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オペラ『アリオダンテ』 [オペラ(実演)]

今回の滞在では全く行く気のなかった英語専門オペラハウスのENOなんですが、フライヤーを見たら去年バイエルン国立歌劇場が日本にもってきたデヴィッド・オールデン(David Alden)演出の『アリオダンテ』をやるじゃないですか。歌手も若手中心で良さそうだし、実際に評価もいいようなので、当日券で最終日に行ってきました。

あらすじはシェイクスピアの『恋の空騒ぎ』をもとにしたもので、舞台はスコットランド。王女ジネヴラと恋仲の騎士アリオダンテは結婚式を挙げることになるが、王位とジネヴラを狙うポリネッソの策略でジネヴラらしき女性(侍女ダリンダの変装)がポリネッソを誘いこむのを見たアリオダンテは絶望のあまり海に身をなげ、アリオダンテの弟ルルカーニオはジネヴラの不実を王に訴える。王はジネヴラと絶縁し、濡衣を着せられたジネヴラは深い悲しみに沈む。奇跡的に命をとりとめたアリオダンテはポリネッソに捨てられたダリンダと偶然出会い、事件の真実を知ってジネヴラの元へと帰る。結局ポリネッソはルルカーニオのとの決闘に敗れて命を落とし、直後に帰ってきたアリオダンテとダリンダが事情を説明してジネヴラも許されて、アリオダンテとジネヴラ、ルルカーニオとダリンダがそれぞれ結ばれて大団円。

この公演、とにかく素晴らしかったのは歌手達でした。アリオダンテを歌ったアリス・クーテ(Alice Coote)←は細いしカッコイイし声も男前だし、もちろん技術も完璧で素晴らしいの一言です。まるで宝塚の男役スターみたいでした。ジネヴラはコヴェント・ガーデンでも御馴染みレベッカ・エヴァンズ(Rebecca Evans)、彼女はちょっとポッチャリさんですが、声は文句なし。色々変な動きをさせられてましたが、しっかり歌いきっていたと思います。日本ではカウンターテナーが歌ったポリネッソはパトリシア・バードン(Patricia Bardon)というメゾ・ソプラノでした。ヘンデルのオペラで活躍しているという彼女は初めて聞く歌手でしたが、元々カストラートのための役をしっかりした声で苦もなく歌い、嫌らしい演技もなかなかうまくてビックリしました。侍女のダリンダは黒いドレスがよく似合うサラ・ティナン(Sarah Tynan)。彼女は細めのソプラノが綺麗で、演技もうまくて好印象でした。

男性はルルカーニオのポール・ニロン(Paul Nilon)は、まあまあ合格のテノール歌手ですが、王を歌ったバスのピーター・ローズ(Peter Rose)は歌唱技術も演技も堪能しました。大柄なのでドタバタするのが難点でしょうか。それにしても、装飾音やらコロラトゥーラやらがてんこ盛りのうえに、それを英語で歌ってしまう歌手達は本当に凄いですね(^^)

大満足だった歌手陣にくらべて、演出は残念ながらあまりピンとくるものではありませんでしたオールデンの『タンホイザー』は実演で見てかなり楽しんだんですが、『アリオダンテ』は…もうひとひねりあっても良かったんじゃないかと思いました。大勢のダンサー達を召使や招待客にして序曲や間奏曲の間踊らせるのはいいですが、どうもマシュー・ボーンの『スワン・レイク』を思い出させる振付けだったりしていまいち入り込めませんでした。舞台のほうも、相変わらずバイクスーツや軍服のロック調と時代がかった服が混じった衣装に廃墟のようなバロックもしくは新古典主義っぽい建物の組み合わせであまりインパクトが感じられません。唯一鏡貼りになった床と舞台転換時のマジックミラーのスクリーンの使いかたは楽しかったです。

英語での上演でしたが、バロックのオペラなんてなかなか聞かないので貴重な体験でしたし、期待以上にレベルの高い歌手が揃っていたので、ヘンデルの音楽を充分楽しめました。ヘンデルのオペラ、ちょっと癖になりそうです!


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コメント 7

dognorah

バロックオペラの歌手はちょっと違うので私の知らない人たちばかりですが、楽しまれたようで何よりです。アリオダンテは来年3月にバービカンでコンサート形式があるので切符を手当てしてあります。
by dognorah (2006-06-26 20:51) 

Sardanapalus

dognorahさん>
ふと思い立って行ったら予想以上に楽しかったです。歌手達の歌唱力と演技力には本当に驚きました。音楽的にも魅力的なオペラですので、コンサート形式でも充分楽しんでいただけると思いますよ。
by Sardanapalus (2006-06-26 21:01) 

Bowles

クートとバードンは英国を離れても(笑)充分活躍している歌手です。この演出は、今観るとやはり古さを感じますね。ポリネッソは、私はやはりちゃんと歌えるコントラルトが歌うほうが、カウンター・テナーが歌うよりずっと好みです。ミンコが振っている全曲盤のポドレスはホント、「凄い」!!

>ヘンデルのオペラ、ちょっと癖になりそうです!

どうぞどうぞ、おおいにはまって、癖になってください(笑)。
by Bowles (2006-06-26 23:23) 

Alice Coote、かっこよさそうですね。
by (2006-06-27 00:19) 

Sardanapalus

Bowlesさん>
>クートとバードンは英国を離れても(笑)充分活躍している歌手
やっぱり、そうでしょうね。実はバロックに詳しいBowlesさんのコメントをお待ちしていました(笑)ヘンデルのオペラは詳しくないので、ミンコやヤーコプス辺りのCDを聞いてみようかなぁと思っています。

gonさん>
>Coote、かっこよさそうですね
はい、すらっとして素敵でしたよ~。
by Sardanapalus (2006-06-27 20:03) 

Bowles

Ariodanteはポドレスのポリネッソを聴くために(ガルニエの公演が彼女じゃなかったのは、ホント、残念)ミンコ盤、またGiulio Cesareは最近DVDが出たクリスティのグラインドボーンでのものが、とても楽しめると思います。ミンコのものはライヴ放送のあれこれに較べると、ちょっとおとなしいのです...。

とりあえずはこのふたつで、ヘンデルにはまってみてください。
by Bowles (2006-06-28 00:14) 

Sardanapalus

Bowlesさん>
お勧めありがとうございます!
>Ariodanteはミンコ盤
今度探してみます(^^)

>Giulio Cesareは最近DVDが出たクリスティ
こちらの演出はマクヴィカーなので買おうかどうか悩んでいたのですが、お金を貯めて何とかしてみます。
by Sardanapalus (2006-06-29 21:42) 

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