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映画「父親たちの星条旗」「硫黄島からの手紙」 [映画]

今冬の話題作「父親たちの星条旗」「硫黄島からの手紙」を見てきました。正直な感想としては、良くも悪くもクリント・イーストウッド監督、予想通りの秀作という感じでしょうか。どちらの作品でも、数々の細かいイベントを羅列してちょっとずつ観客に訴えてくる手法をとっているので、大きなクライマックスが無くて話が掴みにくい展開なのは正にイーストウッド的(^^)劇的な「お涙ちょうだい」場面はないので、感動して泣きたい人は別の映画を選んだ方がいいです。どっちかというと、現実世界の国家間戦争に対する本音と建前のゆがみや、国家と国民の関係を深く考えたい人にお勧めです。

正直に言うと、「父親たちの星条旗」を見た後は、結局はアメリカ人好みの父親賛歌的な内容や現代と戦時中がだらだらと交錯する展開があまり評価できなかったのですが、アフガニスタンやイラクに戦略も無く派兵し続けている今のアメリカ国民に戦争の虚しさと絶対的な正義や悪は存在しないことを訴えるためにはこういう構成が有効なのでしょう。アメリカでは1作目しか見ない人も多いでしょうからね~。日本では「硫黄島からの手紙」の方しか見ない人が多そうですが(^_^;)それでも、「父親たちの星条旗」がすり鉢山の山頂にある星条旗掲揚記念碑から見える現在の海岸線の映像で終わり、「硫黄島からの手紙」はその記念碑の隣に建つ日本兵の戦没慰霊碑から見える海岸線が映って始まるという構成からも、この2作は合わせて見るべき作品でしょう。

あらすじ:第二次世界大戦末期、太平洋上に浮かぶ硫黄島をめぐる日米の攻防をそれぞれの側から描く2部作。「父親たちの星条旗」ではアメリカ兵が星条旗をすり鉢山に立てている写真をめぐる上層部の思惑と国家に利用される兵士達の困惑を描き、「硫黄島からの手紙」では、硫黄島での徹底抗戦を指示した栗林中将を中心に、日本軍兵士達の硫黄島での最期の日々を淡々と伝える

こんなとこでしょうか。登場人物が多くて細かく書き出すと長くなるし、どちらかと言うと感性で見る映画だと思うので詳しいあらすじは書かないほうが良いでしょう。とにかく、アメリカも日本も関係なく、軍事体制下の国家における人間関係や社会情勢に見え隠れする「国民がとるべき態度」と「本音」のせめぎあいにいちいちドキッとさせられます

「父親たちの星条旗」だと、硫黄島に向かって全速力で向かう戦艦から誤って海に落ちた兵士を見捨てていく艦隊の対応にショックを受ける新兵達の顔や、激戦が落ち着いた後にやって来てすり鉢山にたてた星条旗を欲しがる上官の暢気さ、命令に従って別の旗と取り替えた兵士達の姿を撮った写真を利用して戦時国債を買わせるキャンペーンを展開するアメリカ政府などが印象的です。「硫黄島からの手紙」では、士官間の不必要なプライドによる軋轢と指揮系統の混乱、栗林中将の娘への絵手紙ののんびりした内容と戦場の現実の対比、死んだアメリカ軍兵士の母からの手紙が自分の母からの手紙と同様に息子の身を案じる内容だったことで自分の敵も人間であることを自覚する元憲兵などが印象に残ります。

俳優陣では「父親たちの星条旗」で戦費調達ツアーに参加した3人の軍人を演じたライアン・フィリップ、アダム・ビーチ、ジェシー・ブラッドフォードと、「硫黄島からの手紙」で実際のアメリカを知る日本人2人、栗林中将役の渡辺謙と、西中佐役の伊原剛志が印象に残りました。特に伊原の演じるロサンゼルス・オリンピック馬術金メダリストの西中佐は乗馬姿も颯爽としてカッコイイ。乗馬ブーツにネッカチーフと、とにかく軍服の着こなしが違います(笑)外見だけじゃなく、負傷したアメリカ兵を部下に治療させたりと中身もカッコイイんです。

色々ツッコミどころもあるし、どうしてもにじみ出る「アメリカ人向け」の構成がひっかかって大絶賛とはいきませんが、とにかくじっくりと考えさせられる作品でした。今度はもう少し軽いものを選ぼうかな。


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コメント 4

クリス

お久し振りです!
私もこの二作を観て、イーストウッドのレベルの良い映画になってると思いました。ただ、とっても秀でているかというと、そういう訳じゃなく、どこか殻を破れてない(目新しさの少ない)印象です。目の付け所は良かったんですが。
トラバさせて頂きますね~♪
by クリス (2006-12-22 19:34) 

Sardanapalus

蟻銀さん>
お久しぶりです!TBとコメントありがとうございます~。やはりご覧になりましたか。

>とっても秀でているかというと、そういう訳じゃなく、どこか殻を破れてない(目新しさの少ない)印象
おお、正に「目新しさの少ない」っていう評価はぴったりですね!だからといってどこが劣っているという訳ではないんですけど、ね。
by Sardanapalus (2006-12-22 21:28) 

Hiji-kata

ナイスレビューでした。
面白かったですよ。
ありがとう。
 
by Hiji-kata (2006-12-26 03:18) 

Sardanapalus

土方歳三さん>
はじめまして!nice!とコメントありがとうございます。励みになります。

土方さんの記事も読ませていただきましたが、2度ご覧になったのですね。確かに1度では捕らえきれない部分も多い映画だと思いましたけど、お金払ってもう1度見る気にはなりませんでした(^_^;)まあ、イーストウッドの目的は戦争のろくでもなさ、無意味さ、残忍さなどを伝えることだったでしょうから、なるべく観客を高揚させないようにしているのかもしれませんね。
by Sardanapalus (2006-12-26 10:47) 

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