オペラ「フィガロの結婚」@アン・デア・ウィーン劇場(2001年) [オペラ(音源・映像・その他)]
オリンピックも終わって落ち着いたので有意義な時間を過ごすぞ企画(あれ、名前変わっちゃった^_^;)第2弾は、引き続き手持ちの「フィガロの結婚」の映像から、2001年のアン・デア・ウィーン劇場での公演を選んでみました。有名なアバド指揮の1991年の公演ではありません。この時の指揮者はリッカルド・ムーティです。演出は、何とジョルジョ・ストレーレル版を復活させたもので、王道の設定の中にも様々な新鮮な発見がある演出です。伯爵夫婦とフィガロ、スザンナ、ケルビーノの上下関係はかなりあいまいというか、主従というよりは家主と間借り人といった感じです。しかも、各登場人物の動きも激しくてかなり慌しい雰囲気のフィガロで、ドラマではなく、実際にその場に生きている人々を見ている感じです。
ムーティの演奏は、軽快なジョギングというよりはかなり真剣な徒競走(笑)といった感じですが、早くてメリハリのある、私好みの演奏です。小さめの劇場だからか、オーケストラと歌手の声の関係が密接でワクワク感があって、特に2幕中盤からの重唱の連続する場面は何度でも繰り返して聞けそうです。好みに合うとはこういうことを言うのでしょうね。歌手は、まあ、頑固者ムーティの意思も入っているでしょうけど、人気のある中堅どころを揃えた感じです。歌手がかなり指揮者を気にしているのは、やっぱり後で煩いからでしょうか?(笑)
伯爵はキーンリーサイド。この演出(再演出?)では彼らしい=落ち着きの無い伯爵を、まるで水を得た魚のように演じています。私が今まで見た数々の伯爵の中で年齢設定が一番若いですね。よくある中年の伯爵ではなく、正に「セヴィリアの理髪師」の数年後、という感じです。普段は若いながらもお茶目で頭の切れる君主のようですが、相変わらず恋に落ちたら一直線(笑)スザンナを狙われたフィガロが真剣に心配するくらい手が早いです!スザンナは2人きりになるたびに、あっという間に伯爵の腕の中…気絶したスザンナもちゃっかり独り占め(本気でバジリオの頭ひっぱたいてるし^_^;)更にかなり短気で、生意気に口答えするケルビーノもフィガロも、殴る寸前までいきます(夫人には手は上げませんが)。2幕後半はずっと怒りっぱなしなので、何もしていないのに次第にかつらが乱れていくのが分かります(笑)
フィガロのアルヴァレスは豊かな声と顔の雰囲気がフィガロにぴったり(個人的に、ジョヴァンニよりもフィガロかレポレッロで見たい歌手です)。コミカルな演技も上手く、伯爵に手紙のことを尋ねられる場面などでは、烈火のごとく怒る伯爵をおちょくったような演技がとても楽しそう。見てるほうもここは爆笑です。好きな声か?ときかれると違う気がしますが、好きな演技か?と聞かれれば正にその通り!歌いながら動き回ってくれて最高です(^^)
この2人は声質と雰囲気が全く違うし、どちらも役になりきって面白い演技をしてくれるので伯爵とフィガロとしてはぴったりの組み合わせだと思います。
そして、女性陣ですが、スザンナは小柄でかわいらしいリシュニクが舞台狭しと駆け回っています。声や歌い方は好みが分かれそうですが、演技が出来るので私は大満足です(^^)
伯爵夫人はディーナーがやっていますが、気品ある雰囲気と常に漂う哀愁が素敵です。ちょっと演技が硬いのと、身長がずば抜けて高くて周りのキャストとアンバランスなのがちょっとマイナスです(下写真参照)。
左から4人目がフィガロ、スザンナ、伯爵夫人、伯爵、ケルビーノ
音だけなら充分合格なんですけど、お願いですから彼女を使う時は背の高い男声歌手を連れてきてください!この映像だと、身軽な年下の伯爵が、大柄で落ち着きすぎの年上の夫人に飽きてスザンナに心変わりしちゃったみたいだし、フィガロもスザンナもまるで中学生…それじゃあ話の筋が違うでしょう(笑)この夫人とスザンナが入れ替わっても気づかないなんて、いくら何でもありえないし(^_^;)
そして、ケルビーノのキルヒシュラーガーも好演。彼女も演技できる歌手ですね。去年見た、ヤーコプス指揮の映像よりもこちらの方が伸び伸びと歌えているように思います。このケルビーノ、かなり無礼で伯爵の辞令も守る気があるとはとても思えません(笑)
他の歌手も特に男性は良く揃っていると思います。女性ではマルチェリーナがちょっと不調なのか?これが実力なのか?高音が苦しそうですが、他は文句無し。好きな歌手が出ているということもありますが、それ以上に演奏のテンポが気に入っている映像です。
ちなみに、このストレーレルの演出は様々な歌劇場で上演されていますから、昔全く別の指揮・歌手での公演映像を見たこともあります。そちらが誰だったのかは全く記憶に残ってないですけど、この映像を見て、「あれ?この衣装とセット見たことあるぞ?」と思い出しました。とりあえず、テンポはもっとゆったり目で、もっと落ち着いた演技でしたし、歌手の背のバランスも良かったです(笑)
「フィガロの結婚」 アン・デア・ウィーン劇場(2001年)
※英語での詳しい公演情報はこちら
指揮:リッカルド・ムーティ
演出:ジョルジョ・ストレーレル原案、ミヒャエル・ヘルター(Michael Heltau)
アルマヴィーヴァ伯爵:サイモン・キーンリーサイド
伯爵夫人:メレイヌ・ディーナー
フィガロ:カルロス・アルヴァレス
スザンナ:タチアナ・リシュニク
ケルビーノ:アンゲリカ・キルヒシュラーガー
マルチェリーナ:フランチェスカ・ペダーチ
バルトロ:マウリツィオ・ムラーノ
ドン・バジリオ:ミヒャエル・ロイダー
バルバリーナ:イリアーナ・トンカ
ロイヤルオペラの大興奮の’フィガロの結婚’も終わりなにか気が抜けた感じ。
”神々の黄昏”までぼーとしていそう。
今日は暖かでロンドンにも春が確実にきています。もう6時半ぐらいまで明るくなりました。
by agojun55 (2006-03-01 03:59)
すっかりフィガロブームですね(^^
この映像も観たことないわ…
>昔全く別の指揮・歌手での公演映像
もしかしたら、'80パリのショルティ盤かな?この映像の演出が、ストレーレルって全然意識してなかったんですけど、《全て準備は整った》特集でこの映像から音を取った時に、ふと名前が目に留まったので…
それに、皆さんの衣装も似てるような気がします。
あんまりちゃんと観てない映像なので、時間のある時に見てみますね。
(歌手陣は、ファン・ダム@フィガロ、ルチア・ポップ@スザンナ、ヤノヴィッツ@伯爵夫人、ガブリエル・バキエ@伯爵、フォン・シュターデ@ケルビーノ+モル@バルトロ…といった布陣です)
by ヴァラリン (2006-03-01 08:04)
agojun55さん>
ROHの「フィガロの結婚」のせいで、フィガロが「マイブーム」中です。ROHリング最終章の「神々の黄昏」も歌手が揃っていて楽しみですね♪イギリスも春ですか?日本は既に花粉症も始まって春本番です!
ヴァラリンさん>
>すっかりフィガロブーム
です(^^)CDと映像を色々と、ヴァラリンさんの音源も含めて毎日聞いてます。
>'80パリのショルティ盤
かもしれません。一番上にアップした写真は伯爵夫人の部屋で、伯爵の後ろにベッド、衣裳部屋は上手前方に出入り口があります。この部屋のセットを見て「あ!見たことある」と思い出したので、よろしかったらちょっと分かりにくいですが見比べてみてください。
by Sardanapalus (2006-03-01 14:36)
>'80パリのショルティ
ストレーレルの演出で、舞台は彼の右腕のエツィオ・フリジェリオで、これはその後、スカラ座でも上演されてます。
フリジェリオは健在ですから、彼の名前があれば、'80パリのと同じということですね。そうだとすると舞台も衣裳もそれは素晴しいものでしょうね。
'80パリの時は、ショルティとストレーレルが喧嘩したそうですけど、演出は絶賛だったそうです。
カーテンコールの写真、愉快ですね。伯爵夫人がガリバーみたい。(笑)
by keyaki (2006-03-03 02:10)
>これはその後、スカラ座でも上演
この公演(指揮・歌手含む)はスカラ座がオリジナルのようなので、これで話がつながりました!keyakiさん、いつも情報ありがとうございます。
>舞台も衣裳もそれは素晴しい
落ち着いているし、センスも良いし、各キャラクターで色分けもしてあって大好きなデザインです~。伯爵の赤いガウン、フィガロの正装、伯爵夫人の黄色のガウン、スザンナの活動的な簡素なドレス、どれも気に入ってます♪
>伯爵夫人がガリバーみたい。(笑)
ガリバーですか(^^)なるほど~。でも、本当に一人だけ別の世界の住人のようです。皆を見下ろしてるし、ドレスのふくらみも凄く大きいし(笑)
by Sardanapalus (2006-03-03 20:11)
TBさせていただきました。どうぞよろしくお願いします。
by Belle de Nuit (2006-03-06 14:21)
サーバーが激重の時にわざわざありがとうございます。ようやく私の中での「フィガロ」ブームは落ち着きつつあるようです。落ち着いてくれないと困るんですけどね(笑)
by Sardanapalus (2006-03-06 16:36)
Sardanapalusさん、こんにちは。
ストレーレルのオペラ演出全リストを作成しましたので、そちらからリンクを付けさせていただきました。よろしくお願いします。
by Orfeo (2006-09-19 10:53)