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オペラ「ドン・パスクワーレ」 [オペラ(実演)]

ちょっと前の話になってしまいましたが、コヴェント・ガーデン2005-2006シーズン最後の演目「ドン・パスクワーレ(Don Pasquale)」(ドニゼッティ作曲)を着物で見てきました。前回、というか1週間前までは快適な気温だったロンドンもこの日は非常に暑く、最高気温34度というような異常事態。それでも折角の機会なので大汗をかきつつ出かけました。それにしても、あのサウナ状態のロンドンの地下鉄にクーラーがつくのは2009年とか言ってますが、そんな呑気なことで大丈夫なんでしょうかねぇ。

あらすじ:資産家の老人ドン・パスクワーレは甥のエルネストと若くて貞淑な女性を結婚させ、自分の財産を相続させようとしているが、エルネストは未亡人のノリーナと相思相愛なのでそんな女性を結婚するつもりはない、と縁談を断る。それを聞いたドン・パスクワーレは、ならば自分がその女性と結婚し、新しく出来た子に遺産の全てを渡すと宣言、居候していたエルネストを無一文で追い出してしまう。失意のエルネストから別れの手紙を受け取って動揺するノリーナだが、2人の友人でドン・パスクワーレの侍医でもあるマラテスタの計画にのって、「若くて貞淑で世間知らずの妹」を演じてドン・パスクワーレの花嫁となることにする。しおらしい花嫁に大喜びのドン・パスクワーレだったが、結婚証明書にサインした途端に豹変し、我が物顔に振舞う花嫁に仰天、結婚を後悔し始める。膨大な金額の請求書、平手打ち、更には愛人の発覚でついに離婚を決意したドン・パスクワーレは相談相手のマラテスタと一緒に花嫁と男が夜の庭で密会している場面に飛び出し、金目当ての花嫁との離婚と、エルネストとノリーナを結婚させて遺産を相続させることを宣言する。そこへ物陰に隠れて様子を伺っていたエルネストが登場、花嫁がノリーナだと暴露し、ドン・パスクワーレは自分が騙されていたことを知るが、広い心で皆を許し若いカップルを祝福する。

暑い日にもかかわらず、この演出での歌手達は白塗りに分厚いコートの見るからに暑そうな衣装!舞台いっぱいに作られた「家」を駆け回って大騒ぎで大変そうでした。初演ではフローレスがエルネストでしたが、今回はそこまでの有名歌手は登場しません。しかもシーズン最後ということでチケットは余りまくっていたようですが、全体的に演技も歌もレベルの高い歌手達にいっぱい笑わせてもらいました。この演出では、パスクワーレじいさんの家が3階建てのドールズ・ハウスつまり人形の家になっていて、登場人物は皆人形の格好をしています。居候エルネストの部屋は3階の屋根裏部屋、2階にパスクワーレの書斎と寝室、1階がキッチンと玄関となっています。更に舞台の床は巨大な市松模様(ドールズ・ハウスが置かれている家の床という設定)でしたし、舞台前方にはこのドールズ・ハウスの鍵が転がっているなど、歌手達が人形に見えるように色々と工夫してある演出でした。

喜劇オペラですから、面白くなかったら寝ちゃうかも~と思っていましたが、そんな考えは杞憂でした。いっぱい登場する召使達は家中で盗み聞きするし、マラテスタはパスクワーレとの用事を済ませた後キッチンでつまみ食いするし、パスクワーレはまだまだ若い!と変な体操するし、ノリーナの買いあさる商品はヴェルサーチにグッチにシャネル…というように次々と小ネタが飛び出してきて、幕が上がってからずっと笑いっぱなしでした。特にパスクワーレとマラテスタのコンビが息ぴったりで、パスクワーレのふかふかベッドに2人でぴょん!と飛び乗ったり、エルネストに家を譲ったパスクワーレが巨大な鍵をよっこらせ、と持ち上げて、「それは届かないでしょう~?」と身振りで示すマラテスタを踏み台にしてドールズ・ハウス2階部分にある鍵穴に差し込もうとしたりして最後まで楽しませてくれました。

アレッサンドロ・コルベーリ(Alessandro Corbelli)が本領発揮の張り切りじいさんパスクワーレも、アレクサンドラ・クルツァク(Aleksandra Kurzak)の正に人形のような可愛らしいノリーナも良かったですが、まるでマイケル・ジャクソンのような配色の衣装でコミカルなマラテスタを好演したクリストファー・マルトマン(Christopher Maltman)が一番気に入りました。お堅いイメージのマルトマンがここまで笑いを取れるとは知りませんでしたよ。本当に最近の若手バリトンは皆上手いですね~。批評家には評判だったエルネスト役の長身テノールエリック・カトラー(Eric Cutler)は、この日はまずまずの出来。綺麗な響きですが、高音に伸びがなくて残念でした。演技もいまいちですしねぇ(^_^;)

この公演は、友人の評価も芳しくなくて全く期待せずに行ったのですが、一緒に連れて行った母も初ロイヤル・オペラを楽しんでくれたようですし、思いがけず完成度の高い舞台を見られて良かったです。ああ、次にオペラを見るのはいつになるんでしょうねぇ~。


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コメント 3

keyaki

おや、親孝行してたんですね。
楽しいオペラで、お母様も大満足でしょうね。コルベッリのドン・パスクァーレは、DVDが出てますよね。

>特にパスクワーレとマラテスタのコンビが息ぴったり
これ、重要ですよね。
チューリッヒでは、ライモンディのドン・パスクァーレが定番ですが、マラテスタはいつもバルトリの彼氏(多分チューリッヒ専属だとおもう)ですよ。
by keyaki (2006-07-31 01:41) 

ロンドンの椿姫

お母様もイギリスにいらしたのですね?
お二人で着物でいらしたのでしょうか?これはどの日に行ったのですか? 私は初日の12日でした。もう一度行きたかったのですが、仕事が忙しくて無理でした。
2年前のフロレスももちろん観ましたが、全体としては今回は決してヒケを取らないパフォーマンスだったと思います。一番心配だったテノールがとてもよかったし。そのときの感想をTBさせて頂きますね。

長いイギリス滞在お疲れ様。折角着物を持ってらしたのにこんなに暑いなんてねえ。今は外は涼しいですが、地下鉄はまだ暑いんですよ。毎日それで通勤しなきゃならない(朝だけでも)私。疲れました。

そしてもうすぐ、もっと暑い愛知県へ。ウヘーっ!
by ロンドンの椿姫 (2006-07-31 08:43) 

Sardanapalus

keyakiさん>
>親孝行
してました(^^)卒業式にあわせて1週間だけ来てくれたので、ここぞとばかりに色々連れまわしちゃいました。

>>特にパスクワーレとマラテスタのコンビが息ぴったり
>これ、重要
以前keyakiさんの記事で聞かせていただいたあの早口デュエットもあるし掛け合いも多いですから、この2人のテンションが合わないと面白くないでしょうね。

ロンドンの椿姫さん>
TBありがとうございます。オペラ自体がマイナー作品ですが、どの歌手も役柄に合っていて満足できる公演でしたよね。私は前回の「椿姫」よりは断然楽しめました。

>二人で着物
でした!おじさんに「あなた達はとてもきれいだ」といってもらえましたよ(笑)行ったのは17日の公演です。

>地下鉄はまだ暑い
そうでしょうねぇ。暑い日本に来る前に、地下鉄でならしておくというのはどうでしょう?(笑)
by Sardanapalus (2006-07-31 09:02) 

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