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オペラ「スティッフェリオ」 [オペラ(実演)]

ロイヤル・オペラハウスのヴェルディのオペラ「スティッフェリオ(Stiffelio) 」の公演は、前回公演(12年前)でハウスデビューだったホセ・クーラ(Jose Cura)が再びスティッフェリオ役を歌うということが唯一の話題ともいえる公演でした。オペラ自体があまり有名ではないので、のんびり当日券でも買って見ようかと思っていたところ、またまたロンドンの椿姫さんから格安&音響最高のチケットを譲っていただいたのでした。ありがとうございました。

あらすじを簡単に書くと…熱心なプロテスタントの牧師スティッフェリオは、他人の不倫に関しては「広い心で許せ」などと説教をしておきながら自分の妻リーナが浮気をしたと知って大激怒。浮気相手を探し出して殺そうとするが、結局は妻の父スタンカーが家の名誉をかけて間男を殺害する。妻の「愛しているのはあなただけ」という訴えも聞かずスティッフェリオは離婚するが、後に教会にやってきた元妻を許して幕。

より詳しいあらすじや写真などはdognorahさんの記事と、ロンドンの椿姫さんの記事と、りょーさんの記事(ラジオ音源有)を参考にしてください。珍しく?悩み苦しむテノールが主役で聞けるオペラです(笑)

この演出はホセ・カレーラス(Jose Carreras)のスティッフェリオで映像になっているようですが、私はメトロポリタン・オペラの演出しか見たことがありませんでした。ストーリー展開には無理はないけれど、ツッコミどころはあっても誰にも感情移入できないオペラだな~というのが正直な感想でした。今回実演で見ても、ぜひまた見たい!と思うような作品ではありませんでしたね(^_^;)元々昼ドラが苦手なので、不倫とか三角関係とかねちねちした感情の渦巻くシリアスな話はどんなものでも好きになれないんです…。ただ、この演出は良く作りこまれているし、音楽としては悪くないと思います。それぞれのアリアもなかなかですが、重唱がどれも素晴らしく、特に最後の合唱部分で繰り返される「ペルドナーター(許したまえ)」は耳に残ります。

ということでオペラ自体には興味が沸きませんでしたが、今回は声の大きな歌手が揃っていてガンガンに響くヴェルディの音楽を聞けたのは面白かったです。スティッフェリオ役のクーラはいつもより更に声を暗くして歌っていたように感じました。アリアを歌うというよりも台詞を喋るように歌っていたので、何を言っているのか字幕を見なくてもよく分かりました。ありがたいことです。鍵をいとも簡単にこじ開けたりと、牧師にしては体育会系すぎな気もしましたが、クーラの外見から考えるとあれくらい爆発するほうが信憑性はあるかもしれません。流石に癲癇の発作で床を転げまわったときには一体何が起こったのかとビックリしてしまいましたが(^^)、小芝居も多くて自然な流れで舞台上をあちこち動き回ってくれるので見ているだけでも面白かったです。

スティッフェリオの舅スタンカー役を歌ったロベルト・フロンターリ(Roberto Frontali)は、舞台に登場→怒りのアリア→引っ込むという典型的なヴェルディバリトン役(笑)だったのですが、密度の高い声でしっかり歌ってくれたので退屈せずに済みました。そうそう、娘の不倫相手ラファエッレとの決闘シーンも、お互いにしっかり振付をこなしていてかっこよかったです。客席がどよめくくらいの緊迫感のある動きでした。失礼ながらラファエッレが印象に残っているのはここだけです(^_^;)この役だったらヤング・アーティストの誰かを引っ張ってきても良かったんじゃないかな~。

それでその話題の中心である不倫妻リーナ役のソンドラ・ラドヴァノスキー(Sondra Radvanovsky)はどうだったのかというと、はっきり言って今回一番の大声の持ち主でした(笑)だから良かった、とはいかないのが悲しいところですが。ラドヴァノスキーはかなり大柄で舞台上では目立つのですが、いかんせん今回は声が大きすぎました。張り上げるところなんて響きすぎて耳が痛くなるくらいで、「ここはMETじゃないんだよー」と言いたくなってしまいます。演技力も特筆するほどではないですし、私が行った5月10日の最終公演は気になりませんでしたが、公演中ずっと声の調子を崩していたようで初日の批評では「声がでかけりゃいいってモンじゃない」なんてボロボロに叩かれていました。彼女にはこういう高い演技力が必要とされる役よりももっと似合った役があると思うので、これからは自分に合ったレパートリーを歌っていって欲しいです。まだ若いし!

という感じで、作品は私の好みじゃありませんでしたが、音楽も演出も十分に楽しめた公演でした。もう二度と実演に接する機会はなさそうですが、細かい裏設定が見えてくる今回の演出で見られてよかったです。


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コメント 13

レビュー、お疲れ様でした~!

>音響最高のチケット
今回は何処でも音響良かったかもよ(笑)

え?
>流石に癇癪の発作で床を転げまわった
んですか?また、そういう、違うことをするんだなぁ(^_^;

>密度の高い声
うん!フロンターリ、バリっとした声すごく良かったですね。
バリトン好きの嗜好を刺激する声でした♪

>「ここはMETじゃないんだよー」
うん(^_^;彼女がとっても良かったっていうシラノを聞いていないので、それが不調なのかどうかは分かりませんけど。基本的に暗めの良い声だと思うんだけど、ちょ~っと力入りすぎかな~って。

とにかく、大好きなヴェルディ節の重唱&合唱尽くしなのがたまらないオペラです。オテロと違ってプリモ・テノールも参加するし(笑)
by (2007-06-05 21:51) 

Sardanapalus

りょーさん>
遅くなりましたが一生懸命思い出しながら書きました。

>>音響最高のチケット
>今回は何処でも音響良かったかもよ(笑)
確かに、あの音量ならどこでもばっちりかもしれません(笑)

>>流石に癇癪の発作で床を転げまわった
>んですか?また、そういう、違うことをするんだなぁ(^_^;
あの、ラファエッレを殺そうとして「立場を考えろ」ってスタンカーに諭された後なんですけどね。右4分の1くらいが見切れる席だったんですけど、いきなりクーラが消えた!?と思ったら仰向けにぶっ倒れてたんですよ。これにはびっくりしました。だってまがりなりにも牧師でしょ???オテロじゃないでしょ?(^^)って。

>ヴェルディ節の重唱&合唱尽くしなのがたまらない
本当ですね。公演や映像はもう見なくてもいいですけど、優秀な音源を手元に置いておこうと思っています。
by Sardanapalus (2007-06-05 22:14) 

keyaki

癲癇、癇癪、癇癪,癲癇、どっちがどっち?

癲癇(てんかん)持ちって,実際にけっこう多いらしいですね。
ストレスとか過度の緊張で、ぶったおれたりするようですから、
スティッフェリオが癲癇(てんかん)持ちっていう演出ということですよね。

りょーさんの啓蒙運動で、スティッフェリオにも関心を持って、音楽も楽しめるようになりました。音楽だけ聴いていると、十字軍でもいいかなってかんじもしますね。
by keyaki (2007-06-05 22:50) 

Sardanapalus

keyakiさん>
>癇癪,癲癇、どっちがどっち?
わあ、お恥ずかしいです。勿論「癲癇(てんかん)」です。てんかんって打って普通に変換すれば出るんですね。変換しないだろうと思って「癇癪の癇を使って後で『癲』をIMEから引っ張ってこよう」な~んて思っていて記事を書き終わる頃にはすっかり忘れていたのでした。指摘していただいてありがとうございます。

>スティッフェリオが癲癇(てんかん)持ちっていう演出
そのようです。誰のアイディアかは分かりませんが、音楽とはよく合っていたと思います。牧師なのに発作が出てしまうほど精神のコントロールができないのか?というのはまた別のツッコミどころではあると思いますが。

>音楽だけ聴いていると、十字軍でも
いけそうですね。設定としてはありきたりすぎると思いますが、スタンカーの名誉一辺倒な性格は貴族社会のほうがしっくりくるかもしれません。
by Sardanapalus (2007-06-05 23:32) 

keyakiさん>
>十字軍でもいいかなってかんじもしますね。
すくなくともこのキャストなら、そっちでも行けますね(笑)

癇癪(かんしゃく)じゃなくて癲癇(てんかん)の方だと思います。
ややこしいですね(笑)やまいたれの中をよーく見ると読めますが^^;

I had studied for a long time the reactions of epileptics

なーんて言ってるので、epilepsy(てんかん)、ですね。
友達の飼っているワンちゃんが癲癇もちなんですけど、、、そっくりです。
それは苦しそうで可哀そうですよ。
押さえつけてゴシゴシ撫でていてあげると落着いてくるんですけど。

Sardanaさん>
>仰向けにぶっ倒れてたんですよ
ええ~^^;ホント!?最後の幕切れじゃなくてですよね?
最終日だから衣装がどうなってもイイやって思ったとか?
5日と8日はひきつけをおこしたみたいになって
ヒクヒクしながら固まってうずくまっていたけど~
by (2007-06-05 23:40) 

ウタコ

ご無事でおかえりなさいまし。

>癇癪の発作
床を転げまわ…(*゚Д゚)頑張ってますね。
その瞬間の彼の表情が非常に気になるんですが、やっぱ(´・U・`)←このまんまだったんでしょうか。個人的には、発作中も常にクールなクーラであってほしいような…(笑)

ところで
キーンリーサイドの「ビリーバッド」を、ネットで注文したのです。
とても楽しみなのです。
by ウタコ (2007-06-05 23:44) 

Sardanapalus

りょーさん>
>epilepsy(てんかん)、ですね
そうです。てんかんの方ですー。お騒がせしました。

>押さえつけてゴシゴシ撫でていてあげると
このスティッフェリオは皆に放置されてましたけどね(^_^;)それはそれで「いいんかい!?」って思いましたよ。信頼厚いんじゃないの?みたいな。それとも、いきなりこの日だけ発作を起こしたから皆びっくりしてどう反応すべきか分からなかったとか?

>最後の幕切れじゃなくて
最後の幕切れで倒れていた記憶はないので、最終日はそっちは結構おとなしかったんじゃないでしょうか?崩れ落ちてた気はしますが。
とにかく「墓場に寝転がる牧師ってどうよ?」って思って、直後の休憩で「クーラのスティッフェリオって初日もこんな感じでした?」ってロンドンの椿姫さんに聞いたのを覚えてますから…私の記憶が混乱してなければそこで仰向けになってたはずです。さすが演技が毎回違う男、ですね(^^)
by Sardanapalus (2007-06-05 23:54) 

Sardanapalus

ウタコさん>
行ってまいりました。

>やっぱ(´・U・`)←このまんまだったんでしょうか
はははは、この顔良いですね!ちゃんとクーラに見える(笑)えーと、結構遠くからの鑑賞でしたが、かっと目を見開いている以外はあのままの顔だったと思います。一生懸命発作を抑えようとしている、という感じ。

>キーンリーサイドの「ビリーバッド」を、ネットで注文
そーだったすみません。しばらく放置状態でしたね!また個人メールさせていただきます。実は私も持っていないCDなんですが(笑)
by Sardanapalus (2007-06-06 00:00) 

>このスティッフェリオは皆に放置されてましたけどね

そりゃ、危険ですから…触らないほうが…
カレーラスさんのスティッフェリオはリナに支えてもらえてましたけど^^;

>やっぱ(´・U・`)

あっはっは、ははははは、っくるしい~~、、、ヾ(≧▽≦)
by (2007-06-06 00:24) 

keyaki

Sardanapalusさん、
あれれ、なんか間違ってたの? 気づいてません。(笑

>>癇癪,癲癇、どっちがどっち?
これは自問自答なんです。だって、こんな漢字、もちろん普通は書かないでしょう。ひらがなで、「てんかん」とか「かんしゃく」ですよね。

>このスティッフェリオは皆に放置されてましたけどね(^_^;)それはそれで「いいんかい!?」って思いましたよ。

これは、ダメですよね。救急処置として、やっぱり、舌を噛んだりしないようにハンカチを噛ませないとね。これ常識ですよね。(笑
by keyaki (2007-06-06 00:57) 

Sardanapalus

りょーさん>
>>このスティッフェリオは皆に放置されてましたけどね
>そりゃ、危険ですから…触らないほうが…
そんな(^_^;)確かに、唯一気使ってくれそうなリーナが触れたら余計発作が悪化しそうなオーラは出てましたけど…。

keyakiさん>
>なんか間違ってたの?
間違ってました。ここで言いたかったのは「てんかん」の方でした。記事を書き終わった後で直そうと思っていたのに、途中で食事を取ったのがいけなかったようです(^^)すっかり忘れてしまいました。

>>このスティッフェリオは皆に放置されてましたけどね
>救急処置
するべきですよね?まあラファエッレは無関心でもいいかと思いますが(いや、よくない!)他は妻と舅でしょう?そんな遠くから傍観してる場合かー!って(笑)
by Sardanapalus (2007-06-06 01:13) 

euridice

やっぱりクーラの舞台はおもしろそう!!!
by euridice (2007-06-06 06:14) 

Sardanapalus

euridiceさん>
はい、この公演でもクーラはおもしろかったです!スターとしてのオーラもあるけれど、しっかり役になりきっていて見ごたえがありますね。
by Sardanapalus (2007-06-06 14:15) 

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