのマジェンカイェニクだが、マジェンカの父親は多額の借金を帳消しにしてもらう条件で、金持ちミーシャの頭の足りない息子ヴァシェクとマジェンカを結婚させることを約束してしまう。そこからは相思相愛のマジェンカとイェニクを別れさせるため、マジェンカは父親が、イェニクは結婚仲介人ケカルが説得に当たることになる。借金があるから頼む、と言われたマジェンカは、ヴァシェクの元へ密かに近づいて「結婚を約束したマジェンカはあなたのことを殺しかねない」と単純なヴァシェクを怖がらせて結婚の約束を破綻させようとする。一方マジェンカを諦めて遠い故郷へ戻るように、と金をちらつかせて説得するケカルを最初は頑として聞き入れなかったイェニクだが、そのうちころりと態度を変えて「マジェンカはミーシャの息子と結婚すること」「この結婚でマジェンカの父親の借金を必ず帳消しにすること」を条件に、マジェンカを諦める契約書にサインをしてしまう。それを知ったマジェンカは最初は信じないが、イェニクがサインしたことを認めると、それならいっそ一生独身でいると言い張るが、ケカルと父親の必死の説得で半ばやけっぱちで結婚証書にサインをする。その直後にイェニクはミーシャの失踪した長男であることを打ち明け、マジェンカは契約の通り、「ミーシャの息子」である自分と結婚するのだ、と宣言する。ヴァシェクはヴァシェクで村にやって来たサーカスの綱渡りのエスメラルダと恋に落ち、2組の幸せなカップルが誕生して幕。

まあ、ストーリーは田舎臭いと言うか、よくある話と言うか、どうでも良いような話と言うか(笑)1幕でイェニクが裕福な家に生まれたけれども父の後妻に家を追い出されて放浪してこの村にやって来た、という暴露話をマジェンカにするのですが、その直後にミーシャの息子は実は2人いたけど長男はもう長い間行方知れずだ、という話が出てくるので、話の冒頭の段階で、ミーシャの長男=イェニクという一番の複線が見てる人皆にバレバレ(笑)だから、イェニクが証書にサインする時も、結末を予想しながらのんびりと見ていられるオペラでした。一番の盛り上がりは、3幕頭のサーカスシーンでしょうか。本当に曲芸師やピエロが登場して、空中ブランコやジャグリングを見せてくれるのです。ここは客席も大いに盛り上がってましたね。

音楽としては、思いっきりスメタナ色が出ている東欧の民族音楽を多用したもので、まるでオペラと民族音楽とスメタナの交響曲を同時に聞いているかのようなお得な作品でした。序曲もしっかりあるし、民族音楽をアレンジした5月祭の民族舞踊もあるし、アリアもとても東欧風。メロディアスで、ちょっと物悲しい雰囲気の耳なじみのいい曲ばかりでした。これは「皆さんご一緒に歌いましょう(Sing-a-long)」というイベントをやりたくなるのも分かりますね。それにしても、このイベントどれくらいの人が参加したんだろう?(笑)

音楽はとても魅力的でしたが、歌詞は英語訳があまりにも…何と言うか、ださい。いえ、まあチェコ語でも田舎っぽい歌詞の数々でしょうけど、むりやり音符にはめこんだ英語だと、まるで小学生の作文レベルのへたくそな愛の言葉がこれでもか~と登場するので、そこら辺のブロードウェイ・ミュージカルも真っ青の歯の浮くような台詞だらけなのです(^_^;)1幕が終わるころには既に「これが後2時間あるのか~」と頭痛がしてきたくらい参ってしまいました。もう2幕以降は歌詞はなあなあで(見ていれば話の展開は分かるので)音楽だけ聞きました(笑)それにしても、こんな単純な話なのに休憩抜きでしっかり2時間40分くらいあるんですよ。いつも10時代に終わるROHなのに2度の休憩を挟んで終演が11時でビックリしました。

とにかく、スメタナのオペラというのと、好きな指揮者チャールズ・マッケラス(Charles Mackerras)が指揮をするというので行ってきましたが、それなりに楽しかったです。もう一度行きたいかと言われるととっても微妙ですが、イェニクがトビー・スペンス並の歌手なら行くでしょう(笑)


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コメント 10

ロンドンの椿姫

うん、わかるわかる。私は先回見て同じことを感じたわ。楽しいサーカスシーンがたくさんあるかのように宣伝されてたので、子供が結構来てたけど、皆死ぬほど退屈してた。サーカスはちょっとだけだもんね。
今回もティモシー・ロビンソンが出るので行こうかとも思ったけど、先回観たし、主役じゃないし、マジェンカ役はあまり好きでないスーザン・グリトンだったからパスしました。チェコ語でやってくれるなら又行きたいけどね。
http://peraperaopera.ameblo.jp/
by ロンドンの椿姫 (2006-01-22 09:34) 

Sardanapalus

おお、ロンドンの椿姫さん、早速のコメントありがとうございます。のほほんとしたオペラで、途中眠くなるほどでしたけど、あれは子供にはそんなに楽しくないですよね。まあ、大人にとっても大したストーリーじゃないですけど(笑)

うん、今回のイェニクのサイモン・オニールは今一でしたので、無理していらっしゃらなくても大丈夫だったと思いますよ。おでぶでカツゼツが悪いイェニクに比べてヴァシェクが可愛いかったので、私だったら途中で心変わりしそうでした(笑)
by Sardanapalus (2006-01-22 09:49) 

agojun55

私はピータ・ローズをきくだけでも満足しましたけど。 

スメタナの’オペラと民族音楽と交響詩’を同時にマッケラスの指揮で聴けたことは贅沢の限りでした。

トビーあの絶好調だったら’理髪師’と’花嫁’同時にやってほしかった。
by agojun55 (2006-01-22 21:03) 

keyaki

「売られた花嫁」って、序曲はよく聴きますけど、ややこしい話なんですね。
>ミーシャの長男=イェニク
ということは、イェニクとヴァシェクは兄弟ってことですか。
by keyaki (2006-01-23 01:26) 

Sardanapalus

agojun55さん>
>ピータ・ローズ
確かに、彼は面白かったですね。

>スメタナの’オペラと民族音楽と交響詩’を同時にマッケラスの指揮で
私はマッケラスでなければ行かなかったでしょう(笑)行って、聞いて大満足でした。

keyakiさん>
>「売られた花嫁」
>ややこしい話
日本語は「売られた」ですか。知らなかったので、また訂正に使わせていただきますm(_ _)mそう、これはややこしい話なんですよ~。イェニクとヴァシェクは異母兄弟です。
by Sardanapalus (2006-01-23 07:56) 

keyaki

>イェニクとヴァシェクは異母兄弟です。
後妻に追い出されたってことで、継子いじめね。
よく読んだら書いてありましたね。

大昔の名曲解説辞典を引っぱり出して読んでみましたが、見ている場合は参考になりますが、見てない場合は、??なんですよね。
Sardanapalusさんのあらすじの方がわかりやすいです。

2時間40分とは、ちと長すぎですね。
解説辞典受け売りの豆知識ですが、
外国公演をめざして、会話を全部レチタティーヴォに直したそうですから、そのせいで長くなっちゃったんでしょうね。
でも不評で、国際的に認められたのが、スメタナの死後なんですって。
「カルメン」と一緒ですね。カルメンもレチタティーヴォ版はだらだら長くてあきちゃいますものね。
by keyaki (2006-01-23 10:13) 

ローズ

マジェンカのアリアを歌うのですが、日本語訳教えてくださいぃ(*/。\*)
by ローズ (2006-03-20 22:01) 

Sardanapalus

ローズさん>
折角のコメントなのですが、英語の歌詞が分からないので日本語に訳せません。ごめんなさい~。確か、「好きな人は結婚直前に私を裏切った、これで金持ちとの結婚証書にサインしたら私は終わりだわ」とかいう内容だったと思います。お役に立てず申し訳ありません。

もし、お手元に英語訳をお持ちなら「プロフィール」に載せてあるメールアドレスに送ってください。
by Sardanapalus (2006-03-21 22:01) 

マリー

私も今度マジェンカのアリアを歌います。今必死に曲目解説を探していたら、ここにたどり着きました。私はドイツ語で歌うので、ドイツ語の訳を探しています(笑)
by マリー (2006-06-29 18:26) 

Sardanapalus

マリーさん>
折角たどり着いた先が役にたたない情報源で申し訳ありません。しかし、ドイツ語っていうのも凄そうですね。
by Sardanapalus (2006-06-29 21:44) 

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