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ミュージカル「レ・ミゼラブル」@Queens Theatre [演劇]

今回のロンドン行の目的のひとつは、ミュージカル界のスター俳優、ラミン・カリムルー(Ramin Karimloo)が主役を演じているミュージカル「レ・ミゼラブル(Les Miserables)」を見に行くことでした。私がこのミュージカルを見るのは久しぶりですが、イギリス留学中には好みのキャストが揃っていたこともあって何度も見に行ったものです。その時の良い印象を壊さないように今まで避けていたのですが、最近「オペラ座の怪人」25周年記念公演でも主役を演じたカリムルーがジャン・バルジャン役に挑戦、と聞いてはやはり見のがせない、と思い立ったのでした。

ロンドンの劇場ではロングラン中のミュージカルが売り切れということはまずないのですが、今回は土曜の昼公演を狙ったせいもあってか、珍しくチケットを入手するのが難しかったです。もう諦めようかとも思いましたが、当日の開演1時間半前に劇場のボックスオフィスに行ってみたところ、丁度運良くリターンチケットが1枚出てきたところでした。しかも、少し見切れる席だったのでたったの15ポンド(約1900円)!ラッキー♪こういう経験をすると、やっぱりロンドンのチケット販売システムは素晴らしいなぁ、とにんまりしてしまいます。

そんな感じで何とかチケットを入手して観た公演の出来はどうだったかというと、う~ん、期待が大きかったというのもあるでしょうが全体で80点くらいでしょうか。名前を覚えておけばよかったと思ったのはファーストキャストだったマリウス役とアンダースタディだったアンジョルラス役くらいで、他の俳優達は高いレベルを保ってはいるのですが以前観たときの俳優の演技には勝てないかな~というのが正直な感想でした。それは、カリムルーにも言えることで、確かに歌えるし演技力も全く問題ないのですが、やはりまだ「若すぎる」印象が強かったです。歌いあげる部分はガンガン歌ってもらえて気持ち良かったですが、年を取ってからの場面でもいつでも元気いっぱいな声質だったので、歌詞との違和感を感じてしまいました。以前観たバルジャン達はそれなりに年配の俳優達で、それぞれに最期の「枯れた」演技が素敵だったので、余計ににじみ出る若さが気になってしまったのかもしれませんが…。今の段階では、「オペラ座の怪人」のファントム役の方がよっぽど似合っていると思います。ただ、カリムルーはまだ役を歌い始めて日が浅いですし、バルジャンとしての契約を延長したようなので今後は次第に役の理解を深めていってくれるはずです。(でも個人的には、バルジャンよりファントムで見たいです!^^)

今回は、演出を練り直したバージョンも初体験でしたので、以前からどう変わったのか、果たして改善されたのか改悪されたのか、という点にも注目していました。新しいオーケストラの音色は重厚さには欠けるもののメリハリがきいていて好印象でしたが、今回の公演では音楽のテンポが速すぎて歌詞が追い付かず、俳優達が苦戦している様子ばかりが感じられて残念ながらストーリーに没入できませんでした。大体演出を練り直したというと舞台演出上で変更になった部分が気になるものですが、この新「レ・ミゼラブル」の場合は音楽のテンポが早回しのようになったというのがとにかく気になりました。特にこの作品は英語歌詞の音数が多く早口言葉のような部分も多いので、以前のバージョンではすっきりぴったりとはまっていた部分がごにょごにょと流れていってしまって、折角の素敵な歌詞が聞き取れずにもどかしく感じました。特にジャベールやテナルディエ夫妻といった重要な役どころの歌詞が流れてしまうと、作品の魅力は半減してしまうものです。

そんな感じで、期待が大きかったからか少なからず残念に感じた部分も多い公演でした。ただ、「レ・ミゼラブル」という作品がミュージカルの名作であるという事実は変わりませんので、今後、早くなったオーケストラのテンポに俳優達がついていけるようになったら、また以前のように充実した公演が見られるようになると思います。
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ソロミュージカル「ロートレック」@C aquila [演劇]


ミュージカル俳優、沢木順が制作・主演しているソロミュージカル「ロートレック(Toulouse-Lautrec: The Musical)」が今年のエディンバラ・フェスティバル・フリンジに参加しているという話をきき、面白そうなので日本語版と英語版の2公演を見比べてみました。ソロミュージカルとは、いわゆる一人芝居のようなもので、登場人物全員を一人の俳優が演じるという形式のミュージカルです。

まず、最初に英語版の公演を見たのですが、こちらは沢木さんではなくスコットランド出身のアレックス・ネスミス(Alex Nasmyth)という若手俳優が演じていました。舞台上には小型のイーゼルが2つあるだけのシンプルな舞台装置でしたが、ロートレックの生い立ちを面白くまとめ上げた台本の巧みさとメロディーの美しい音楽で語られるストーリーは退屈する部分もなく、1時間弱の公演はあっという間に終わってしまいました。貴族の血筋を守るため代々血族婚を繰り返したため、生まれつき骨がもろく背が伸びなかったトゥールーズ=ロートレックがコンプレックスを抱えながらも成長し、画家として才能を開花させていく過程についてはちょっと性格が素直すぎるような気がしましたが、短い生涯の最期、母と父への想いを語る部分などはほろりと来てしまいました。現実にここまで感動的だったかどうかは知りませんが、そこはフィクションのいい所(^^)とても清々しい気持ちで劇場を後にしました。

そして、翌日に沢木順の演じる日本語版を見ました。日本語版は英語版より更に短く、45分程度の上演時間だったように思います。元々1時間半くらいあったそうですので、上演前に沢木さんが口上として語っていた通り「想像力を駆使して」観る作品になっていました。個人的には、英語版では語られていたトゥールーズ=ロートレックの父の息子に対する言葉や、最期の親子の場面の細かいセリフなどが削られてしまっていたのが非常に残念でした。ただ、沢木さんの舞台は久しぶりだったのですが、常にエネルギッシュな熱のこもった演技は相変わらずで、このソロミュージカルの魅力は十分に伝わってきました。また、開演前の口上から観客ひとりひとりを巻き込んでいき、終演後も全員を握手で送り出す姿勢には、舞台人としての心意気を感じました。

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ミュージカル「リトル・ナイト・ミュージック」 [演劇]

ロングランしているからとのんびりしていたら25日が千秋楽だということで、滑り込みで「リトル・ナイト・ミュージック(A Little Night Music)」を見てきました。新聞各紙の批評が軒並み5つ星という高評価だったので期待していきましたが、それを裏切らない素晴らしい公演でした。やっぱりトレヴァー・ナン(Trevor Nunn)の演出はセンスがいいですね~~。コメディとシリアスの配分が絶妙ですし、限られた舞台セットを工夫して作品の魅力を最大限に引き出していました。

あらすじ:中年弁護士のフレデリック・エーガーマンは18歳のアンと再婚して11ヶ月がたつが、アンは未だに処女のまま。フレデリックの先妻との間の息子ヘンリックは、そんなアンに恋心を抱き続けている。ある日、フレデリックとアンはフレデリックの元恋人で女優のデジレ・アームフェルトの芝居を見に行くが、デジレとフレデリックの関係を疑うアンは芝居の途中で帰ってしまう。一度はアンと連れ立って帰ったフレデリックだったが、アンを寝かせた後、劇場に戻りデジレと1夜を共にする。と、そこへデジレの恋人カールマグナス伯爵がやってきてひと騒動になるが、ヘンドリックとデジレで何とかかんとかごまかすことに。しかし、伯爵は2人の関係を疑い、妻のシャーロットにフレデリックを探るよう命令する。旧知の仲のアンとシャーロットはお互いの夫をデジレに取られてしまったと慰めあうが、そこにデジレの母からエーガーマン一家へ、彼女の屋敷への招待状が届く。実はそれは、フレデリックとよりを戻したいデジレが意図したことだった。それぞれの思惑を抱えて田舎のお屋敷に集まるアームフェルト一家、エーガーマン一家、そして無理やりなだれ込んだカールマグナス伯爵夫妻。果たして、それぞれの恋の結末は…?

ちょっとごちゃごちゃしたストーリーですが、俳優達も皆はまり役でしたので、出だしからすんなりと入っていけました。ソンドハイムのおしゃれな音楽と話の展開がぴったりで、面白いところは大いに笑いましたし、優柔不断なフレデリックにデジレが「ようやく私にはあなたが必要だと気づいたのに、あなたは応えてくれないのね、やってられないわ」とチクリと責めるところ(有名な"Send in the Clowns")には、ほろりとさせられました。やっぱりいい曲です♪じんわりと心にしみるミュージカルでした。

<参考>グレン・クローズのSend in the Clowns

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演劇「冬物語」と「櫻の園」@The Old Vic [演劇]

映画監督サム・メンデス(Sam Mendes)が演出を担当し、イギリスとアメリカの俳優を同じ舞台で共演させるThe Bridge Projectの2本立て芝居の公演を見てきました。演目は、シェイクスピアの「冬物語(The Winters Tale)」とチェーホフの「櫻の園(The Cherry Orchard)」です。

まず、最初に見たのは「冬物語」の方でした(あらすじはWikipediaへどうぞ)。演出のコンセプトは、シチリア=イギリス、ボヘミア=アメリカへの読み替えというものでしたが、特にボヘミアの方は読み替えが非常に面白くはまっていたと思います。それから、シチリア人はイギリス人俳優、ボヘミア人はアメリカ人俳優が演じるというのも、舞台セットがシンプルなものだったのでアクセントの違いで状況が判断できて便利でした。ただ、ボヘミアと比べてシチリアの描写はイマイチ焦点が定まらないというか、特にイギリス風とは言えないような漠然としたセットだったのが残念でした。

そして次に見た「櫻の園」の方は、イギリス、アメリカ両方の俳優達が入り乱れてトム・ストッパード(Tom Stoppard)が英訳したロシアの戯曲を演じる、ということが話題になっていました(あらすじはWikipediaへどうぞ)。こちらもセットはシンプルでしたが、衣装はロシアを意識したセンスのいいものでした。ただ、演出上は特に戯曲のロシアっぽさを感じさせる部分がなかったので、ロシア名で呼び合っていることに違和感を感じてしまいました。だって、英語しゃべってるし、時々アメリカ風のリアクションが出てくるんだもの…(^_^;)そうそう、楽しみだったストッパードによる英語訳ですが、非常に面白くて生き生きとした翻訳でしたし、この戯曲のコメディの要素を最大限に引き出して退屈させませんでした。

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ソウル・オペラ「魔笛」 [演劇]

魔笛を吹くタミーノ

現在9月のロンドン旅行記を頑張ってアップしていますが、今回は今年3月にロンドンに行ったときに見てきた「魔笛」の話です。それも、オペラではなく、英語ミュージカルの方(^^)つまり、木琴アンサンブルで演奏されたアフリカ風「魔笛(Impempe Yomlingo)」の方です。なぜ今頃この話をぶり返すのかというと、ストーリーを上手にカットして勢い良く楽しませてくれたこの「魔笛」がなんと、今度12月に日本公演を行うのです!これはぜひお勧めしなくてはいけません♪その日本公演でつけられたタイトルは…

ソウル・オペラ「魔笛」!



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イギリスの劇場コメディ作品紹介(Present Laughter、Absurd Person Singular、The 39 Steps) [演劇]

サマータイムマシン・ブルース スタンダード・エディション (初回生産限定価格)イギリスの演劇界と日本の演劇界を比べたとき、「やっぱりこういうのは日本の作品がいいな」と思える分野がひとつだけあります。それは、おふざけの要素の多い、日本で言うならば小劇場演劇でよく上演されるような作品群です。例えば劇団☆新感線(「ドラゴンロック~轟天~」)やヨーロッパ企画(「サマータイムマシン・ブルース」※映画化されています。詳細は左写真から)など、見終わった後に深く感動する、または考えさせられる作品というよりも、大いに笑って楽しんで、あ~すっきりした&楽しかった、と思えるようなエンターテイメント性の高い作品も私は大好きなのです。こういった芝居がいつでも楽しめるのは日本の演劇界の大きな特色ですね。本当に、イギリス留学中は時々無性に見たくなって大変でした(^_^;)でも、イギリスにも劇場で大笑いできる作品はあります!以前紹介した「ヒストリー・ボーイズ(History Boys)」もそんな作品の内のひとつでしょう。と言うわけで、今回は比較的最近楽しんだイギリスのコメディ作品について紹介したいと思います。




Present laughterまず、個人的にお気に入りの俳優兼劇作家兼作曲家、ノエル・カワード(Noel Coward)の作品は外せません!数年前にアラン・リックマン(Alan Rickman)とリンゼイ・ダンカン(Lindsay Duncan)共演でウェストエンドとブロードウェイでヒットした「私生活(Private Lives)」が有名ですが、私が見たのは「プレゼント・ラフター(Present Laughter)」という作品でした。こちらも、カワードらしいリアルな設定と計算しつくされた大騒ぎが繰り広げられる代表作だと思います。

あらすじ:1939年。アフリカへのドサ周り公演が決定している少々落ち目のスター舞台俳優ギャリー・エッセンダイン(Garry Essendine)は、旅立ちの用意をしつつもお得意の「かっこつけ生活」を続けていた。そんな中、彼に近づいてくる女優志望で追っかけの若い女性、今生の別れにと顔を見せに来る嫌味な別居中の妻、そしてギャリーに異常な執着を見せる神経症ぎみの若手劇作家などの濃いキャラクターが次々とギャリーの日常生活を邪魔しにやってくる。これら想定外の来客とのどたばたしたやり取りの中、かっこつけようとすればするほど彼の「酒と薔薇の日々」のイメージはほころびはじめて…。そこにロボットのような敏腕秘書、へっぽこプロデューサー、スウェーデン人の掃除おばさん、そして陽気な執事といったあくの強い脇役も巻き込んでギャリーがほころびを繕おうと大騒ぎするお話です。

初日のカーテンコールと観客&キャストインタビューこれはもう、芝居であんなに笑ったのは初めて、というくらい笑いました。とにかく誰にでも起こり得る設定の中、生き生きとして飾りのない登場人物のやり取りが抜群に可笑しいのです。既に中年なのにまだまだ20代そこそこの気分で人生を送ろうとするギャリーの、空回りと勘違いと自己弁護の台詞だけでもおなかが痛くなるくらい笑えます(^^)そんな一人大騒ぎのギャリーを冷やかに見守る秘書と妻、熱烈にアプローチしてくる追っかけと新進劇作家の温度差がとてもバランスよく配置されていて、テンポも良いので2時間半があっという間でした。台詞のタイミングなどがとても難しい芝居だと思うのですが、隅々まで意識の行き届いた演出と俳優陣の演技で、イギリスの演劇界のレベルの高さに改めて脱帽してしまいました。

ところで、この作品が書かれた1939年といえば、第2次世界大戦直前で、ギャリーのように無責任で贅沢で怠惰な生活を送るのが社会的に難しくなってきていた頃です。はたから見ればどうでもいいことをあれこれいじくり回し、細かい冗談で観客を笑いの渦に巻き込みながらも、その裏にある社会への皮肉や冷めた物の見方などが垣間見える、素晴らしいエンターテイメント作品でした。最近イギリスでもカワード作品が人気らしく、あちこちで上演されています。もし機会がありましたら、ぜひご覧になってください。損はしないはずです!あ、ちなみに、日本でも今年の秋に「私生活」を上演するようです。なかなか面白そうなキャスティングです。

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ミュージカル「魔笛(The Magic Flute)」 [演劇]

The Magic Flute@Duke of York's TheatreROHでオペラの「魔笛(Die Zauberfloete)」をじっくり楽しんだ後、ロンドン演劇ファンの間で話題になっていたミュージカルの「魔笛(The Magic Flute: Impempe Yomlingo)」も見てきました。この南アフリカ風魔笛は、今年のオリヴィエ・アワードのBest Musical Revival部門にノミネートされた演目ですが、既に何ヶ月も公演を重ねていたので私が見に行った平日昼公演は余裕で当日半額券を購入できる客の入りでした。

ミュージカルとなっていますが、カットはあっても一応モーツァルトの曲をしっかり演奏するというのでオーケストラがいるのかと思いきや、小さな劇場ということもあって、舞台と客席しか目に入りません。まさかテープを使うのか?と思っていたら、Tシャツにカーゴパンツ姿の指揮者が舞台上に登場し、指揮を始めました。あれれ??どこからか打楽器の音が聞こえるよ?と不思議に思いながらふと舞台袖に目をやると…目に飛び込んできたのは両脇にずらりと並んだ木琴!そう、この「魔笛」は全て木琴アンサンブルに編曲されていたのです。魔笛の音色はトランペットですし、それでも厚みの足りない部分はコーラスで補っていて、しっかりとアフリカ風に味付けされたカッコイイ編曲になっていました。音のイメージとしては、「ライオンキング」の音楽に近いと思います。

      タミーノと魔笛
序曲が終わって、いよいよタミーノ登場!おっと、赤いバンダナです!(笑)しかも、歌いだしたと思ったら、何とアフリカーンス(Arikaans)で、何を言っているのか分かりそうで分かりません!(^_^;)と思ったら、影タミーノがかぶせるように英語で歌ってくれました。この同時通訳歌い(笑)はとても面白かったので、こんな感じでずっとタミーノはアフリカーンスを話すのかと思ったのですが、予想に反してこの場面だけでした。どうせならずっとやって欲しかったなぁ。

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演劇「マクベス」@Gielgud Theatre [演劇]

丁度私がロンドンに滞在した頃、「スター・トレック(Star Treck)」のピカード艦長役や「X-MEN」のプロフェッサーX役で知られているパトリック・スチュワート(Patrick Stewart)が主演するシェイクスピアの「マクベス(Macbeth)」がロンドンの演劇ファンの間で話題となっていました。最初はあまり乗り気ではなかったのですが、去年は「テンペスト(Tempest)」で好評を博した演出家&主演俳優の組み合わせということで、こちらも公演前日に思い立って劇場窓口でチケットを購入しました。私が見に行った日は丁度Opening Night(初日)ということで、いつもよりドレスアップした観客が多い中、批評が出ていないため3階席は3分の2くらい空席でした。いくつも出る新聞批評の評価を見てから観客が動くロンドンらしい光景ですが、日本じゃありえないなぁ…。

あらすじ:スコットランドの将軍マクベスが、「マクベスは王になるだろう」という魔女の予言を偶然聞いたことから、夫人にも煽られて自分の主人である王ダンカンを暗殺し、王子達を差し置いてその後釜を狙う話です。王を殺した後は自分の野望にとりつかれてしまい、王子達に謀反の罪をきせ、同僚バンクォーや亡命したマクダフの妻子を殺害してまで自分の出世を磐石のものにしようと努力する反面、 良心の呵責に苛まれたり、殺した相手の亡霊に取り付かれてしまって王となっても休まることがなく、結局マクダフの仇討ちにあって絶命します。詳しいストーリーはWikipediaへ。

今回の演出は、イギリスのシェイクスピアといえばおなじみの現代読み替えもの。しかも第1次世界大戦か冷戦時代のロシア/ソヴィエト連邦の戦地のようで、兵士が血みどろで担架に乗って登場したり、魔女達が従軍看護婦の格好をしていたり、当然王様も将軍達も皆軍服で登場したりします。しかも舞台上はどこかの軍施設の地下のようで、レンガにペンキを塗っただけの壁とコンクリートうちっぱなしの床の部屋が、病院になったり、マクベスの屋敷になったり、参謀本部になったり、空気電車が登場したり…フェンスが開閉する大きな資材エレベーターは上手く使われていると思いましたが、バーナムの「森」もマクダフの亡命先の宮廷もレンガとコンクリートに囲まれた部屋の中というのは少し寂しかったですね。

ルパート・グールド(Rupert Goold)の演出で一番気に入ったのは、休憩の前後で同じシーンを違う視点から演じていた点です。それは、マクベスが催した晩餐の途中で殺したバンクォーの亡霊を見て狼狽するという場面。休憩前はマクベスの視点からの上演で、幻覚である血まみれのバンクォーがエレベーターで登場し、談笑するゲストの座るテーブル上に飛び乗り、舞台奥から客席寄りに座っているマクベスに向かってズカズカと闊歩してきます。マクベスは驚いて椅子から飛びのくのですが、一番盛り上がるここで何と暗転!休憩に入ります。休憩後は、再び晩餐の場面が最初から繰り返されます。セリフの合間に挟まれる細かいギャグも、ワインの栓の抜き方も全く同じです。しかし、今度は途中で降りてくるエレベーターに誰も乗っていませんし、扉も開きません。つまり、視点がマクベス以外の人に転換しているのです。視点を変えて2度上演することで、和やかな晩餐の途中で急に狼狽し騒ぎ出すマクベスを呆気にとられて見守るゲスト達と、必死にフォローするマクベス夫人といった「添え物」の人物達が細かく観察できてとっても新鮮でした。これは「マクベス」を見慣れた観客も「ヤラレタ!」と思う演出だったと思います。

しかし、この場面以外はあまり斬新な場面もなく、逆に読み替え演出の弊害が多かったように思います。

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ミュージカル「ウィキッド」@Apollo Victoria [演劇]

今回の1週間の間に唯一見たミュージカルは、ただいま東京でも公演中の「ウィキッド(Wicked)」。緑色に黒服の魔女に白い魔女が内緒話をしているポスターをご存知の方も多いでしょう。日本でも見られるこの作品をあえてロンドンで見ようと思った理由は、①「オズの魔法使い」の前日談なのでやっぱり英語で見たかった②ロンドンの方がチケットが取りやすかった③アポロ・ヴィクトリア劇場に行ってみたかったからでした。

いつものように、劇場のボックスオフィスにチケットを買いに行ったのは前日。ロンドンでは開幕からしばらくたっているので客足も落ち着いていて、平日の昼公演だったので席種は選び放題!お金のかかったセットが売り物なので、遠くから見ようと思って一番安い席を迷わず選択しました(^^)今回初体験の劇場の雰囲気も楽しみたかったし♪

劇場に入ってみると、まず目に飛び込んできたのは緑の絨毯張りの床!おそらく元々緑色だったのでしょうが、緑色が重要な鍵になっている「ウィキッド」にはぴったりです。グッズ売り場も充実していて、10代の女の子をターゲットにした緑&キラキラの品物がずらりと並んでいました(笑)昼公演ということもあって、子供達(特に女の子)でごった返すロビーを抜けて、場内に入ると…アールデコの素敵な装飾と、歯車や大きなドラゴンで縁取られた舞台が見事に調和していて、じっくり観察してしまいました。それにしてもアポロ・ヴィクトリア(Apollo Victoria)は大きな劇場です。最上階が扇形にずーっと広がっている点を考えると、入れ物としてはロンドンでミュージカルを上演している劇場の中で最大級でしょう。現在ミュージカル「ロード・オブ・ザ・リング」を上演中のシアター・ロイヤル・ドゥルリー・レーン(Theatre Royal Druly Lane)も収容数は大きいですが、あちらは馬蹄形ですからね。

ということで、安い席を買った私は舞台から遠く離れた席に着席。しかし、あれほど騒がしかった子供達は値段の高い席に密集しているらしく、私の周りはがら~~んとして空調が効き過ぎて寒いくらいで、劇場の中でもジャケットを羽織りっぱなしでした。まだ残暑の厳しい日本に慣れていた体はガタガタ震えっぱなし!休憩時間には風邪をひかないように、ココアを飲みながら日向ぼっこをしてしまいまったほどです。

さて、これはどんなミュージカルかというと、ずばり「オズの魔法使い」の前日談+サイドストーリー。人気者の魔女、金髪のグリンダと強力な魔力と緑色の肌で周囲から浮いている魔女エルファバが同じ学校へ入学、最初は対立していたが妙に気の合う2人がハンサムな転入生フィエロを好きになって…ここまで書けば話の内容は読めてしまうでしょうか?より詳しいあらすじはこちらを参考にしてください。学園ものの定番である三角関係に、表面上は理想的であっても人間以外の生物への差別が広がるオズ社会の問題が絡んでくるストーリーは、「みんなも人を外見で判断しちゃだめだよ!」というメッセージが溢れまくりの、正に小中学生向けと言って良い内容でした。まあ、これは予想通りですね(^^)別にストーリーに期待していた訳ではないので、内容にがっかりすることも無かったです。

そう、今回の私の目的はただひとつ!エルファバが自分の魔力を「欠点」ではなく「才能」だと認識して、オズの魔法使いによって奪われてしまった動物達の言葉を取り戻そうと決心する盛り上がりの曲「Defying Gravity(直訳:重力に逆らって)」を聞くことでした。

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バレエ「白鳥の湖」@ROH [演劇]

丁度私がロンドンに滞在していた5月のROHの演目は、オペラ「ペレアスとメリザンド」とバレエ「白鳥の湖」でした。ということで(?)当然バレエも楽しんできました。私が見た日は、「マノン」で一目ぼれしたゼナイダ・ヤノフスキー(Zenaida Yanowsky)がオデット/オディール役。彼女は今回のポスターにもなっていて、「ペレアスとメリザンド」のキーンリーサイドとオペラハウスの壁で夫婦競演状態になってました(笑)
       

バレエは初心者なので、正統な「白鳥の湖」を舞台で見るのは初めてでした(マシュー・ボーン振付による男性版は2度見ています)。今回女性が白鳥を踊るのを見て、ボーンの「白鳥は力強くて男性的」という言葉が蘇りました。確かに、私の中でも実際の白鳥は可愛らしい女の子というよりは、しなやかな筋肉を纏った若者というイメージです。ということで、最初は白鳥達の動きに物足りなさを感じてしまいましたが、次第にその違和感が非現実的な物語にぴったりとはまってきて、オデットが登場する場面ではすっかり物語に入り込んでいました。何よりも、チャイコフスキーのおなじみの音楽を生で聞いていれば、細かいツッコミどころは気にならなくなってきます。これでもっと上手なオーケストラだったら良かったのですけどね…。お願いだから盛り上がりで外すのは止めて~。

この日のダンサーの中では、やっぱりヤノフスキーが期待通りの素晴らしい出来でした。白鳥の中の誰よりも強いオーラが出ていた登場シーンから、一挙手一投足から目が離せません。まあ、ファンですから当然ですが(^^)長身な彼女のオデットは、どちらかというとしっかりと自立していて、決して受身ではありません。白鳥達のリーダーとしての力強さと魔法をかけられた者の深い哀しみに加えて、戸惑いながらのジークフリートへの真摯な愛もたっぷり感じられて、改めてヤノフスキーの凄さを認識しました。

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