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METライブビューイング「ドン・パスクワーレ」 [オペラ(音源・映像・その他)]

※1月13日追記:コメント欄で話題になった休憩時間のインタビュー映像がYoutubeにUPされましたので、以下にリンクしておきます。


今シーズンのMETライブビューイング3つめの演目は、ドニゼッティ作曲の喜劇「ドン・パスクワーレ(Don Pasquale)」。ちょっとマイナーな作品ですが、私は「愛の妙薬」と同じくらい好きです。今回の公演は、一般的な目玉はアンナ・ネトレプコの歌うノリーナのようですが、私個人的には何よりオットー・シェンクの人気演出(2006年初演)と、マリウス・キーチェンの怪演が光っているらしい医者マラテスタを見られるというのが何より楽しみでした。

実際に見てどうだったかと言いますと、いや~楽しかったです。ネトレプコはお肉がついた分ますます元気な歌声を朗々と響かせながら跳ね回ってジョン・デル・カルロの巨大なパスクワーレを振り回し、キーチェンのマラテスタは医者というよりまるでイカサマ師のノリで悪知恵を働かせ、マシュー・ポレンザーニのエルネストはあくまでもダメ男(褒めています)。あっという間に時間は過ぎてしまいました。いや~キーチェンのマラテスタははまり役ですね!歌よし演技よしでのびのび演じているのでこちらまで楽しくなってきます。演出の方は、実は大絶賛とはいかなかったのですが、この作品の魅力は十分に伝えていたと思います。マラテスタとノリーナの場面は非常に面白かったのですが、ノリーナがネコをかぶっている場面や、パスクワーレの家がノリーナの趣味の家具で模様替えされてしまう場面などはもう少し振り幅を大きくして思いっきりギャグにした方が笑えると思うんですよね。2006年に、ROHのジョナサン・ミラー演出(こちらは一般的には不評なのですが)を見たときは、この辺りの処理が非常に上手くて感心したので、余計に物足りなく感じてしまったのかもしれません。

さて、実はこのライブビューイングでもうひとつ楽しみだったのが、休憩時間のインタビューでした。初日の朝にポレンザーニに息子が生まれて、皆が「エルネスト」にしろと言ってきたけど「ジョヴァンニ」にした話とか、ネトレプコとキーチェンの夫婦漫才とかを楽しみましたが、やっぱり注目だったのが次回のライブビューイング演目「ドン・カルロ」のCMで登場したロベルト・アラーニャとサイモン・キーンリーサイドの2人へのインタビューでした。グレーのジャケットでキめたアラーニャの隣に、用務員のおじさんブルゾン?のようなものを青いシャツの上に着たキーンリーサイドが、なるべく画面に映らないように努力…していたように見えました(笑)司会のスーザン・グレアムの質問に対して、2人とも至極真面目に答えていたと思います。特に印象に残ったのは、キーンリーサイドの「5幕版の『ドン・カルロ』ではテノールのことを常に考えて歌っています」という言葉。確かに、シラーの原作に比べてオペラだと、ロドリーゴに比べてカルロの魅力ってあまり伝わってこないんですよね。そんな中、主役を押しのけて脇役がストーリー展開を邪魔しないように気をつけているということでしょうが、私としてはロドリーゴが目立ってくれても全く問題なしなんですけど~(^^)そして噂に聞いていた通り、グレアムが「ありがとう」と言い終わる前に画面から消えていくキーンリーサイドには、思わず噴出してしまいました。

この充実した「ドン・パスクワーレ」のライブビューイングは、日本では今度の金曜日まで各地の映画館で上演中です。オペラ本編も、休憩時間のインタビューもオススメです。私は次回の「ドン・カルロ」が待ち遠しいです~。
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コメント 9

stmargarets

あはは。キーさん、面白すぎる(笑)。
観たい!!!
私もあのジョナサン・ミラーの演出結構好きだったのになぁ。
by stmargarets (2010-12-07 04:49) 

momo

私も見てきました。とっても笑えて、幸せな気分になりました。ネトレプコって明るい性格なんですね~(^0^)。

で、アラーニャとキーンリーサイドのインタビューの前半を見逃してしまったみたいなんです;;;。「テノールの邪魔にならないように、自分の立場を考えて、、」という処からは聞けたんですが、その前まで何を言ってたんでしょうか?私は何分くらい聞き逃した事になるんでしょうか?もうショックです;;;。
by momo (2010-12-07 20:05) 

Kew Gardens

ホント、楽しい出し物でした! お肉がたっぷりついたネトコちゃんをクフィーチェンが振り回したところなど、彼女自身がびっくりしていたように思います。 それにしても、あのノリーナのキャラは、ネトコちゃんの”地”かもと思いました。 そして、ダメ男ふうのポレンザーニが、私はお気に入りです。 

さて、もっと重要(?)だったDon Carlo宣伝インタビュー。 Alagnaって、いつも通り -- 私がステージ以外の公式の場で見たという意味ですけれど --黒(ダーク?)のシャツにグレーのスーツで登場していましたが、Keenlysideの恰好には、私も、プッとふきだしました。 いや、普通といえばそうですが、あのいでたちで、いくらマチネとはいえ、オペラ見に行くでしょうか? ”テノールの邪魔にならないように・・・”と言っているのは、舞台の上だけではなく、あのインタビューもだったりして。 

Momoさん、
最初からみていたはずの私も、あまりよく覚えていないのですが(汗)   まずAlagnaが話をしていて、フランス語版とイタリア語版の違いとか、あの有名な二重唄は、Don CarloがRodrigoの崇高な計画(陰謀という言葉を使っていましたが)に参画する同志の誓いみたいなものだとか言っていたと思います。 イタリア語版のほうがこの点が強調されているとか云々。 ここで、Keenlysideがくちを挟んで、「こんな時に(喜劇の幕間に)悲劇(Don Carlo)の話をするのは、気が引けるけれど、このオペラは現実世界を体現している。TVをつければ、世界のいろいろなところでおきている厳しい現実がある(なかなか理想通りにはいかないということ)」、なんて言っていたような。 これは、最後にいったのかしら?  
テノールの邪魔をしないというセリフは、S.グラハムがCosi fan tutteなんかでいろいろ共演したわよねとKeenlysideに話を向け、Rodrigo役についてどう考えているかという質問がでた時だったと思います。 Gorgeousな唄はあるけれど、と前置きしていましたね。 おしゃべりAlagnaがフレンチなまり英語でもたもた話をしていたから、そんなに逃したところは、ないのではないでしょうか? 

それでも、記憶違いしているかもしれません。 Sardanapalusさん、皆様追加訂正お願いします。
by Kew Gardens (2010-12-07 21:05) 

Sardanapalus

stmargaretsさん>
>キーさん、面白すぎる(笑)
話している内容はいたって真面目なのに、あの服装とあっという間に去って行く姿に目が点でしたよ~。相変わらずです。

>ジョナサン・ミラーの演出結構好き
あれは中々いけてますよね!?オペラ友達にも不評だったりするんですけど、あのドールハウスを舞台にしたコンセプトは、「ドン・パスクワーレ」のストーリーにぴったりで大正解!だと思うんですよ。また見たいなぁ。
by Sardanapalus (2010-12-08 00:20) 

Sardanapalus

momoさん>
ご覧になりましたか!こういう喜劇、しかも最後も大団円という作品は見終わった後も気分がいいですよね。勿論重厚な悲劇にどっぷり、もいいですが、こういう楽しく見られる作品も大好きです。

>アラーニャとキーンリーサイドのインタビューの前半を見逃してしまったみたい
あらら、それは残念でしたね。ええと、ほぼKew Gardensさんが書いてくださっている内容だったと思います。まず、アラーニャが初めてのイタリア語カルロを歌うことについて、「フランス語はロマンティック、イタリア語はより凝縮されてドラマチック」というようなことを話し、その後「友情の二重唱」は素晴らしい曲ですが、劇中ではどんな位置づけですか?という質問に、「ロドリーゴの策略を実行に移すという誓いでストーリーの転換点なのでとても重要だけど、朗々と歌ってしまうと単なる定番曲になってしまって難しい」という内容の話をしていたと思います。その後、キーンリーサイドが「暗部を抱える巨大な権力に反発する、理想に燃える若者たちというのは現代でも世界中のどこでもありえるテーマだ」と付け加えていました。そして、グレアム曰く「1000回以上共演している」(確かにかなりの共演数ですね)キーンリーサイドに、悲劇的な役ロドリーゴを演じることについての質問が出ていたと思います。私も具体的に全部思い出せず、ごめんなさい。
by Sardanapalus (2010-12-08 00:49) 

Sardanapalus

Kew Gardensさん>
>あのノリーナのキャラは、ネトコちゃんの”地”かも
それは私も思いました!元々姉御肌ですから、ああいうお転婆な役のほうがしっくりくるんでしょうね。こういう役のほうが、死んでしまう役より数段魅力的だと思います。

>ダメ男ふうのポレンザーニが、私はお気に入り
私も気に入りましたよ、ポレンザーニの歌うエルネスト!あのトム・クルーズをオペラ歌手にしたような顔が、こういった役にはまりますね(笑)勿論、声も大好きです。

インタビューの内容をありがとうございました!私もこれ以上思い出せませんよ~。ダメだこりゃ。

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以上のSardanapalusからのコメントは、so-netブログの障害でログインできない間にアップしましたので、管理者ですがGuest表示になっています。
by Sardanapalus (2010-12-08 00:59) 

Kew Gardenさん、Sardanapalusさん

ありがとうございました~。私はアラーニャが喋ってた分を聞き逃したんですね~、、(ま、イイかぁ~、、^0^)。こうして教えていただいたら聞いた筈の後半部分もかなり記憶から抜け落ちてました;;。

Kew Gardenさん

詳しく教えてくださってありがとうございました。

>S.グラハムがCosi fan tutteなんかでいろいろ共演したわよねとKeenlysideに話を向け、Rodrigo役についてどう考えているかという質問がでた時だったと思います。

グラハムと共演したグリエルモのyou tube映像をお気に入りに入れて、時々癒されてます(^0^)。ベルリン・ガラのDVDはゲットしましたので、コレも再発売してくれないかな~、、と待ってるのですが、、。 



by Kew Gardenさん、Sardanapalusさん (2010-12-08 19:34) 

momo

すみません、上のはmomoのコメントです。名前のところに「宛名」を入れてしまったみたいです;;。最近ボケが段々ひどくなってるみたいで、、;;;;。コレ訂正できないんですよね(^^;;)。

インタビューは途中からしか見れなかったので、キーンリーサイドの普段着姿を見ても、「リハーサルの合間にインタビューを受けに来たのか~」と何も不思議に感じませんでした(^^;;)。あの格好で客席に座ってたんですか?(^0^)
by momo (2010-12-08 19:43) 

Sardanapalus

momoさん>
>アラーニャが喋ってた分を聞き逃したんですね~、、(ま、イイかぁ~、、^0^)
そういうことですね。重要な部分はほぼ逃さなかったんじゃないかと思います。

>キーンリーサイドの普段着姿
>あの格好で客席に座ってたんですか?
私は、「座っていた」方に賭けます!ロンドンでは、もっとありえない格好で劇場内にいたこともありますから(笑)最後、あっという間に去って行ったのも休憩時間が終わりそうだったからなんじゃないか、と思っています。
by Sardanapalus (2010-12-11 00:10) 

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