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サイモン・キーンリーサイド リサイタル@Usher Hall [Keenlyside]



8月19日に、エディンバラ・インターナショナル・フェスティバルの一環として、サイモン・キーンリーサイドのリサイタルが行われました。しかし、会場はリサイタルにどう考えても大きすぎるUsher Hall…。せっかくQueens Hallという素晴らしい会場があるのだから、チケット数をさばこうなどと考えずに、歌曲を聞く環境のことをもっと考えて設定してほしいものです。

実際に、リサイタルが始まって2曲くらいはキーンリーサイドもピアノのマルティノーも手探りしているような感じでやりにくそうでした。それでも、声が温まってからは次第に違和感もなくなっていき、後半は会場のことをあまり気にせず楽しむことが出来ました。

最初のマーラーの歌曲群はいわばウォームアップといった雰囲気でしたが、最後の"Wer hat dies Liedlein erdacht"は一度生で聴きたいと思っていた曲だったので、念願がかないました。続くデュパルクとドビュッシーのフランス歌曲では、音域的にも表現力においてもキーンリーサイドの魅力が非常に良く出ていたと思います。特にデュパルクはタイトルすら知らなかった曲でしたが、2曲とも構成が面白く、引き込まれました。マルティノーのピアノも、フランス歌曲のエスプリが良く出た演奏で、2人ともとても楽しそうでした。

後半に入ると、キーンリーサイドはますます絶好調で、シュトラウスとシューマンの歌曲をたっぷりきかせてくれました。特に、シュトラウスの"Befreit"は圧倒的な歌唱で、初めて聞いた曲ですがシュトラウスの作品中で一番のお気に入りになりました♪歌詞は亡くなった奥さんを偲んでいる内容だそうですが、恋人同士ならば誰にでも当てはまりそうです。ちなみに、こんな↓曲です。(バリトンのものが無かったのでテノールを。)


そして、最後のシューベルトの時に苦笑しながら舞台上に戻ってきたのでどうしたのかと思ったら、「これで終わりかと思っちゃった(笑)」とのこと。オイオイ(^_^;)きっとマルティノーが「まだ残ってるよ~」と教えてくれたのでしょう。シューベルトは軽めの曲と重たい曲をバランスよく聴かせてくれましたが、個人的にはピアノをいとおしそうに触りながら歌った"An mein Klavier"が印象にのこりました。

熱烈なアンコールには、シューベルトとブラームスを1曲ずつでしたが、最後まで流れのある、素晴らしいリサイタルだったと思います。このリサイタルの模様は8月31日にBBC Radio 3で放送されますが、放送時間の関係上、おそらく何曲かカットされてしまいそうです。"Befreit"は残しておいてね~、BBCさん。

私の感想以外にも、イギリスの音楽批評ウェブサイトSeen and Heard Internationalに大絶賛の批評が載っていますのでご紹介します。


【プログラム】

Simon Keenlyside, bariton
Malcolm Martineau, piano

Mahler:
Ich atmet’ einen linden Duft!
Des Antonius von Padua Fischpredigt
Ich ging mit Lust
Blicke mir nicht in die Lieder
Frühlingsmorgen
Liebst du um Schönheit
Wer hat dies Liedlein erdacht

Duparc:
Le manoir de Rosemonde
Phidyle

Debussy:
Nuit d’etoiles
Voici que le printemps
Les angelus
Mandoline

Strauss:
Winternacht
Waldesfahrt
Das Rosenband
Befreit
Efeu
Ständchen

Schubert:
Auf der Donau
Der Einsame
An mein Klavier
Prometheus
Wanders Nachtlied ll
Im Walde

アンコール:
1. An den Mond in einer Herbstnacht (Schubert)
2. Ständchen (Brahms)
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コメント 6

Kew Gardens

私もSeen and Heard Internationlのレビューを読みましたが、ホント大絶賛ですね。 素晴らしいリサイタルお聞きになれて、エジンバラまでいかれたかいがありましたね。 

ところで、マーラーでは、”かなり歌詞を間違った”とご本人が告白しているようですが、ドイツ語だからごまかしができたのかしら?

>ピアノをいとおしそうに触りながら歌った"An mein Klavier"
個人的な思いいれがあるのでしょうか? 私は、NYでEmanuel Axの伴奏で歌ったのを聞きました。 その時は、歌い終えた後も、実に少年ポイ(50過ぎのオジサマに失礼ですが)恥ずかしそうな表情をみせて、伴奏のAxに歩み寄ってハグしたので、ちょっとびっくりしました。 まだ、演奏会は終わっていなかったのに。 今回は普通でしたか? 
by Kew Gardens (2011-08-24 00:29) 

Sardanapalus

Kew Gardensさん>
毎日遊びまわっているので記事を書くまでに時間がかってしまってすみません!

>エジンバラまでいかれたかい
オペラは何度も行っていますが、キーンリーサイドのリサイタルを聞くのは初めてだったのですが、期待以上の公演でした。私はマルティノーも大好きなので、このコンビは最高です!(^^)

マーラー、歌詞間違ってたかしら?私はあまり聞き込んでないので気づかなかったですが、調子が上がらなかった理由はそんなところにもあるのかもいれませんね。

>>"An mein Klavier"
>個人的な思いいれがあるのでしょうか?
そうかもしれません。今回はハグは無かったですが、明らかにこの曲だけ客席ではなくピアノに向けて微笑みながら歌っていました。マルティノーも時々微笑みながらキーンリーサイドと目を合わせていたと思います。歌詞からしても、純粋に歌手がピアノへ捧ぐ名曲ですよね。次の曲"Prometeus"はかなり重たい曲だったので、この曲の和やかな雰囲気は、演奏者にとっても聴衆にとっても良い息抜きになっていたのではないでしょうか。
by Sardanapalus (2011-08-24 02:15) 

Kew Gardens

BBCのOn Demandで、このリサイタルを聞きました。 伸び伸びと歌っていますね、Keenlyside。 Martineauのピアノも寄り添うようでいながら、一音一音の響きが美しく、単なる伴奏の粋を超えていたと思います。 二人とも好調だったのがよくわかりました。 

ところで、Debussy の4曲目が終わったところで、観客から笑いがもれていました。 何かまた、突っ込みたくなるような光景がステージの上で展開されたのでしょうか? 

by Kew Gardens (2011-09-01 23:27) 

Sardanapalus

Kew Gardensさん>
Lunchtime Concertの時間枠でしたけど、何とかプログラムが全曲入ったようでカットもなく一安心です。短いインタビューも興味深い内容ですね。

>伸び伸びと歌っていますね
そうですね、マーラー以降は特に、すごくリラックスして歌っていたように見えました。マルティノーとも阿吽の呼吸というやつですね(笑)

>Debussy の4曲目が終わったところで、観客から笑い
ご心配なく!?(^^)特に変なことがあったわけではなく、曲の雰囲気が軽妙で、「チャンチャン♪」というような楽しげな終わり方をした2人の演奏に客席が反応しているだけです。
by Sardanapalus (2011-09-03 00:44) 

Kew Gardens

今、BBC Radio 3のオンデマンドで、D. Damrauのエディンバラフェスでのリサイタルを聞いています。 伴奏がピアノではなく、ハープというのが変わっているのですが、Keenlysideのプログラムと3曲かぶっています。

Debussy : Nuit d’etoiles
Strauss: Ständchen, Efeu

>短いインタビューも興味深い内容ですね。
確か、”Straussはソプラノやテノール向きだけれど・・・”とか言っていませんでしたっけ? 同じ歌ですが、ソプラノ、バリトンで聞くと、表現方法も違いますし、受ける印象も変わるりますね。 Damrauはもしかしたら風邪をひいていたのかもしれません。 歌う前にちょっと咳をしたり、高音が少し苦しそうですが、Charmingな様子がうかがえます。 Sardanapalusさん、もしかしたら、このリサイタルもご覧になったのかしら?

今回のエディンバラでのプログラムは、Keenlysideの前に登場したSkovhusもほぼ同じMahlerの曲を歌ったととか。 DamrauとはDebussyとStraussで重なっています。 3つのリサイタルを聞けたら、いろいろ比較ができて楽しいでしょうね。 
by Kew Gardens (2011-09-16 20:57) 

Sardanapalus

Kew Gardensさん>
>D. Damrauのエディンバラフェスでのリサイタル
残念ながらこちらは日程が合わず聞けませんでした。キーンリーサイドと同じ曲を歌ってるんですね。確かに、声域が変わると、曲の印象はかなり変わりますよね。私もさっそくオンデマンドで聞いてみようと思います。

>Skovhusもほぼ同じMahlerの曲を歌った
こちらは私がエディンバラに行く前の日だったんですよ。批評は読みましたが、実際聴けたら比較できて面白かっただろうと思います。
by Sardanapalus (2011-09-17 13:44) 

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