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オペラ「カルメン」@小澤征爾音楽塾 [オペラ(実演)]

毎年小澤征爾が若手音楽家の養成を目的として開催している、小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトVIIIへ今年も行ってきました。小澤征爾の指揮には特に興味がないのですが、地元近くにも回ってくること、才能のある欧米の若手歌手が聞けること、チケット代がそれほど高くないこと、毎年演出を担当するデイヴィッド・ニース(David Kneuss)の演出がけっこう好みであること、などの理由で毎年結構楽しみにしています。(ちなみに、2004年の「ラ・ボエーム」ではアンナ・ネトレプコがムゼッタを歌っていたりするんですよ。綺麗でしたたかなムゼッタで印象的でした。)今年のオペラは、ビゼーの「カルメン(Carmen)」。今年は個人的にかなり注目の公演でした!何せ応援している歌手が2人も出演するのです♪(^^)

一人目は、今やアメリカで大人気、ヨーロッパでも売り出し中バリトンのマリウス・キーチェン(Mariusz Kwiecien)。声に安定感があるのは勿論、演技もうまくてスタイルも良くてカッコイイので、バリトン好きとしてはこれからの動向に目が離せません(*^_^)彼は小澤氏と気が合うのか音楽塾のオペラ公演の常連で、過去にもグリエルモ、ジョヴァンニ、マルチェッロを歌っています。今回は、個人的にはバス歌手に歌って欲しいエスカミーリョ役ということで、ちょっとイメージと合わないかな~などと心配していましたが、そんなものは杞憂でした。舞台上の動きも堂々と、伊達男な闘牛士として説得力のある歌と演技を見せてくれて大満足。女の子に向かって帽子をフリスビーのように飛ばしたり、傍らのマントをさっと翻したり、カルメンに「また会いにくるぜ!」とカッコイイ捨て台詞を残して去っていく姿などを見ていると、街中にポスターが貼ってあるほど人気者なのも頷けます。

もう一人は、ROHで急な代役で聞いて以来気に入って応援し続けているアメリカ人若手ソプラノのケイティ・ヴァン・クーテン(Katie Van Kooten)です。つい最近までROHのヤング・アーティスト・プログラムに参加していた彼女は、日本ではまだまだ知名度がありませんが、これから先伸びてくる歌手だと思います。けっこう豊かなソプラノの声で上から下まで綺麗にしっかり出るので、このまま技術を磨いていってくれれば近いうちに世界中で活躍する歌手になることでしょう。今回は当然ミカエラ役だったのですが、とにかくお下げ髪でも違和感のない外見(と年齢)が嬉しかったです(笑)相変わらず素直な発声で高音まですーっと伸びていくのが気持ちよく、可愛らしいけれど芯はしっかりしているミカエラを好演していたと思います。もう少し演技力がついてくるともっといいかな~。

この2人以外も、今回はなかなか充実した歌手が揃っていたと思います。カルメンは2001年Operaria優勝者のジョシー・ペレス(Jossie Perez)で、スタイルの良い迫力美人ながらも、キツイ言葉の端々に優しさが見え隠れする読みの深いカルメン像でした。カルメンに良く合っていた力強くてカッコイイ声は出だしがちょっと弱かったですが次第に本調子になり、最後の喧嘩(^_^:)までしっかり聞かせてくれました。そのカルメンに対するホセは、フォン・オッターがカルメンをやったグラインドボーンのDVDでもホセを歌っているマーカス・ハドック(Marcus Haddock)でしたが、少し見ない間にかなり太りましたね。グラインドボーンのDVDではまだ精悍な印象も残っていたのに…。「声はりあげ系」といううわさ通りの大根演技(笑)には頭が痛くなりましたが、まあ語彙の少ない朴訥なホセということにすれば何とか受容範囲かと思いました。ホセが不器用なほど伊達男のエスカミーリョとの差が際立って面白いですしね。声量のある暗めの声は、ちょっと挙動不審でキレると怖いホセにはそれなりに合っていますが、愛の告白も脅しも一本調子なのが物足りなかったです。

今回の演出は、作りこまれた舞台装置と衣装と、演技のむちゃくちゃ上手い子供たち(東京少年少女合唱隊)の細かい動きが印象的でした。全体的なバランスもよく、変な読み替えもないオペラ自体を楽しめる演出で、以前見たモンテカルロ歌劇場の公演ほどではないですが(あれは格別^^)かなり楽しみました。でも、最後カルメンとホセが対決する場面は緊張感が足りなくて不満が残りましたねー。ホセがミカエラを連れてきたから場面のどこかでミカエラが登場したりするのかと思ったら、単に殺害現場を窓から見ているだけだったし(^_^;)せめて音楽が煽ってくれればまだ違うかもしれませんが、小澤氏の指揮は一貫してスローテンポだったので、クライマックスもだれ気味でメリハリが無かったと思います。まあ、このプロジェクトでオケに期待することはあまり無いんですけどね。色々ツッコミたいところもあるけれど、今回は実力のある歌手が揃っていたし、今までの音楽塾公演の中でも一番バランスが取れていたように思いました。

ちなみに、来年はJ・シュトラウスの「こうもり」で、ボー・スコウフス(Bo Skovhus)@アイゼンシュタインとロッド・ギルフリー(Rod Gilfry)@ファルケの長身イケメンバリトンコンビが面白そうです。


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コメント 4

keyaki

>マリウス・キーチェン(Mariusz Kwiecien)
おぉ、かっこよかったですか。
エスカミーリョは、堂々ときざに決めてくれないと、こっちが落ち着かないというか、なんかこそばゆい.....それにやってる本人がてれちゃダメってことですよね。それには、見た目も本当にかっこよくなくてはね。

>街中にポスターが貼ってあるほど人気者なのも頷けます
これって、舞台でですよね。
Sardanapalus さんの住んでいる町中にポスターが貼ってあるのかとおもいましたけど....(笑

ミカエラを連れてきていたんですか。かわいそうに.......

>マーカス・ハドック(Marcus Haddock)
映像でしか見たことないんですが、あんまり印象に残らないですね。2005年のフィレンツ5月音楽祭でカヴァラドッシを歌っていますが、写真を見る限りでは、太ってなかったですけどね。この時のレビューもルーチン..というような感じだったかな.....共演がウルマナとライモンディでは、よほど強烈な個性がないと霞んじゃいますよね。

カルメンは、フランチェスコ・ロージ監督の映画版を最初に見ちゃったので、なかなか満足できるのにあたりませんが、マリウス・キーチェンのエスカミーリョは興味あります。これって、TVで放送されるかしら?
by keyaki (2007-07-30 09:02) 

蘭丸

キーチェンなら多分魅力的なエスカミーリョを演じるとは予想してましたが、記事をよんだかぎり間違ってなかったみたいですね。けど彼で日本での人気が高いのは知りませんでした。小沢塾ではモーツァルトを歌ってるみたいですねが、彼のフィガロの結婚の伯爵役も評判が良かったですよ。自分の情報が正しければ来年のサンフタ・フェオペラで歌うはずです。
by 蘭丸 (2007-07-30 11:32) 

Sardanapalus

keyakiさん>
>エスカミーリョは、堂々ときざに決めてくれないと
やっぱり闘牛士ですからね!(^^)演出上も洗練された伊達男でなくては説得力が無いです。

>>街中にポスターが貼ってある
>これって、舞台でですよね。
>Sardanapalus さんの住んでいる町中にポスターが貼ってあるのかと
あはは、当然舞台上です~。でっかくEscamilloって描いてあるカッコイイ闘牛士のポスターがあったり、兵士が壁にViva Escamilloの落書きしてたり、とまあ大人気なんですよ。もし実際の街中にあったら…キーチェンのポスターなら、喜んで貰っちゃいますけどね(笑)

>マーカス・ハドック(Marcus Haddock)
>写真を見る限りでは、太ってなかったですけど
そうなんですよ。公開している写真では太ってないし、映像の「カルメン」でもそんな印象無かったんですけど、ほほの肉がたるんできてるようです…。今回は他のキャストがスタイル良かったので余計に横に大きく見えたのかもしれませんが、プロフィール写真の面影が無いのは確かです。

>TVで放送されるかしら?
残念ながらその予定はなさそうです。今までの公演も全て映像収録はなかったんです。ネトレプコのムゼッタなんて撮っていれば売れたでしょうに(^_^;)一応東京公演は明日ですが、既に完売ですね。
by Sardanapalus (2007-07-30 23:59) 

Sardanapalus

蘭丸さん>
>キーチェンなら多分魅力的なエスカミーリョ
本当にキーチェンも外さない歌手ですよね。バリトンには器用な歌手が多いものです。

>日本での人気が高い
残念ながら、そうでもないです。人気が高いのは、この演出の中のエスカミーリョのこと(笑)多分、音楽塾の公演によく来る人は知ってるでしょうが、一般的なオペラファンの間ではまだまだ。

>来年のサンフタ・フェオペラで歌うはず
なんと!サンタ・フェは若い歌手中心で質が高いですからいつか行きたいんですけどね~。これは来年が狙い時かなぁ。
by Sardanapalus (2007-07-31 00:06) 

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