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カヴァレリア・ルスティカーナ(Cavalleria Rusticana) / 道化師(Pagliacci)@Wiener Staatsoper [オペラ(実演)]

さて、遅々として進まない旅行記ですが、ようやくウィーンで観たオペラについて記事に出来ました。半年前の話ですので、今は上演が終了しています。

ウィーンを訪れたのは今回が2度目です。前回は美術館メインで、国立歌劇場は外観だけ見てスルーでした(^^)確か、ハンプソンが出る公演日で、当日券の列の足元に名前と枚数が書かれた紙が何枚もぺたぺた貼り付けてあったのを覚えています。今回は、逆にオペラを見るためにウィーンへ行きました。勿論、アルベルティーナ美術館で行われていた展覧会も目的でしたけど…。今回は安くて見やすい当日立見席を一度体験してみようと考えて、事前にはチケットを買っていきませんでした。


ウィーン国立歌劇場シャンデリア


開演90分前から販売してるはずなのに、1時間前に着いた劇場の外に列が無いなぁ~と思っていたら、当日券狙いと思しき人たちが次々「Tageskassen(当日券)」と書かれたドアを開けて中に入っていきます。「ええーもう入場できちゃうの!?」と驚きながらついていくと、そのドアは建物内に作られた当日立見席用の行列スペースへと通じていました。当日券の販売開始時間になるとここまで入れてくれるようです。寒い冬は助かりますね。そこの壁に作られた小さな窓口で3.5ユーロ(1階席Parterre)又は2.5ユーロ(最上階Galerie)を払えば、引き換えに小さなチケットが貰えます。それを貰ったら、もぎりは無いので長い廊下を通ってロビーを抜けると、立見席スペースへの入り口にたどり着きます。

立見席には、写真のように早い者順に場所取りの印がつけられていきますので、印の無い場所に陣取るか、自分も印をつけて(スカーフやハンカチが良さそうです)開演まで劇場内を散策したりして時間を潰すといいでしょう。1階の立見スペースは、段差が小さいので自分の前が背の低い人かどうかを確認した方がいいと思います。(ちなみに、手すりの無い場所にも立つことはできますが、開演前でも座っていると「立見席なので座らないで」と係員が注意しにきます。ちょっと厳しいですね)それにしても、この立見席の場所は本当に素晴らしいです。他の劇場ならば間違いなく最高金額席ですからね。もし、ヨーロッパのオペラ劇場の内部を見てみたいと考えている方がいらっしゃったら、見学ツアーにお金払うよりも、安価にオペラも楽しめるウィーン国立歌劇場の立見券を購入されることをお勧めします!手すりに英語字幕も出るし、立見ならサンダルやTシャツでも全然平気です。
     

こうして無事に「世界最高の」当日立見券で見に行った演目は、「カヴァレリア・ルスティカーナ(Cavalleria Rusticana)」「道化師(Pagliacci)」の2本立て公演。

★あらすじはWikipediaへ
「カヴァレリア・ルスティカーナ」
「道化師」

「道化師」に出演するホセ・クーラ(Jose Cura)以外は未経験の歌手ばかりでしたが、元々の目的はこの2つのオペラを同じ村の出来事としてセットを組んでいるジャン=ピエール・ポネル(Jean-Pierre Ponnelle)の演出を観ることでした。 そしたら、通常はバリトン役のトニオが歌う「プロローグ」を、この演出ではなんとテノール役のカニオが歌うそうですよ、という面白い情報を事前にいただいて、俄然テノールの歌う「プロローグ」に注目して開演を待ちました。

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スポレート歌劇場「チェネレントラ」@愛知芸術劇場 [オペラ(実演)]

梅雨真っ只中の天気でしたが、6月28日にスポレート歌劇場来日公演(今年はこの名称で統一したんですね)「チェネレントラ(La Cenelentra)」名古屋公演へ行ってきました。目的は、ダニエラ・バルチェローナとアントニオ・シラクーザを聴くこと…だったのですが、バルチェローナは怪我でキャンセルしてしまいました。うーん、残念!それでも、もう一人のお楽しみ☆シラクーザの声を生で聴くのがとても楽しみでした。

何せ、ベルカントオペラをレパートリーにしているイタリア人テノールの声を生で聴いたことがない私…悩みの無さそうなスコーンと突き抜ける明るい声でアジリタをコロコロ回してくれるのではないかと否が応でも期待は高まります♪(どういうイメージなんだ^_^;)そしてその期待は、しっかり満たされたと思います。いやはや、シラクーザは40代とはとても思えない輝きのある明るい声で元気いっぱいに歌いきってくれました。やっぱりロッシーニのブッファ作品に出てくるテノール役にはこういう太陽のように明るい声がしっくりきますね。見せ場の"Si, ritrovarla, io giuro"でもオーケストラや合唱をぐいぐい引っ張る元気の良い声を聞かせてくれました。大喝采をあびて「アリガト!」とご機嫌で歌ったアンコールを合わせて10分弱くらいですが、このアリアが間違いなくこの公演のハイライトでした。

その他の歌手やオーケストラは若手中心ということで、全く期待せずに行ったのですが…それでもあまり感心できる出来では無かったと思います。

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「魔笛(Die Zauberfoete)」@Royal Opera House [オペラ(実演)]

ロイヤル・オペラ・ハウスの現在の「魔笛」は、2003年に初演されたデイヴィッド・マクヴィカーのもので、暗いとか、セットが安っぽいとか、斬新さがないとかで批評家にはよく叩かれているのですが、私はかなり気に入っている演出です。特に、本来のストーリー展開を尊重しつつ、各登場人物が生き生きと描かれているところが大好きです☆観客の想像力を刺激するちょっとしたしぐさや動きがあちこちにちりばめられているので、見ている間だけでなく見終わった後もあれこれと頭の中で楽しめるんですよね。

例えば、1幕、ザラストロの居城に入ったタミーノが最初に会話を交わす胡散臭い男、弁者について考えてみましょう。一般的に、弁者はどの演出でも1幕のタミーノとの会話程度しか出番がないのですが、この演出では老齢の賢者であり、ザラストロさえ彼にお伺いを立てるほどの存在なのでタミーノに関わる重要な場面で何度か前面に登場します。例えばタミーノが試練に耐えられるかどうかを会議の場でザラストロに問い詰める時や、試練を受けるタミーノに司祭達が注意事項を告げる時、またタミーノが無言の誓いを守り通した時など、弁者はずっとタミーノのことをそばで見守っています。特に無言の誓いを守ってタミーノが選ばれし者と認定された場面、パミーナ(恋人)とパパゲーノ(友人)に去られてガックリと落ち込むタミーノの傍らで魔笛を高くささげ持つ弁者の姿などを見ていると、彼もその昔外からこの世界にやって来て試練を受けた(そしておそらく失敗した)過去があり、以来その試練で得られるものについて研究しているのではないか、などという想像をしてしまいます。あるいは、彼こそザラストロに地位を譲った旧リーダーであり、古い慣習に捕われて行き詰まっている組織に新しい人材を取り入れようとして魔笛を作ったのかもしれません。ということは彼が夜の女王の夫で、パミーナの父親かも!?なんて、後から後から面白そうな裏設定が浮かんできます(^^)

弁者に関しては今回一緒に「魔笛」を観たしまさんのブログに、興味深い考察記事がアップされています。写真もいっぱいで面白いのでぜひ読んでみてください!
弁者に萌えろ デイヴィッド・マクヴィカー演出《魔笛》/Royal Opera House 1
弁者に萌えろ デイヴィッド・マクヴィカー演出《魔笛》/Royal Opera House 2



夜の女王登場こういう楽しみを残してくれるマクヴィカー演出の「魔笛」ですが、私が初めて見たのは2005年の再演でした。当時はマクヴィカーの名前も知らず、単に「魔笛」だし、ポスターの夜の女王の衣装からして王道の演出っぽいし、映像で何度か見て気に入っているキーンリーサイドがパパゲーノだし、というかる~い気持ちで当日券を購入して見ました。80歳を超えているとはとても思えない元気いっぱいのチャールズ・マッケラス(Charles Mackerras)の軽快な指揮と、序曲が始まると同時に会場中に散りばめられた光の玉と夜の女王登場シーンでの一面の夜空と三日月の美しさ、そしてストーリーを変えている訳ではないのにあちこちに独自の解釈が見られる演出が強く印象に残りました。勿論、キーンリーサイドのパパゲーノもとても気に入って現在に至る訳です(^^)

今回は3年ぶりの再演でしたが、約2ヵ月に渡る長期公演で、私が行ったのは2月22日と23日でした。何故この日程を選んだのかというと、パパゲーノとザラストロを除いて22日はBキャスト、23日はAキャストを聞くことが出来たからです。実際、2日連続で違うキャストで見られたのはとても面白い経験でした。

歌手の比較は…続きを読む


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オペラ「タンホイザー」@中京大学文化市民会館 [オペラ(実演)]

今年初オペラ、チェコ国立ブルノ歌劇場(Nardoni divadro Brno)の来日公演のワーグナー作「タンホイザー(Tannhaeuser)」へ行って来ました(今回の来日公演を詳しく紹介してくれているブログはこちら)。ワーグナーにしては小編成に見えたオーケストラと、メリハリの無い指揮には感心しませんでしたが、殆ど初耳の歌手たちにはかなり楽しませてもらいました♪それから、今や珍しい「なんちゃってヨーロッパ中世」風の衣装だったのも嬉しいです(^^)公演のリハーサル写真や、出演者からのメッセージが見たい方はチケットスペースまでどうぞ。

「タンホイザー」を生で見るのは2度目、前回はバイエルン国立歌劇場の来日公演でした。歌手目当てで行きましたが、オーケストラのレベルの高さ、特に金管パートの美しさが非常に印象に残っています。今回のオーケストラは、派手に音を外すことはなくてもイマイチ音程の定まらない金管と、チェロのトップ以外は全体的に元気の無い弦パートで、期待はしていなかったけれど、お世辞にも上手いとは言いがたい出来でした。しかも、大雑把な印象のゆったりした指揮で、ソロ歌手と合唱とオーケストラが空中分解するんじゃないかとハラハラしてしまう部分がいくつかありました。まず、初っ端からあんなに盛り上がらない前奏曲は初めてです。その後もメリハリが感じられず、歌合戦の場面なんて周りで舟を漕ぐ人々が続出…(^_^;)もう少しテンポアップしてくれれば、歌手にもオーケストラにも聴衆にも優しかったはずですが、あまり高望みは出来ませんね。

「なんちゃってヨーロッパ中世」演出は、ワーグナーの意図したストーリーと乖離しないながらも、所々に深読みできる部分があって演奏よりは楽しめました。長い前奏曲や間奏曲の間は幕が上がらないのはこのオーケストラのレベルでは間が持たずに辛かったですし、ヴォルフラムを含めた騎士達と合唱(巡礼・歌合戦の招待客)が突っ立ちだったことには不満が残りますが、アングラ劇のような演出よりは好みです。ヴェーヌスの配下(?)の赤い全身タイツのダンサー達はセクシーさ満点で頑張っていたし、衣装は着たきりだけどきちんと作ってあったし、全体的に作品に対する誠意を感じました。狩に来ているのにずるずるマントやローブを引きずっている騎士達とか、楽しいツッコミ所もありましたしね。また、最後にタンホイザーが大きな十字架にすがって救済される様子を騎士達と巡礼全員が周囲で見守る、という終わり方はタンホイザーの「救済」がローマ教皇からもたらされたものではなく、エリーザベトが直接神に祈ったことによるものだという意図が感じられて興味深かったです。ここで「処女の犠牲により教皇の許しがでた」という展開になると顰蹙ものですが、これなら納得できます。フィナーレの音楽がどどっと押し寄せるべきところで迫力不足でしたけど、この終わり方で全て許せてしまいました。

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オペラ「トーリードのイフィジェニー」@ROH(2) [オペラ(実演)]

セットがほぼ皆無だった今回の公演ですが、歌手は声だけでなく、しっかり演技することを要求されていました。このオペラで見せ場があるのは、主人公イフィジェニー、その生き別れの弟オレステ、彼の親友ピラド、それから暴君トアス王の4人ですが、今回はトアス王以外はレベルの高い歌手がそろっていたと思います。

長髪の巫女集団のリーダー、イフィジェニーを歌うのはスーザン・グラハム(Susan Graham)。身長も高いので、周りの巫女達を率いるリーダーとしての風格もばっちりです。ダイアナの巫女というにはちょっとおばさん(失礼!)ですが、そんなこと言い出したらオレステもピラドもおっさんなので…(^_^;)彼女はちょっとハスキーな声なので、長年の軟禁生活にも耐えて、かすかな救出への望みを持ち続けるしっかり者のイフィジェニー像に感じました。特に印象的だったのは、オレステが死んだと思い込んで「これで私がここを抜け出す最後の希望が絶たれてしまった」と絶望するアリアで、それまで残っていた壁の名前を自分で消し去る動きと音楽とが見事に重なり合っていたこと。(1)の方で解説したとおりイフィジェニーの名前を消した=死んだということで、見た目にも分かり易くて引き込まれましたし、感動的でした。
     

彼女の生き別れの弟オレステ役サイモン・キーンリーサイド(Simon Keenlyside)は、インタビューで「この演出は動きの自由度が大きくて気に入ったよ」なんて言ってた通り縦横無尽に良く動く!(え、いつものこと?)床にチョークで四角く描かれた牢獄の中をピラドと追いかけっこしながら、無二の親友まで自分の運命に巻き込んでしまう気まぐれな神々への怒りをぶちまけたり、ピラドに「泣かないでくれ、君の身代わりで死ねるなら本望だ」(ん?どこかで聞いた台詞^^)と言われて慌てて顔をごしごし拭いて壁のそばで「そんなの聞こえないぞ!」とぎゅーっと丸まってしまったり、ちょっと神経衰弱気味のオレステ役を楽しんでいたようです。特に、ピラドと引き離されて一人きりになった後の「静かだ…これで眠れる」と横たわる場面と、直後の血まみれの母親に呪いの言葉と共に追い回される幻覚を見て逃げ回る場面は緊張感たっぷりでした。ちなみに、話題の「壁歩き」はこの場面で見られます。音楽的にもここは盛り上がり、おどろおどろしい合唱とオレステの悲鳴が響き渡って背筋が寒くなりました。

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オペラ「トーリードのイフィジェニー」@ROH(1) [オペラ(実演)]

9月末にロイヤル・オペラハウスの2007-2008シーズンの開幕公演「トーリードのイフィジェニー」を見てきました。お目当ては当然サイモン・キーンリーサイド(Simon Keenlyside)のオレステですが、スーザン・グラハム(Susan Graham)ポール・グローヴス(Paul Groves)も一度聞いてみたい歌手だったので、当日は楽しみで1日中ウキウキしてました☆

まず幕が開いて舞台を見た第一印象は、「黒い」と「(お得意の?)省コスト」(^_^;)

 

 

 

 

中央前はトアス、右で袖まくりしてるのがオレステ、左がピラド、女性の中で貞子状態なのがイフィジェニー


ロバート・カーセン(Robert Carsen)演出の舞台は批評でも書かれていたように、真っ黒の壁と床で、他には見事に何もなし!途中で中央に祭壇がせり上がったり、壁から人物が出入りしたり水が流れてきたりしますが、それ以外はずーっと黒い壁の中で話が展開していきます。区切られた黒い空間は、長年囚われの巫女をやっているイフィジェニーの閉鎖的な心理を表しているとも思えますし、あるいは殺した母親の亡霊に付き纏われて半狂乱状態のオレステの心理を現しているのかもしれません。とにかく、各キャラクターの「心」もしくは「精神」の内面を表現するためにあえてシンプルで邪魔のないセットにしたのでしょう。そういえば、カーセン演出の「エレクトラ」@東京のオペラの森も、舞台写真からすると真っ黒いセットに衣装ですよね。ギリシャ劇原作のオペラはこういう形で演出すると決めているのでしょうか?これは好き嫌いがはっきり分かれそうです。上の写真でも分かるように、男性は黒シャツ、黒ズボンに黒いエナメル靴(とコート)、女性は長髪のカツラに黒のロングドレスで統一されていたので誰が誰だか区別がつきませんでした。このオペラ初体験の人には辛いでしょうね(^_^;)

どれだけ黒かったか知りたい方は、BBC Radio3のギャラリーや、共同制作のサンフランシスコ・オペラのページ右上のビデオをご覧になってください(ちなみに、このときの坊主頭オレステ役はボー・スコウフスです)。個人的には、ギリシア劇にはセットは不要なので今回の演出はかなり嬉しかったし、照明で浮かび上がる登場人物たちとその歌声に集中できたので大満足でした。下手な読み替え演出で見るより断然マシですね。

特に気に入ったのが幕開きの場面。このオペラは、始まって10分くらいはオレステとピラドが船上で遭遇している嵐=神の怒りを現す音楽なのですが、この演出ではイフィジェニーの家族間に起こった3つの殺人を大勢のダンサーを使って表現していました。これが、このオペラの前日談を知っているとかなり面白い!

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オペラ「カルメン」@小澤征爾音楽塾 [オペラ(実演)]

毎年小澤征爾が若手音楽家の養成を目的として開催している、小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトVIIIへ今年も行ってきました。小澤征爾の指揮には特に興味がないのですが、地元近くにも回ってくること、才能のある欧米の若手歌手が聞けること、チケット代がそれほど高くないこと、毎年演出を担当するデイヴィッド・ニース(David Kneuss)の演出がけっこう好みであること、などの理由で毎年結構楽しみにしています。(ちなみに、2004年の「ラ・ボエーム」ではアンナ・ネトレプコがムゼッタを歌っていたりするんですよ。綺麗でしたたかなムゼッタで印象的でした。)今年のオペラは、ビゼーの「カルメン(Carmen)」。今年は個人的にかなり注目の公演でした!何せ応援している歌手が2人も出演するのです♪(^^)

一人目は、今やアメリカで大人気、ヨーロッパでも売り出し中バリトンのマリウス・キーチェン(Mariusz Kwiecien)。声に安定感があるのは勿論、演技もうまくてスタイルも良くてカッコイイので、バリトン好きとしてはこれからの動向に目が離せません(*^_^)彼は小澤氏と気が合うのか音楽塾のオペラ公演の常連で、過去にもグリエルモ、ジョヴァンニ、マルチェッロを歌っています。今回は、個人的にはバス歌手に歌って欲しいエスカミーリョ役ということで、ちょっとイメージと合わないかな~などと心配していましたが、そんなものは杞憂でした。舞台上の動きも堂々と、伊達男な闘牛士として説得力のある歌と演技を見せてくれて大満足。女の子に向かって帽子をフリスビーのように飛ばしたり、傍らのマントをさっと翻したり、カルメンに「また会いにくるぜ!」とカッコイイ捨て台詞を残して去っていく姿などを見ていると、街中にポスターが貼ってあるほど人気者なのも頷けます。

もう一人は、ROHで急な代役で聞いて以来気に入って応援し続けているアメリカ人若手ソプラノのケイティ・ヴァン・クーテン(Katie Van Kooten)です。つい最近までROHのヤング・アーティスト・プログラムに参加していた彼女は、日本ではまだまだ知名度がありませんが、これから先伸びてくる歌手だと思います。けっこう豊かなソプラノの声で上から下まで綺麗にしっかり出るので、このまま技術を磨いていってくれれば近いうちに世界中で活躍する歌手になることでしょう。今回は当然ミカエラ役だったのですが、とにかくお下げ髪でも違和感のない外見(と年齢)が嬉しかったです(笑)相変わらず素直な発声で高音まですーっと伸びていくのが気持ちよく、可愛らしいけれど芯はしっかりしているミカエラを好演していたと思います。もう少し演技力がついてくるともっといいかな~。

この2人以外も、今回はなかなか充実した歌手が揃っていたと思います。カルメンは2001年Operaria優勝者のジョシー・ペレス(Jossie Perez)で、スタイルの良い迫力美人ながらも、キツイ言葉の端々に優しさが見え隠れする読みの深いカルメン像でした。

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オペラ「ペレアスとメリザンド」③:演出編 [オペラ(実演)]

最近現実世界が忙しくてなかなか更新できませんでしたが、ようやく「ペレアスとメリザンド」の演出について書けます(^^)今回の演出はスタニスラス・ノルデ(Stanislas Norde)。去年のザルツブルクでの公演時から評判はあまり良くなかったのですが、今回実際に見てみてその理由は分かりました。何せ「ペレアスとメリザンド」と聞いてイメージするような時代がかったロマンチックな舞台装置は皆無ですし、衣装も着たきりで非常に経済的(笑)更に、人物の動きは直線的で接触も最小限に抑えられているので、最初に見たときは「ボブ・ウィルソンかっ!?」と心の中で突っ込んでしまいました。そう思いだすと、衣装も動きも「能」っぽい部分が目に付いて、しかもそういう要素があまり上手く機能してなかったので最後まで気になってしまって大変でした。その中途半端な動きを言葉で再現することは不可能ですが、上半身だけを見た母が「襟の形が着物っぽい」と言ったこの微妙~な衣装だけでも比較してみましょう。本来の狙いとしては、中世+能衣装なピエロ…なのでしょうか?

            
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う~ん、人物それぞれ微妙に異なる刺繍は美しいと思いますが、結果はロンドンの椿姫さんの仰るとおり、どっちかというとテレタビーズ(Teletubbies)↓(^_^;)
                

それで、批評家には大不評だったこの演出を私はどう思ったかというと…
1回目→イマイチ。2回目→まずまず。3回目→70点。4回目→85点。
という感じで、見れば見るほど印象は好転していきました。その理由のひとつは、勿論歌手たちが演出に慣れてきて、特に主役2人が演技を追加していったからです。もうひとつは、私が何度も見たので静的な舞台美術や演出の裏にある意味まで深読みできるようになったからでしょう(^^)フランス語が理解できれば、最初から楽しめたかもしれませんが、こういう形式的な演出の舞台を見慣れていないと、動きも少なくて衣装も(メリザンド以外は)皆一緒なので話についていけなくてかなり退屈なはず。ノルデには元々入りにくいオペラを更に親しみ難くしてどーする!と言いたいですが、フランス人としては観客個々の台詞の解釈に大いに頼る演出をしてみたかったのかもしれません(フランス語圏ではないザルツブルクやロンドンでは無理があるかと…)。

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オペラ「ペレアスとメリザンド」②:歌手編 [オペラ(実演)]

①では作品自体について語ってみたので、今回は歌手について書いてみようと思います。基本的には去年のザルツブルク・イースター音楽祭の時の公演とあまり変わっていません。ゴローだけはザルツブルクでも元々予定されていたジェラルド・フィンリーが歌いました。

メリザンド:アンゲリカ・キルヒシュラーガー
ペレアス:サイモン・キーンリーサイド
ゴロー:ジェラルド・フィンリー
アルケル:ロバート・ロイド
ジュヌヴィエーヴ:キャサリン・ウィン=ロジャース
イニョルド:ジョージ・ロングワース/トム・ノリントン
医者/羊飼い:ロバート・グリアドウ

ちなみに、主要な3人の見た目はこんな感じ↓。

指輪を手の甲にのせて遊ぶメリザンド、メリザンドに手を出すなといわれてムカついている(嘘)ペレアス、説教中のゴロー

まず、音だけだと強いメリザンドだな~という印象だったキルヒシュラーガーですが、実際に聞くと、彼女なりに考え抜かれた歌唱で新鮮な部分も多く、裸足に真っ赤なドレスという姿と合わせて新しいメリザンド像を見せてくれました。間違っても可憐な声とは言えませんが、それまでは影を感じさせながらもどちらかと言うと能動的だった彼女の声が、最後の幕で死の床についてから半分異世界に行ってしまったかのような響きに変わったのがとても印象的でした。CDや映像ではズボン役で目にすることが多く、見た目も正統的なメリザンドのイメージではないですが(この点で初演のMary Gardenはイメージぴったり)、無理にイメージを合わせることはせず、彼女にしか出来ないメリザンドにしていたのは大成功だったと思います。強くて生き生きとしているメリザンドで何が悪い!って感じですね。この公演では、そんな元気なメリザンドが最後あそこまで弱々しくなってしまうというのも衝撃的でした。

この公演でペレアスを卒業すると言っているキーンリーサイドは、正に渾身の歌唱と演技で楽しませてくれました。メリザンドを「盲目の泉」につれてきた時の秘密基地を案内しているかのように興奮した様子や、有名な髪の毛のシーンでの「もう離さないもんね~!」というような身振りや、渕を覗いた後地上へ戻ってきてゴローに「あー生き返る!あ、あそこにママとメリザンドが見えるよ」と無邪気に語りかけるところなど、色んな意味でガキ度満点です。

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オペラ「ペレアスとメリザンド」①:作品・音楽編 [オペラ(実演)]

今回のロンドン旅行をこの時期に決めた個人的な一番の理由は、ロイヤル・オペラハウスで上演されるドビュッシーの「ペレアスとメリザンド」でした。サイモン・ラトル(Simon Rattle)の指揮と充実したキャストが揃った今シーズン注目演目のひとつだったのですが、期待を裏切らない素晴らしい公演だったと思います。

既に旅行記の目次で書いておきましたが、私は10日(初日)、21日、23日(千秋楽)の公演に行きました。元々は初日と千秋楽だけチケットを買ったのですが、21日にはロンドンの椿姫さんやdognorahさんもいらっしゃるということで、急遽当日券を購入したのです。更にこれら本公演とは別に、行けなくなってしまった方から譲っていただいて9日のリハーサルまで楽しんでしまったので、結局この演出で4回見たことになります(こんなの2005年の「ビリー・バッド」以来です^^)。自分でも冷静に考えると苦笑してしまいますが、何せチケット代が(日本に比べると)安いのでついつい気軽に見に行ってしまうんですよね~。それに、メーテルランクの戯曲の様々な隠喩や暗示めいたせりふとドビュッシーの音楽との関係を自分なりに解釈するのが楽しくて、舞台芸術好きとしては麻薬のようなオペラでした。せっかく4回も行っていっぱい考えさせてもらったので、今回は①としてオペラ自体と音楽面で感じたことを書いてみようと思います。歌手と批評家に大不評だった演出については、②の方で思う存分語りたいと思います。


<作品について>

対訳 ペリアスとメリザンド

対訳 ペリアスとメリザンド

  • 作者: M. メーテルランク
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1988/10
  • メディア: 文庫

戯曲「ペレアスとメリザンド(Pelleas et Melisande)」
(1892年出版)は、日本では「青い鳥」の作者として知られているベルギーの劇作家モーリス・メーテルランク(Maurice Maeterlinck)の代表作のひとつ。日本語訳は岩波文庫から対訳版が出ています。

あらすじ:アルモンド国の王子ゴローは、迷い込んだ森の奥深くで見つけたメリザンドと名乗る不思議な女性に魅かれて、彼女の素性も分からないまま結婚する。祖父であるアルモンド国王アルケルの許しを得て帰国したゴローとメリザンドだが、メリザンドはゴローの異父弟ペレアスと次第に親交を深めていき、2人の親密さに疑念を持ったゴローは密会場面を目撃し嫉妬に狂ってペレアスを殺害してしまう。そのまま寝込んだメリザンドは、娘を産んだ後衰弱していき、ペレアスとは肉体関係はなかったとゴローに言い残して絶命する。

今まで多少疑問に思っていたストーリー展開ですが、今回は自分なりに細かいところまで理解することが出来たので、かなりすっきりしました。メリザンドの不思議ちゃんぶりを示す不可解な発言の数々も、それなりに筋が通っているんですよ。例えば、中肉中背のゴローに「あなたは巨人ね」と言うところ。これは見た目の問題ではなくて、ゴローの人生経験が豊富で、精神的に成熟しているということを言っているのでしょう。実際孫世代3人の中でアルケルのことを「おじいちゃん(Grand Pere)」と呼ばないのはゴローだけですし。そして、彼女が「うまく説明できないけれどここは居心地が悪いの」とぐずる場面では、イニョルドやペレアスだったらゴローのように細かい理由を求めることは無いでしょう。「異世界」から来たメリザンドと親密な精神的交流ができるのは精神的にまだ子供のイニョルドとペレアスだけで、ゴローはメリザンドに惹かれながらも彼女の心の声を聞き取るには成長しすぎているのです。アルケルのメリザンドへの対応を見ると、これから老年まで経験をつめば再びそういうものを感じられるようになるのでしょう。これは私の解釈ですが、こう考えると、メリザンドを連れてきたはずのゴローだけがアルモンド国で浮いてしまって、一人で嫉妬と妄執とすれ違いに悩む構図がしっかり浮かんできます。

 ところで、4度も見たのに逆に混乱してしまったのは、アルモンド王家の血縁関係!特に、ジュヌヴィエーヴはどちらの母なのか?という点がどうしても分かりませんでした。ゴローの手紙にあるとおりアルケル王の息子がゴローとペレアス両方の父(異母兄弟)だとすると、「この地にやって来て40年」とメリザンドに語るジュヌヴィエーヴは年齢的にもゴローの母でしょうか?しかし!キャスト表は"Genevieve, mother of Pelléas and Golaud"となっています。えっ、どういうこと?2人は異父兄弟なの?でもそれじゃあジュヌヴィエーヴは夫が変わったのに城は変わらなかったということになるけど~?最初はアルケルの長男と結婚して、2度目は次男と結婚したのかな?(よくあること)などと、考えれば考えるほどよく分からなくなってしまいます。ご存知の方がいらっしゃいましたらぜひコメント欄で教えてくださいませ。 ※Bowlesさんが早速こたえてくれました。ジュヌヴィエーヴはアルケルの娘で、ゴローとペレアスは異父兄弟でした。(推測は殆どハズレでした^_^;)上で書いた、ゴローの手紙に異母兄弟だと書いてある、というのは字幕ミスによる誤解でした。

★Wikipediaにも読み応えのあるページがあります。
モーリス・メーテルリンク
ペレアスとメリザンド(戯曲:あらすじ有)
ペレアスとメリザンド(ドビュッシー)
↑「評価」の項目でワーグナーとの共通点と違いが簡潔に説明されていて面白いです!


<音楽について>

 とにかくこのオペラは、公演プログラムにすら「特異なオペラ」なんて書かれているくらい「アリア」や途中で拍手できるポイントというものがありません。実際の舞台では、歌手たちは全て音符つきのせりふを喋っているように感じますし、オーケストラも映画のBGMのように場面の転換やせりふの説明を補足するような音を奏でていきます。そういう意味では非常にとっつきにくいオペラで、激しく好みが分かれる作品だとも思います。私もこれまで音源や映像で何度か見ましたが、それほど心に響くものがなく、嫌いじゃないけど長すぎる(全5幕:約3時間)という印象でした。今回劇場で見たところ、この印象は激変して(笑)かなり好きなオペラのひとつになりました。その一番の理由は、フランス語のせりふの響きと音楽が見事に溶け合っていて、それぞれの場面の密度が非常に濃い「演劇として楽しめるオペラ」だということが分かったからです。

今まで聞いた/見た公演も、それぞれかなりレベルの高いものだったと思いますが、今回の公演で、初めてこのオペラでのフランス語の響きにぴったり合った音楽の素晴らしさは特筆に価すると思いました。フランス語なんて挨拶程度しか理解できない私でも歌手全員が一言一句深く理解して歌っているのが分かるくらい表情のある歌唱で、まるでシェイクスピアやシラーなどの古典演劇を見ているかのような緊張感が感じられたのです。一般的なオペラだとどうしても「問いかけのアリア」(拍手)→「返答のアリア」(拍手)→「デュエット」(拍手)とか、他人には聞こえていないはずの心の声を4人で重唱とかが入って、ストーリー展開の勢いというものが失われがちになってしまいます。ところが「ペレアスとメリザンド」はストーリー展開がテンポ良く、無駄がなくて緊張感が損なわれないのです。

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