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オペラ「ラクメ」 [オペラ(実演)]

久しぶりにオペラを見てきました。演目はレオ・ドリーブ(Leo Delibes)「ラクメ(Lakme)」。スロヴェニアのマリボール歌劇場の来日公演ですが、今注目のコロラトゥーラ・ソプラノのデジレ・ランカトーレ(Desirre Rancatore)が主役のラクメを歌うという以外全く知識の無いまま見に行きました。

あらすじ:19世紀大英帝国支配下のインド。帝国の支配に反発するバラモン教の司祭ニラカンタの娘で巫女のラクメは、ある日寺院の聖域に侵入してきたイギリス軍人ジェラルドに一目ぼれしてしまうが、父に見つかる前に彼を逃がす。一方、ジェラルドも婚約者がありながらラクメの美しさの虜になってしまう。聖域を汚したイギリス人を許せないニラカンタは、街の市場でラクメを歌わせて、その歌に導かれて姿を現したジェラルドを刺す。重傷を負ったジェラルドだったが、ラクメが森の中にかくまって献身的に介護したおかげで意識を取り戻す。これからは二人だけで暮らしていくことにして、ラクメが結婚の誓いの聖杯に入れる水を汲みに行っている間にジェラルドの友人フェルナンドが隠れ家に現れて「婚約者がいることと軍人としての義務を忘れるな」と忠告していく。その言葉で元のイギリス軍人としての意識を取り戻したジェラルドは、泉から戻ってきたラクメに以前ほどの魅力を感じなくなっていた。ジェラルドの心変わりに気付いたラクメは、もはや生きている意味が無いと猛毒の花を噛み、彼女の異変に気付いたジェラルドはその必死の望みどおり聖杯を交わす。そこへニラカンタが踏み込んできてジェラルドを殺そうとするが、ラクメが「彼が聖域を侵した罪は、聖杯を交わした私の命で償います」と言い残して死んでいく。嘆き悲しむジェラルドの横でニラカンタが「ラクメは永遠の命を得た!」と叫ぶ中、幕。

あはは~もう、この頃(19世紀末)のヨーロッパのオリエンタリズム満載のストーリーですね(^_^;)細かいところにツッコミを入れ始めるとキリがありませんが、あらすじでバラモン教となっているのはヒンドゥー教のことのようです。元々ヒンドゥー教はバラモン教(紀元10世紀ごろには消滅)から派生していますし、司祭のことをバラモンと呼ぶので混合したのでしょうか。とにかく、このオペラに登場する神様はブラフマー、ドゥルガー、シヴァ、ヴィシュヌ、ガネーシャなどのヒンドゥー教の神々で、特にブラフマー(ヒンドゥー教の最高神、三神一体の内の宇宙創造を司る神)は最高神として、ガネーシャ(象の頭を持つ財産の神)はニラカンタの僧院の主神として、ドゥルガー(10本の手を持つ戦闘女神、ライオンに乗っている)は街で催行されるお祭りの主神として何度も登場します。これから東京公演を見に行かれる方はバラモン教とヒンドゥー教の関係と、大英帝国統治下のインドについて少し知識を入れておくと良いかもしれません。オペラの中のバラモン教(笑)は実際のヒンドゥー教とは微妙に違っていますが、そういう基礎知識があるとないとでは楽しめる要素がかなり違ってくると思います。

Wikipediaヒンドゥー教ヒンドゥー教の神の項はとても便利です。
東京グランドクラシックス名古屋公演のサイト東京公演のサイトでは、演出や歌手の解説や舞台写真と動画も見られます。

実際のオペラを見ての感想ですが、やはり耳に残るのはオペラハイライトCDやリサイタルなどで聞くことも多い「花の2重唱」「鐘の唄」ですね。期待のランカトーレは、基本的な声色はなかなか素敵ですし、コロラトゥーラの技術もしっかりしていると思いましたが、この日は高音がぶら下がりぎみでした。それでも登場した歌手の中では一番輝いていましたし、カーテンコールでの拍手もたっぷり、ブラボーもたっぷり。更に勢い良く投げ込まれたブーケをしっかりキャッチして「アリガトウ!」とにこやかに歓声に応えていました。ぽっちゃりの体形がこれ以上大きくならないように注意して、これからの長い歌手生活を有意義に送って欲しいものです。

他の歌手では、司祭ニラカンタ役のエルネスト・モリリョ(Ernest Morillo)が演技も上手くて良かったです。ジェラルド役のヴァシル・クロホルスキ(Vasyl Grokholskyi)は見た目はすらりとしていて二枚目ですが、一本調子で高音もギリギリ精一杯です!という状態でした。優柔不断で無責任なテノール役としてはぴったりの外見なんですけどね~。東京ではチェルソ・アルベロ(Celso Albelo)というスペインの若手注目テノールが歌うそうですが、見た目はグロホルスキーの方が勝ってますね(笑)

シンプルな舞台装置を利用した演出は好感が持てましたし、衣装は色彩センスも良く人物の性格が見えてくるようなデザインで気に入りました。ドリーブといえば「コッペリア」や「シルヴィア」といったバレエ作品の作曲者のイメージでしたが、オペラもなかなかのものです。ただ、ストーリーは「蝶々婦人」や「トゥーランドット」と同じくらい主役テノールに往復ビンタをしたくなりますが(笑)今回の公演は、オーケストラもよくまとまっていたし、「鐘の唄」を生で聞けただけでも貴重な体験だったと思います。


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コメント 13

keyaki

あら、ランカトーレ、ちょっと前も来てましたよね。3月は、スカラ座で、「連隊の娘」だったようですね。
めずらしいオペラをご覧になったんですね。
《ラクメ》って、サザランドのLDがありましたが、買ったような気もしますが、見た記憶がないので、買わなかったのかな?
by keyaki (2007-04-22 00:12) 

東京公演が楽しみです。滅多に実演にお目にかかれないですものねえ。
by (2007-04-22 01:36) 

しま

『ラクメ』行ってらしたんですね~。
ワタシのアイドル、エルネスト・ブランがニラカンタやってる録音がありまして(全曲じゃないんですが、ラクメはサザーランドです、確か)、例によってセクシーなパパでお気に入りなのです。
仕事の都合がつけば、水曜日に行きたいのだけど・・・
by しま (2007-04-22 11:09) 

Sardanapalus

keyakiさん>
>ランカトーレ、ちょっと前も来てましたよね
ね。そのときは「ルチア」でしたっけ?今回のパンフレットによると、どうやら日本での待遇の良さが気に入って日本贔屓になっているようです。

>《ラクメ》
>見た記憶がないので
はっきり言って色々なオペラを切り貼りしたような印象がぬぐえませんので、見たけど印象に残っていないのかもしれませんよ。
by Sardanapalus (2007-04-22 14:18) 

Sardanapalus

gonさん>
>滅多に実演にお目にかかれない
本当ですね。最初に名古屋公演があると知ったときには目を疑いましたから(^_^;)何のことは無い、トヨタがお金出していたのでした。gonさんも楽しめるといいですね~。

しまさん>
>セクシーなパパ
あ、そうでしたか。私の中でブランクといえばヴァレンティンとズルガなのですが、この怒り爆発娘溺愛パパ司祭も歌っているのですね。今回の公演のモリリョは挙動が怪しくて(笑)役に良くはまっていました。水曜日、時間が取れると良いですね。
by Sardanapalus (2007-04-22 14:35) 

ロンドンの椿姫

なるほど、こういう話なのですね。

ラクメは今年の夏にホランドパークの半野外オペラでやるのですが、結構切符代が高いので(というより安い席がほとんどない)、どうしようかなあと迷っています。迷っているうちに安い切符はなくなってしまうのだろうけど。

ランカトーレは、グルベローヴァのように、日本にばかり行ってロンドンには来てくれない人になってしまったのでしょうか?
7,8年のROHのホフマンのオランピアで観た記憶はありますが、もう来てくれないような気がします。
by ロンドンの椿姫 (2007-04-22 21:18) 

Sardanapalus

ロンドンの椿姫さん>
>ラクメは今年の夏にホランドパークの半野外オペラでやる
へえ~!珍しくかなりマイナーな演目を選んだのですね。もしかして「花の2重唱」だけで選んだのでしょうか?とにかくラクメが歌えないとチケット代を返せ!と言いたくなるレベルの作品なので、高い席しか残ってないのならじっくり吟味してから行くかどうか決められた方がいいと思います。なかなか有望な若手美人歌手↓が歌うようですが。
http://www.helensykesartists.co.uk/artist_display.aspx?AID=89
ピアノ伴奏ですが彼女の夜の女王の音源が聞けるmyspaceのページ↓もあります。
http://profile.myspace.com/index.cfm?fuseaction=user.viewprofile&friendid=159946055

>ROHのホフマンのオランピア
この後どんどん世界各地から声がかかるようになったんですよね。やっぱり待遇の良い日本がいいのかな?(^^)
by Sardanapalus (2007-04-22 23:54) 

euridice

>サザランドの
このランカトーレの公演があるというので、この間、ランカトーレの紹介を兼ねてシアターTVで放送しました。ざっと見たんですけど、ほとんど記憶にない・・・ イギリス人のオリエンタリズム丸出しって感じだけはしましたけど^^;
by euridice (2007-04-23 07:52) 

Sardanapalus

euridiceさん>
>シアターTVで放送
>ほとんど記憶にない・・・
劇場で見てなければ私もストーリーがどんなだったか思い出せないかもしれません。各キャラクターも声域のステレオタイプに沿ったものですし…。クライマックスもあるようなないような(^^)何故ろくに上演されないのかよ~く分かりましたよ。
by Sardanapalus (2007-04-23 19:55) 

しま

残念、水曜ダメですわ。仕事もそうなんだけど、既にチケット完売で。
昨日の時点では若干残っていたので、何とかなると思っていたんですが。甘かったよぅ。
by しま (2007-04-25 01:01) 

Sardanapalus

しまさん>
残念!しまさんならまた面白いコメントをしてくださるだろうと楽しみにしていたのですが。それにしても完売とは凄いですね!
by Sardanapalus (2007-04-25 21:26) 

keyaki

>それにしても完売とは凄いですね!
行った方の報告によれば、チケットポンテで半額で売り出したわりには埋まっていたという程度で、席を移動するくらい余裕があったようです.....日本の来日は、こういうのが不透明で困りますね。完売というか、招待券をばらまいたけど客が来なかったってことかしら?
by keyaki (2007-04-27 11:37) 

Sardanapalus

keyakiさん>
な~んだ、やっぱり今回も日本のチケット販売制度の無駄が出まくった公演だったのですね。それこそトヨタがチケット配ったのでしょうか?招待券も、余った分は放出できる制度を作るべきですよね。当日半額で売れるようにすれば、一般客も嬉しいし、買い上げた企業側も小遣い稼ぎになるし、空席も埋まるし、いいことづくめですよ。
by Sardanapalus (2007-04-27 20:41) 

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