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ミュージカル「魔笛(The Magic Flute)」 [演劇]

The Magic Flute@Duke of York's TheatreROHでオペラの「魔笛(Die Zauberfloete)」をじっくり楽しんだ後、ロンドン演劇ファンの間で話題になっていたミュージカルの「魔笛(The Magic Flute: Impempe Yomlingo)」も見てきました。この南アフリカ風魔笛は、今年のオリヴィエ・アワードのBest Musical Revival部門にノミネートされた演目ですが、既に何ヶ月も公演を重ねていたので私が見に行った平日昼公演は余裕で当日半額券を購入できる客の入りでした。

ミュージカルとなっていますが、カットはあっても一応モーツァルトの曲をしっかり演奏するというのでオーケストラがいるのかと思いきや、小さな劇場ということもあって、舞台と客席しか目に入りません。まさかテープを使うのか?と思っていたら、Tシャツにカーゴパンツ姿の指揮者が舞台上に登場し、指揮を始めました。あれれ??どこからか打楽器の音が聞こえるよ?と不思議に思いながらふと舞台袖に目をやると…目に飛び込んできたのは両脇にずらりと並んだ木琴!そう、この「魔笛」は全て木琴アンサンブルに編曲されていたのです。魔笛の音色はトランペットですし、それでも厚みの足りない部分はコーラスで補っていて、しっかりとアフリカ風に味付けされたカッコイイ編曲になっていました。音のイメージとしては、「ライオンキング」の音楽に近いと思います。

      タミーノと魔笛
序曲が終わって、いよいよタミーノ登場!おっと、赤いバンダナです!(笑)しかも、歌いだしたと思ったら、何とアフリカーンス(Arikaans)で、何を言っているのか分かりそうで分かりません!(^_^;)と思ったら、影タミーノがかぶせるように英語で歌ってくれました。この同時通訳歌い(笑)はとても面白かったので、こんな感じでずっとタミーノはアフリカーンスを話すのかと思ったのですが、予想に反してこの場面だけでした。どうせならずっとやって欲しかったなぁ。

3人の精霊登場人物たちの格好ですが、夜の女王と侍女達はイメージし易いアフリカっぽい衣装で登場しましたが、背中に大きくBIRD(鳥)と入ったピンクのツナギを着たカワイコちゃんたちが「パパパパパパゲーノ♪」と歌う中登場したパパゲーノは迷彩服で少々びっくり。ただし、バリバリの軍人というわけではなく、逆にちょっとお間抜けな感じが出ていたと思います。一番驚いたのは3人の童子達。女性が演じることも多いですが、この演出では3人の精霊ということで、そのまんま女性でした。黒人歌手特有のソウルっぽい歌い方で、きれいなハーモニーを聞かせてくれたのが嬉しかったです。(童子達のメロディ好きなんです^^)しかし、この写真では精霊…というか、おせっかいなおばちゃん??(笑)

いつも鬼門のザラストロ、やっぱり退屈な人物かな~と思いきや、この演出では威厳はあるけれども結構はったり屋のようで(笑)、密かあたふたする姿に楽しませてもらいました。夜の女王タミーノが試練に耐えられず死んでしまったらどうするのかと問われて「私が責任を持つ」などと言っておきながら、実際に水の試練から助け出されたタミーノがぐったりしているのを見てうろたえたり…信者の介抱で息を吹き返したタミーノを見て「ふーやれやれ」と汗をぬぐったり(笑)対する女王は体格の良いおばさんという設定で、迫力もあったし声も十分出ていたので合格点ですね。一番印象に残ったのはパミーナで、有名なアリア('Ah, Ich fuhls')が無かったにもかかわらず強い意志の感じられる性格で「やっぱり男は女がいないとダメね」と言っているような強気な性格が気に入りました。

大きなカット部分はパパゲーノの台詞と歌が多く、タミーノの魔笛を称えるアリアとパミーナの自殺未遂アリア以外のアリアは全て入れてあったようです。おかげでストーリーがタミーノとパミーナに集中していたのは良かったと思います。また、いつも聞きなれたオーケストラ演奏ではなく、木琴のアンサンブルやコーラスで工夫された新鮮な音楽の響きが面白くて、歌手達のレベルがイマイチでも、十分楽しめました。最後の合唱も、パワフルな声で思いっきりノリノリで大合唱♪皆本当に嬉しそうで、観客も思わず体が動いてしまいます。

今回このシンプルな四角い木の舞台とそれを囲むやぐらを縦横無尽に使い、新鮮なアレンジの音楽が生き生きとしたテンポで進む演出を見て、「魔笛」はオペラとしての枠にとどまらない作品だということを強く感じました。可能ならば、この南アフリカバージョンだけでなく、他の文化圏で解釈した「魔笛」なんて見てみたいです。例えば日本風なんて、すぐに想像できますね。何せ民野だし(^^)
            3人の精霊とパミーナ
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コメント 2

しま

すごく遅れてのコメントになってごめんなさい。

>全て木琴アンサンブルに編曲されていた
そそそそそれは…ななななんてカッコイイんでしょう!!!!(*゚Д゚)
いいなぁ、私も見たかった!!

パパゲーノの大幅カットというのは正解ですね。
「魔笛」のプロットがわかりにくい理由のひとつが、本来は脇役であるはずのパパゲーノが出張りすぎっ!!ってところなんだと思います。
さすがはシカネーダ、自分にばかりオイシイ場面をモーツァルトに要求したんだねぇ、なんていろいろ想像すると楽しい♪

そして、夜の女王、カッコイイですね~!!
衣装も、「魔笛」のイメージにハマっているし。そういや「魔笛」って、もともとエジプトあたりを(テキトーに)想定したお話でしたよね。
この方たちは、みなさん南アフリカの人なのですか? それともイギリス人とかヨーロッパ人?


by しま (2008-04-29 18:03) 

Sardanapalus

しまさん>
>すごく遅れてのコメント
いえいえ、いつになってもコメントしていただいて嬉しいです!

>「魔笛」のプロットがわかりにくい理由のひとつが、本来は脇役であるはずのパパゲーノが出張りすぎっ!!
そうなんですよね。私はそれこそ何度も見ていますし、パパゲーノ好きなので元の構成で問題ないのですが、冷静にストーリーを考えると、おいしい場面はドウ考えてもパパゲーノ>タミーノ(笑)どっちも主役と考えればいいのかもしれませんが、タイトルからしても、タミーノ中心の方が座りがいいですものね。


木琴の響きは本当にかっこよかったです。打楽器のリズムは自然と体もノッて来ますし、一風変わった「魔笛」として楽しませてもらいました。CDが出ていたら絶対に買ったんですけどね。ちなみに、私が見たときのキャストは皆さん南アフリカの方、もしくは南アフリカで活躍している方のようです。
by Sardanapalus (2008-04-30 18:09) 

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