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オペレッタ「こうもり」@小澤征爾音楽塾IX [オペラ(実演)]

さて、毎年恒例の(笑)小澤征爾音楽塾の季節になりました。去年は「カルメン」で、エスカミーリョ役のマリウス・キーチェンに興奮していましたが、今年の演目は人気オペレッタの「こうもり(Die Fledermaus)」。2003年の公演と同じ演出・舞台装置でしたが、まれに見る人気歌手ぞろいの公演で、演奏も歌唱もレベルの高いものを見せてもらいました。

このチケット代でこれだけの人気歌手が揃うなんて、さすが小澤征爾ですね。指揮のテンポも去年よりは納得できるものでしたし、間延びすることも無く聴けました。歌手の力もあるでしょうが、小澤の指揮がJ・シュトラウスの音楽に合っているのでしょうね。これなら、オーケストラや合唱に入った若手音楽家達にもいい経験になったことでしょう。それにしても、カーテンコールで出てきた小澤の小さいこと!また痩せてしまったような印象ですが、体調は大丈夫なのでしょうか?あまり無理をしないでほしいものです。

今回の公演の目玉は、何と言ってもボー・スコウフス(Bo Skovhus)ロッド・ギルフリー(Rod Gilfry)のアイゼンシュタインとファルケ博士のコンビでしょう!(^^)まさかまさかの美味しいキャスティングで、バリトン好きの私は去年からずっと楽しみにしていました。この2人で「そうだ、夜会に行こう♪」の2重唱が聴けるなんて、幸せ~☆それにしても、この2人の大きいこと!(笑)
まず「役立たずの弁護士が!」と怒りながらドカドカとアイゼンシュタイン登場するのですが…

とにかくデカイ!!

舞台上には2階建ての屋敷がドールハウスのようになっているのですが、スコウフスの頭が天井スレスレに見えるのに驚きました。肩幅も広くて、周りの人間より頭2つ分飛び出ていましたよ!弁護士ブリント役のジャン=ポール・フシェクール(Jean-Paul Fouchecourt)がまた小柄だったので、アイゼンシュタインと争う場面なんて、まるで大人vs小学生(笑)そんな大きいおじさんが、また演技も上手くてどたばたどたばた大騒ぎしてくれるんですよ。こりゃ笑わずにはいられません。シリアスな役よりも、こういうコメディ役の方が性に合っているのかしら?スキップしたり、ゴリラのように胸をたたいたり、とても生き生きしていました。

そして、弁護士と入れ替わりにファルケ博士が紳士面して登場すると…

またまたデカイ!!

肩幅はスコウフスに負けるものの、身長は同じくらいのギルフリー。この2人が揃うと、屋敷の居間が狭いの何の(笑)2人で盛り上がってダンスステップ踏んじゃったりすると、セットを壊しちゃうんじゃないかとハラハラしました。ギルフリーも演技も上手いですから、静かに復讐に燃えるファルケ博士を掘り下げられるだけ掘り下げてくれたと思いますが、完璧に役不足。もっと歌も聴きたいよ~!!これが初来日だそうですから、これからもっと色んな役で来日してくださいね~。

ところで、デカさでは上には上がいるもので、看守長フランク役のジョン・デル・カルロ(John Del Carlo)は、この2人を横に広げた体格の良さで更にデカイ!!(笑)ここまで大きい人たちが揃うと、女性が異様に小さく見えました(^_^;)アルフレード役のゴードン・ギーツ(Gordon Gietz)は背も高くてハンサムなのにあまりぱっとしない声でしたが、「椿姫」からのデュエット(なるほど、アルフレードね^^)やら「トゥーランドット」の♪ヴィンチェ~~ロ~~~~!やらを繰り出し、会場を笑いの渦に包んでいました。

そんな男声陣に劣らず、女声陣も魅力的でした。まず、ロザリンデ役のアンドレア・ロスト(Andrea Rost)は、とにかく演技が上手いし、可愛らしい!!アルフレードが諦められないのも納得の可愛らしさです。ワルツも上手いし、夜会で注目を集めるのも納得でした。声のほうは、ビブラートがきつくて若々しさがあまり感じられなかったのが残念でした。特にチャールダーシュはもうちょっと歌えて欲しかったですが、アルフレードとのいちゃいちゃ場面や時計を取り上げる場面は抜群の演技力で楽しませてくれました。驚くときに「Mamma Mia!」なのには思わず笑っちゃいましたけど…ロザリンデってナニ人??

そして、アデーレ役のアンナ・クリスティ(Anna Christy)は、ちょっとぽっちゃりした容姿が、チャーミングで可愛いアデーレによく合っていましたし、歌声も艶やかで若々しくて高音までしっかり出ていました。上演中、最近どこかで見た名前だな~とずっと思っていたのですが、今年ENOで上演した「キャンディード(Candide)」のクネゴンデでした!(参照:ロンドンの椿姫さんの「キャンディード」記事)あの注目したいと言った日本とアメリカのハーフの彼女でしたか~。いやいや、こんなにすぐに聴けるとは思っていませんでしたが、なるほど、声も演技もこの先が有望そうな歌手です。これからも応援したいと思います!

オルロフスキー公を歌ったキャサリン・ゴールドナーは付け髭をしてデカダンな雰囲気満点(^^)歌も十分聞かせてくれましたし、女性の演じるオルロフスキーとしてはかなり良かったと思います。

あとは、今回はフロッシュが元宝塚歌劇団の大浦みずきだったのは驚きました。かっこよくて清潔なフロッシュって?(笑)監獄の場面で「王妃様!フェルゼンが助けに参りました!」(「ベルばら」ネタですね)なんてマントを靡かせて颯爽と登場したときには、半分以上の客がぽかーんと置いてきぼりにされてすべり気味でしたけど(^^)指揮者や観客、更には偽アイゼンシュタインとのやり取りなどで次第に笑いを誘っていました。1幕ではイタリアオペラ・メドレーを聴かせてくれたアルフレードは、監獄内では「ベルサイユのばら」より「愛あればこそ」(♪愛、それは甘く~というやつです)を熱唱!(笑)かなり聞き取り易い綺麗な日本語で歌って会場も盛り上がりました。

毎回王道の演出を持ってくる音楽塾ですが、今回もおなじみデイヴィッド・ニース(David Kneuss)の落ち着いて見ていられる演出で、テンポもよくて気持ちが良かったです。やっぱりオペレッタは適度に豪華なセットと王道の演出で、最後はハッピーエンドで気持ちよく劇場を後にしたいですね。歴代の音楽塾の公演の中で、今回が舞台作品として一番面白かったと思います(まあ、オペレッタですし当然ですかね)。楽しかったのは、ユーモアたっぷりで上手に訳された字幕のお陰もあるかもしれません。

さて、来年は「ヘンゼルとグレーテル(Haensel und Gretel)」、アンゲリカ・キルヒシュラーガー(Angelika Kirchschlager)がヘンゼル役、バーバラ・ボニー(BarbaraBonney)がグレーテル役で登場…する予定です。なるほど、兄妹に見えなくもない配役です(^^)小澤さん、もう少し元気で指揮を続けてくださいね~。


J・シュトラウスII世「こうもり」
演出:デイヴィッド・ニース

ロザリンデ:アンドレア・ロスト
ガブリエル・フォン・アイゼンシュタイン:
ボー・スコウフス

アデーレ:アンナ・クリスティ
アルフレート:ゴードン・ギーツ
オルロフスキー公:キャサリン・ゴールドナー
ファルケ博士:ロッド・ギルフリー
フランク:ジョン・デル・カルロ
ブリント:ジャン=ポール・フシェクール
フロッシュ:大浦みずき

指揮:小澤征爾
小澤征爾音楽塾オーケストラ・合唱団
写真は「オピ・リーナ」より 
左から:ギルフリー、ロスト、ドアラ(名古屋公演ゲスト)

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コメント 17

sarahoctavian

小澤さん、6月の水戸管弦楽欧州公演ではヘルニアでやむなくキャンセルでしたが、お元気になられたんですね。プリンツレゲンテン劇場ソールドアウトも彼が指揮するからこそだったのでしょうけどね。(私も行きましたです)
それだけ巨体の出演者に囲まれて余計に小さく見えてしまったじゃないんですか?
来年はキルヒシュラーガーやボニーも出演予定なんで、すごいんですね~。楽しそう。
by sarahoctavian (2008-08-01 13:51) 

euridice

パスしちゃいましたが、この記事を読んで、
後悔先に立たず・・の気分です。

7月30日なら行けた・・のに。
それにしても凄いスケジュールですね。
この暑い中、一日ずつで移動ですか!
by euridice (2008-08-01 18:38) 

stmargarets

来年、観たいっ・・・。
by stmargarets (2008-08-01 22:24) 

Sardanapalus

sarahoctavianさん>
>6月の水戸管弦楽欧州公演ではヘルニアでやむなくキャンセルでしたが、お元気
あ、キャンセルの理由はヘルニアでしたか。それで、あまり無理しないように気をつけているのかしら?以前は勢いよく飛び出してきたカーテンコールが、今年は大人しかったので心配してしまいました。確かに、周囲の男声陣が巨大だったのもそう感じた一因かもしれません(^^)この音楽塾、毎年人気歌手が来てくれるのでなかなか面白いですよ♪
by Sardanapalus (2008-08-01 23:57) 

Sardanapalus

euridicceさん>
>パスしちゃいましたが
あら、残念。バリトン好きな私にとっては、歴代最高に気分の盛り上がった公演でしたよ(笑)聴きたいと思っていたスコウフスもギルフリーも一度に聴けて、更にベテランのロストと(正に)新進のクリスティも聴けて、大満足です。チケット取りが大変ですが、来年はいかがですか?

>凄いスケジュール
毎回、歌手、スタッフ、関係者の方たちは暑いのにハードスケジュールで大変だな~と思いながら見に行きます。歌手は暑さなんてものともせず、夜会服にコートで元気いっぱいでしたけど(^_^;)
by Sardanapalus (2008-08-02 00:07) 

Sardanapalus

stmargaretsさん>
>来年、観たいっ・・・。
じゃ、来年は帰省をこの時期にしますか?飛行機高いですが、お菓子の家がしっかり出てくる王道演出で聴けると思いますよ♪
by Sardanapalus (2008-08-02 00:09) 

keyaki

ロドニー君は、私の資料では191センチです。
やっぱり、190センチ以上は、大きいですよね。私が本物のオペラ歌手をはじめて見たのがミルンズ(193)でしたから、オペラ歌手=背が高いなんで、小さい方が吃驚かも。(笑
ちなみにジャン=ポール・フシェクールは、152センチだそうです。

この場を借りて、ポップ系にも強い Sardanapalusさんにお伺いしたいんですけど。
Josh Groban (bombastic), Russell Watson (bland yet bombastic) and Il Divo (bombastic times four).
このカッコのなかのbombastic,bland yet bombastic,bombastic times fourってなんでしょう。レーベルかなともおもいましたが、調べてもわかりません。ご存知でしたらよろしくお願いします。
by keyaki (2008-08-02 01:09) 

りょー

わ~。後悔先に立たず、私もです。
こんなにバリトン好きなのに~。
by りょー (2008-08-02 12:00) 

Sardanapalus

keyakiさん>
>やっぱり、190センチ以上は、大きいですよね
180センチあると、舞台上でも大柄だなと思いますけど、190センチ以上の人が3人もいると、周りとの遠近感がずれまくりでした(^_^;)

>カッコのなかのbombastic,bland yet bombastic,bombastic times fourってなんでしょう
どういう文脈かが分かりませんが、bombasticというのは、「大げさな」「大仰な」「もったいぶった」というようなニュアンスの形容詞ですから、単にこれらクロスオーバー歌手の歌い方のことを述べているのではないでしょうか?Watsonに対する「味気ないけど大げさ」という表現に笑ってしまいました(^^)
by Sardanapalus (2008-08-03 11:56) 

Sardanapalus

りょーさん>
行かれなかったのですね。りょーさんなら気に入りそうな公演でしたよ。

>こんなにバリトン好きなのに~。
うふふ、スコウフスとギルフリー良かったですよ~~。と、いじめてみたり(^^)
by Sardanapalus (2008-08-03 12:01) 

keyaki

Sardanapalusさん
なるほど、それでイル・ディーヴォは、bombastic times fourなんですね。(笑
これって、ファンの人たちにはどうなんでしょう...カチンときませんか?

>どういう文脈かが分かりませんが
いえね、グリゴーロ君がポッツは良くない...とか言ったりしてる記事なんですけど、この部分は、記事を書いた人の印象ということになりますけど。
原文全部リンクしてますので、お時間のあるときに覗いて見てください。
http://colleghi.blog.so-net.ne.jp/2008-08-01

by keyaki (2008-08-03 12:29) 

Sardanapalus

keyakiさん>
>イル・ディーヴォは、bombastic times fourなんですね。(笑
>これって、ファンの人たちにはどうなんでしょう...カチンときませんか?
熱狂的なファンにはカチンとくるでしょうねぇ。でも、実際に歌っている映像を見るともったいぶった感じがありますからね(^^)

グリゴーロ君の記事読みました。ポッツは明らかにサイモン・コーウェルの作り上げた商品ですね。せめて彼のオリジナル曲を作ってあげればいいのに、といつも思います。
by Sardanapalus (2008-08-03 13:27) 

しま

ああ~こちらの感想、サルダナさんに先を越されてしまいました。
名古屋はかなり盛り上がったみたいですね♪
横浜は、前半はお客さんのムードがちょっとお行儀良すぎって感じでした。
後半になって、いい感じにくだけてきましたけどネ。

来年はバーバラ・ボニーですか。見逃せませんね~。
by しま (2008-08-04 01:08) 

しま

↑ごめんなさい。名古屋じゃなくて、浜松でしたよね?
by しま (2008-08-04 01:10) 

Sardanapalus

しまさん>
私が行ったのは、仰るとおり
>名古屋じゃなくて、浜松
です。写真は、単にドアラが面白かったのでネタとして持ってきました。

>横浜は、前半はお客さんのムードがちょっとお行儀良すぎ
浜松も、アルフレードが一生懸命椿姫とかリゴレットのフレーズを歌っていても反応が薄かったです(^_^;)マイナーすぎだったかしら。

>来年はバーバラ・ボニーですか。見逃せませんね~。
来年も充実のキャスティングですね。ただ、低音歌手好きには女声主役でちょっと寂しさも感じます…。
by Sardanapalus (2008-08-04 21:27) 

彩

ご一緒できて楽しかったです~♪
やっとこさこちらの記事もアップし終わりまして、リンクもさせていただいちゃったので、ご報告にあがりました。
とんでもなく長くなっちゃいましたが、気が向いたときにでもお読みいただければ幸いです。
(記憶違いでもあったら教えてください;笑)

世間様の扱いでは、ロストのロザリンデとスコウフスのアイゼンシュタイン、が公演の目玉であったと思いますが(^_^;)、
おじさん3人とも歌も演技も絶好調で、バリトン好きに一番美味しい公演でしたね~。
「ベルばら」ネタ、確かに名古屋では置いていかれました、私(笑)。

>暑さなんてものともせず、夜会服にコートで元気いっぱい
ライトが当たってない時に、汗は拭いてましたよ。スコウフスの方が盛大に(笑)。

私など、女声陣がみんな自分と変わらない身長(もしくは低い)だったのに、むしろびっくりしました。
ギルフリーは、初めて映像で見たのがアムステルダムのドン・ジョヴァンニなので、この人担いじゃったんだから、あの騎士長すごいよな~、などと・・・(笑)。
by (2008-08-10 23:03) 

Sardanapalus

彩さん>
ホームページ記事へのリンクのご報告ありがとうございます!すごく詳しい感想で、読みながら「そうだった、そうだった!」なんていちいち頷いてしまいました(^^)

>バリトン好きに一番美味しい公演
本当ですね~。バリトンが主役の作品を持ってきてくれてありがとう!!と音楽塾には大感謝です。

>女声陣がみんな自分と変わらない身長(もしくは低い)
余計におじさんたちが大きく見えましたね(^^)オペラ歌手は意外と身長の低い女性歌手がいますよね。本当に素晴らしいと思います。
by Sardanapalus (2008-08-17 23:53) 

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