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知らない歌曲を聞く時は [Keenlyside]

30日に放送されたサイモン・キーンリーサイドのエディンバラでのリサイタルですが、前半は英語の歌曲に疎い私には初めて耳にするものばかり。好きな歌手のお陰で新しい分野の曲を聞けるのは嬉しいことですが、何が困ったって、歌詞が分からないことです(^_^;)

既存の詩に曲をつけたものが歌曲ですから、やはり詩の内容を分かっていて聞く方が何倍も楽しめるに決まっています。特に英語歌曲は19世紀終わり以降に作曲されたものが殆どなので、曲だけ聞いてもドイツ・ロマン派好きな私の好みとは合わないものが多いのです。しかも歌曲やオペラの英語は日本語と同じくらい聞き取りにくい!ということで途方にくれていたら、素晴らしいサイトを発見しました。

その名もずばりThe Lied and Art Song Texts Page!直訳で「歌曲歌詞ページ」といったところでしょうか。ドイツ、フランス、イタリア、イギリス、アメリカ、ロシアその他、歌曲なら何でもござれといった状態の歌詞を集めたページで、殆どに英語訳がついています。唯一の日本語曲は何故か「川の流れのように」(笑)…ん?そういえば、3大テノールのコンサートで歌ってましたかね?日本語の方は著作権上の問題で載っていませんが、英語訳が載ってます。

趣味で作っているそうですが、作曲家名、作詞家名、曲の出だし、曲名、言語からお目当ての曲を探せるようになっていて、それぞれアルファベット順になっているので本当に使いやすいです。このページで歌詞を見ながら聴いたお陰でよく知らなかった英語の歌曲も興味深く聴くことが出来ました。


折角なのでこのページを使わせてもらって、今回のキーンリーサイドのリサイタル(9月6日までこちらのWednesdayから聞くことができます)の曲についてコメントしちゃおうと思います。各曲のタイトルから歌詞のページへリンクしました。※9月1日プログラム後半も追加

1 Grainger: The Sprig of Thyme
放送でキーンリーサイドも言ってましたが、これはグレンジャーが集めたイングランドの民謡のひとつ。素朴なメロディラインと片思いの女性をハーブのタイムに例えた失恋の歌詞がぴったり合った曲ですね。

2 Bridge: Love Went a-Riding
歌い甲斐のありそうな力強い旋律で、短いけれど盛り上がる曲です。キーンリーサイドのアクート(といっても音符指定通りでしょうけど)が聞ける珍しい曲。ちなみに、ここのLoveは愛の神アモルのこと。ペガサスに跨って飛びまわる「愛」を一箇所にとどめようとする若者達と「愛」の会話ですが、「愛」がそこに留まれない理由が「馬に翼があるから」というオチ(笑)があって、曲調とは裏腹に思わずクスリと笑っちゃいます。いや、本当はそこに愛のはかなさとか移ろいの速さを感じなくてはいけないんでしょうが、曲が大仰なのでつい…(^_^;)

3 Somervell: Birds in the High Hall Garden
打って変わってロマンティックなメロディーの曲。歌詞もロマンティックです。夕暮れ時に彼女の名を呼ぶ鳥がいる庭、森で百合に囲まれて花々を集める恋人同士、細い手へのキス、彼女の通った跡を教えてくれるばら色の雛菊などなど。「モード(Maud)」という連作の詩に曲をつけたもののひとつで、これは第5曲。というか、細い手に背が高い彼女って、そのまんまですね(笑)

4 Warlock: Piggésnie
とてもテンポの良い、そのお陰で微笑ましい内容の歌詞も聞き取りやすい曲ですが歌うのは大変そうです。とにかく愛しの可愛い子ちゃん程の美人はいない!と言いまくる、陽気でのろけてる歌ですが、まあこれも新婚さんにはぴったりの曲でしょう。16世紀の作という歌詞は普通に結婚式の余興で歌われそうな雰囲気です。

5 Howells: The Little Boy Lost(※ブレイクの詩を掲載しているホームページ)
あまりにもマイナーな曲だからか上述の歌曲歌詞ページには載っていませんでしたが、ブリテンの歌曲集と同じくブレイクの詩です。キーンリーサイドは思うところあってこの曲からブリテンの歌曲集までを一気に演奏したかったそうです。迷子になった男の子が見つからないお父さんを泣きながら探している情景が浮かんでくる哀しいメロディーですね。

6 Holst: Betelgeuse(※著作権が生きていて掲載不可)
ホルストって本当に星が好きだったんですねぇ。英語だとビーテルジュース、と発音するのですが、これはオリオン座のベルトの三ツ星のひとつベテルギウスのことです。実はこれはまだ歌詞が良く分からないのでパス(笑)とりあえず非常に暗い曲調です。

7 Britten: Songs and proverbs of William Blake
どうしても苦手なブリテン。やっぱりこの作品もあまり好みじゃありませんでした。でも、7つの諺(Proverb)はどれもニヤリとするような内容で好感が持てます。この中では第8曲「虎(The Tygar)」がかっこよくて気に入りました。ちなみに、この作品はフィッシャー=ディースカウに捧げられたものだそうです。

以上が前半でした。後半のドイツ歌曲はシューベルトとブラームスからの9曲とアンコールのヴォルフ1曲です。なぜこの選曲なのか、と番組で聞かれてましたが、答えは当然「好きだから」でしたね。

8 Schubert: An die Leier
若い頃からよく歌っている作品だそうです。結構派手なピアノ伴奏とメロディーですが、歌詞に登場するのは、かっこよく英雄の歌を歌おうとしても愛の歌しか歌えないのを竪琴のせいにして糸や竪琴を取りかえたのに、やっぱり愛の歌しか歌えない、ちょっとお間抜けな詩人(笑)外だけ代えても中身は一緒ですからね。

9 Schubert: Stimme der liebe, D412
「愛の声」なんてキザなタイトル。短いですがロマンティックに盛り上がる曲ですね。

10 Schubert: Fischerlied, D351
詩の間に入るトララララ~♪が軽やかで爽やかな曲。作曲当時の自然と関わる職業(ここでは漁師)への牧歌的なイメージが現れた歌詞にぴったりのメロディーだと思います。

11 Schubert: Fischerweise
個人的にシューベルトのお気に入りの歌曲の中でも1、2を争う大好きな曲です。軽快なピアノ伴奏に韻を踏んだ詩がテンポ良くのっていて、一聴すれば耳に残ること間違いなし。詩の内容は漁師が自分の快適な生活について軽快に語るというもので、こちらもかなり理想化された漁師生活が描かれています。雰囲気としては、北島○郎の「与作」なんかが近いと思います。

12 Schubert: Im Walde (Waldersnacht), D708
これはキーンリーサイドが大好きな曲。私もキーンリーサイドのお陰で好きになりました。様々なリサイタルでことあるごとに歌っています。夜の林の中の様々な情景や神の力について語る詩は確かにかっこいいし、メロディーも多彩で歌い甲斐がありそうです。

13 Brahms: Feldeinsamkeit
「原野に独り」というタイトルの、静かで落ち着いた曲。タイトル通り、独り静かに原っぱに寝ころがって周りの景色や空を眺めていると、自分はまるでずっと以前に死んで周りに同化してしまった存在のようだ、という綺麗な詩です。ブラームスは詩を選ぶセンスが良いですね~。

14 Brahms: Nachtwandler
キーンリーサイドがピアノ伴奏が好きだから選んだという曲。悲しい詩という解釈が一般的だけど、どちらかというと甘い夢を見ている男を無理に起こさないように天使(のような存在)が注意深く見守っているような感じで歌っているそうです。ざっと歌詞を読むとキーンリーサイドの解釈の方が素直な気がします。
 
15 Brahms: Es schauen di Blumen
全ての花が太陽に顔を向け、全てのせせらぎが海へそそぐように、私の歌が涙とため息を伴って輝かしい愛へと届くように、というロマンティックな詩です。とても短い曲ですが、激しい前奏に続く輝かしいメロディーが気に入りました。

16 Brahms: Standchen, Op 106
有名なセレナーデではなくて、もうちょっと現実的というか、行動的な曲調のセレナーデです。当然お目当ての美女の寝ている窓の下で愛の歌を歌っている男がいる訳ですが、この詩の男達はフルート、ヴァイオリン、ハープを奏でる3人の学生なんです。ちょっと想像すると噴出してしまう情景ですね(笑)

アンコール Wolf: An die Geliebte
メーリケによるロマンティックで素敵な詩にぴったりの曲がついています。詩の内容は、恋人の中に天使の息遣いを感じながら、彼女と共に居られる幸せを夜にひとり噛み締めている男のつぶやきという感じでしょうか。男が目を天に向けると星が笑っていて、その星の歌を膝まずいて聴く、という最後の部分が大好きです。キーンリーサイドのお気に入りだそうで、確かによく歌ってます。


こうしてざっと見てみると、今回のテーマは「愛」と「自然」と「ウィリアム・ブレイク」かな?ラジオ放送のインタビュアーには前半を休憩無しで歌いきるスタミナについて驚かれてましたが、本当に相変わらず盛りだくさんなプログラムでした。リサイタルへ行った友人によると、歌っている間は最近はめたばかりの結婚指輪をいじくり回していたそうです。…予想通りですね(^_^;)


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stmargarets

ナイスなサイトを教えていただきました。
ありがとう!

私も聴いたよー。
by stmargarets (2006-09-01 07:17) 

Sardanapalus

stmargaretsさん>
>ナイスなサイト
レパートリー開拓にぜひ使ってください。むちゃくちゃ便利ですよ♪

>私も聴いたよー
感想はどうですか?(^^)
by Sardanapalus (2006-09-02 03:02) 

私も歌曲は歌詞を追いながら聞くのが好きですー。
解説とリンクとほんとにありがとうございます。

やっとまとめて時間を取れたので、オンデマンドで聞かせていただきました♪解説と歌詞を見ながらだったので知らない曲なのに面白くて一気に聞いちゃいました。Im Walde ではあっという間に歌詞に置いて行かれてしまいましたが(笑)ほんとうにかっこいい曲でした。

英語の歌曲も素敵でしたよー。キーンさんもくーっと力を抜いたときの声が素敵ね、そこがいい声な歌手さんが好き♪(にしてもやっぱりブリテンは難しいネ)

でもドイツ語歌曲はもっと良かった~。トラララーと与作、最高でした♪

このオンデマンドの音源を一気にdownloadする方法ってないでしょうかね…?こんなに続けて聞くのだったらそのまんま録音しちゃえばよかったなぁ~。
by (2006-09-03 00:02) 

Sardanapalus

りょーさん>
>解説と歌詞を見ながらだったので知らない曲なのに面白くて一気に聞いちゃいました
優しい言葉ありがとうございます。こんな手抜きなコメントでもお役に立てて嬉しいです。ほんと、力を抜いた声が綺麗な歌手は聞いていて気持ちが良いですよね♪

>Im Walde ではあっという間に歌詞に置いて行かれてしまいました
詩を繰り返し歌う部分もあるので、その法則を覚えておかないと「あれっ?今どこ?」ってなりますね(^_^;)

>トラララーと与作、最高
シューベルトはこういう軽快な曲やヒロイックでテンポの良い曲が好みです。

>オンデマンドの音源を一気にdownloadする方法
私は聞きながら録音ソフトで録音しているのでちょっと分かりません。ごめんなさい~。
by Sardanapalus (2006-09-04 02:35) 

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