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映画「バベル」 [映画]

アカデミー賞助演女優賞に菊池凛子がノミネートされたことと、鑑賞者の中に気分が悪くなる人がでたことで話題になっているアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ(Alejandro Gonzalez Inarritu)監督の「バベル(Babel)」を見てきました。

あらすじ:モロッコに関係改善の為の旅行に来た倦怠期のアメリカ人夫婦、モロッコで放牧生活を送る兄弟、妻に自殺され、聾の娘と交流しようと努力する日本人男性、不法就労ながらも長年アメリカで2人の子供達のベビーシッターをしているメキシコ人女性。一見バラバラなそれぞれの人生が、ある日モロッコで放たれた1発の銃弾が繋ぎ合わせ、一人一人の人生に変化をもたらしていくきっかけとなる…。

見終わって最初に感じたのは、「バベル」というタイトルはこの映画にぴったりだな~ということでした。いくつかのストーリーが平行している構成だったのですが、それぞれのストーリーにおいて共通のテーマとなっているのが他人との意思疎通、思いやり、コミュニケーションといったもの。神を超えようと思い上がって築こうとしたバベルの塔を破壊され、統一言語(コミュニケーション能力)を奪われた人間は、現在の世界でどのように生きているのかをじっくり描いている作品でした。

内容はあまり語るとネタバレしてしまうので控えめにしておきますが、同じ言語を話すからといって意思が通じ合うとは限らないし心だけで通じ合える関係もあるということ、何でもないような会話や関係がとても大切で貴重なものであること、そして自分は通じていると思っていても相手も同じように感じているかどうかは分からないということなど、多様な文化・人種・言語の人間が交わる現代だからこそ見えてくる問題が映像のあちこちから飛び込んできます。

いくつも平行するストーリーが時系列を前後して登場するので、かなり集中して見ないと置いてかれてしまうかもしれません。しかも、「この先この人どうなるの?」という中途半端なところで画面から消えてしまう人も何人かいて、ちょっと不完全燃焼に思われる部分もありました。日本の話はかなりしっかり作られていて、聾の不良女子高生とうまく会話がかみ合わない父親が母/妻の自殺から立ち直って新たな関係を作り上げていけそうかな、というところで終わるので救いが無いわけではないですが、それでハッピーエンドなのかと聞かれると、どうなのかな~?と大きな疑問符がつきます。各ストーリーの終わり方から勝手に推測すると、結局監督は音としての言葉は意思疎通にとってそんなに重要じゃないということが言いたいのかな、と思いました。重要なのは相手を理解しようとする努力と、自分の物差しや色眼鏡を捨てて相手を捉え直してみることなのでしょうね。こんなこと言うとまるで文化人類学や異文化交流の教科書みたいですが(^_^;)

この映画のキーとなるモロッコでの発砲事件とその後の世界の対応は現実に有り得る話ですし、イスラム社会(異文化)に対するアメリカ人の恐れとか、国際政治の不器用さとか、東京の異様にピカピカしたネオンと高層ビルの数々(現代の「バベルの塔」でしょうか?)とか、見る人それぞれに多様な感想を持たせる作りの作品でした。ある意味、結論を観客にゆだねる終わり方でしたので、あれこれとこねくりまわすのが好きな身としてはとても楽しめた作品でした。デートで見に行くよりは、一人でじっくり、またはこういう重いテーマを話し合える友人と見に行くと良いかと思います。


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コメント 4

keyaki

ニュースで、吐いたり、気分が悪くなった人がいたとか、見ましたが、映画の内容のせいか、その映画館の空調?のせいか、はっきり書いていなかったような気がしますが、どうでしたか?
ブラッド・ピッドの映画は、だいたいなんか気持ち悪いのが多いと思いますので、映画でそういうシーンがあるのかと思っていますが、どうなんでしょう。

※広告が一つしか表示されていませんが、そういう選択肢ってないですよね。記事の幅を狭くすると必然的に一個になるのかしら?
by keyaki (2007-05-06 09:55) 

Sardanapalus

keyakiさん>
気分が悪くなるのは、どうやら東京のクラブのシーンで照明が激しく点滅をくりかえす部分があるからのようです。何年か前にポケモンでもありましたよね。
時々(肉体的・精神的に)痛い描写があって内容もかなり重たいので暗澹とした気持ちになるとは思いますが、特に気持ち悪いところは無かったです。

>広告が一つしか表示されていませんが
あ、本当だ!気付いていませんでした。設定上では2つ表示ですので、記事に関係する広告が見つからなかったとか、何らかの理由があるのでしょう。記事の幅は関係ないと思います。
by Sardanapalus (2007-05-06 11:29) 

ロンドンの椿姫

日本では今頃やっと公開なんですね。ロンドンでは半年くらい前にやってたような気がしますが。(って、私は観てませんけど)

そういえば、こないだの日本プレミアで凛子さんが和服着てましたね。監督さんと小学生の娘さんの着物姿も写真で見ました。凛子さんはアカデミー授賞式とかでも着ればよかったのにね。日本女性は着物が一番似合います。

私たちは(サルダナさんと私)はロンドンで着物着ましょうね。
by ロンドンの椿姫 (2007-05-06 17:15) 

Sardanapalus

ロンドンの椿姫さん>
>日本では今頃やっと公開
そうなんです~もう、待ちくたびれましたよ。

>日本女性は着物が一番似合います
やっぱり民族衣装が一番素敵ですよね。イギリスの大学の卒業式でも、サリー姿のインド人がとても可愛かったです。ロンドン滞在中にぜひ着物でお出かけしたいです♪
by Sardanapalus (2007-05-06 21:37) 

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