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演劇「トロイの女達」 [演劇]

今日は今年の夏のエディンバラ・フェスティバルにも参加した演劇作品、クリプティック劇場(Theatre Cryptic)による「トロイの女達(Trojan Women)」を見てきました。演出家はキャシー・ボイド(Cathie Boyd)。なんと言ったら良いのか、久しぶりにアングラ小劇場系の芝居だったので、1時間という短い上演時間にも拘らず非常に精神力を使って疲れちゃいました(笑)

ギリシャ悲劇作家エウリピデス「トロイの女達」の英語翻訳作品で、登場人物は女性4人、男性1人。女性2人はコロスも兼ねます(左上写真)。あらすじは大まかに言ってしまえば、トロイ戦争でトロイがギリシャ軍に敗れて捕虜になったトロイの王族の女性たちの話です。へキュバ(女王)、カッサンドラ(王女)、アンドロマケ(王子ヘクトルの妻)、…それぞれ戦利品の奴隷となって別々のギリシャの王達に引き取られていく様子や、ギリシャ人とヘレナ(王子パリスの恋人、メネレウスの妻)への恨み、故郷トロイの変わり果てた姿への嘆きがマイクやミキサーを使った音と、スクリーンに映し出される岩や海などの自然の映像と合わさって、とにかく一度見たら忘れないインパクトのある舞台になっています。「男は馬鹿ばっか!何度同じことを繰り返せばいいのか」「男は『戦争』のことを『平和』というけど、その『平和』は幾千もの若者を殺した」など、反戦メッセージ色の強い台詞が中心で、言葉遣いもかなりくだけていたので、時代劇ではなくて現代の戦争「美化」政策批判に通じる作品に仕上がっていました。

ステージの上には黒光りする斜めになった台形の大きな台が真ん中に置かれていて、天井にはまたまた大きなスクリーンが、こちらも前方に傾斜してぶら下がっています。上手奥にはテレビ、舞台奥は巨大なカーテンが下がっていました。舞台装置といえば、これくらいです。後は、途中から台形の台にさし込まれた赤いネオンの蛍光灯バー(なんじゃそりゃ^_^;)が2本、というシンプルなもの。衣装も現代風で、へキュバ、カッサンドラ、アンドロマケは皆それぞれ変わったデザインのドレス。ヘレナは露出度の大きい金ピカの衣装に超ポニーテールで、これまた金の椅子を引きずりつつ客席から登場してきました。唯一の男性は一人でタシビウスとメネレウスを掛け持ちですが、彼だけ衣装を早換えしたり、眼鏡に内蔵のカメラを回したり、と大活躍でした。

舞台自体も狭いですが、最小限の舞台装置に現代的な衣装、そして様式的な演技…登場人物が重要な台詞を喋る時は台の上に乗って、少し様式化された演技と癖のある発声でキャラクターの内面を搾り出すように表現していました。面白いですけど、これ、ギリシャ神話知らないと全く話についていけないです。演出方法から考えても、1時間が集中力の限度でしょう。最後のほうは客席ダレてました。今日は特に学生が多かったみたいで、後半のヘレネが登場する辺りで退出する人たちもいっぱい(^_^;)観客はそれなりに90パーセントくらいの入りでしたが、私は5ポンドじゃなかったら来なかったと思います。

俳優陣で一番印象に残ったのは主人公と言うべきへキュバ役のマイラ・マクファディエン(Myra McFadyen)。このおばちゃん、舞台が始まった瞬間に「この人どこかで見たことある!」と思ったのに、なかなか思い出せない!(^_^;)テレビ?映画?などと考えながら見ていたのですが、娘の話になったとたんに「マンマ・ミーア!」のロージー!!!と思い出しました(笑)日本でも劇団四季がやっているミュージカル「マンマ・ミーア」をウェスト・エンドに良く見に行った時期があったのですが、その時お母さんの友達のひとり、小柄な方のロージー役を好演していた人でした。その時もプロフィールはシェイクスピア劇、テレビ、ラジオを中心にそうそうたるもので、なぜミュージカルで脇役やってるの?と思ったのですが、こんなアングラ劇もやるとは知りませんでした。幅の広い人ですね(笑)

ちなみに、劇場はこの前「美しき水車屋の娘」を聞きに行ったコヴェント・ガーデンのリンブリー劇場でした。その時、「ここで小劇場演劇やったらぴったりじゃん」と思ったので、今回演劇を見ることが出来て嬉しかったですね。雰囲気としては、世田谷パブリックシアターを小劇場にした感じでしょうか。今回はFIRSTS 2005というイベントの一環でした。オペラハウスの地下でこんな演劇を格安で見る機会を与えてくれるとは、コヴェント・ガーデンにはちょっと感謝しなくてはいけませんね。


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dognorah

いつもながら舞台の有様を彷彿とさせるレポートですね。私は演劇はいまいち興味がないので行く気はありませんでした。で、戯曲の最後では連れてこられた王女たちは結局どうなるのですか?
by dognorah (2005-10-30 08:17) 

Sardanapalus

>連れてこられた王女たちは結局どうなる
あ、放置です(笑)エウリピデスの原作は読んだこと無いのですが、今回はそれぞれ別のギリシャ王達に奴隷として引き取られていって、家族が離散したことをへキュバが悲しんで終わり、みたいな感じでした。どうなったのかは語られません。カッサンドラはどうだったかな?アンドロマケは引き取ったピリュスに愛されるけど彼には心を開かずに過ごしたはずです。ギリシャ神話も読み返したいなぁ。
by Sardanapalus (2005-10-31 05:38) 

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