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映画館生中継のオペラ:ROH「ドン・ジョヴァンニ」 [オペラ(音源・映像・その他)]

もともと9月10日が初日と発表されていたROHの2008-2009シーズンですが、開幕1ヶ月前に実は9月8日が初日だという発表がなされました。この日のチケットは抽選で販売されたので私は入手できず、第一その日はロンドンにいないので見に行けないなぁ…とがっかりしていました。ところが、よくよく調べてみると、この公演はライブ中継でヨーロッパ各地の映画館へ映像配信されるというではないですか!コヴェント・ガーデンには行けなくても、エディンバラの映画館に中継してくれるなら見に行ける!ということで、エディンバラにあるCameo Picturehouseへ見に行くことに決定~♪(ここの映画館はMETのライブ中継もやります)

METの方の中継は毎回人気だという噂を聞いていたので、チケットを確保しておこうと国際電話で渡英前に予約をしました。カード決済でしたので、あっけなく座席位置も含めて予約できました。当日の客席は70パーセント程度の入りでしたので、そんなに頑張ってチケットを取らなくても当日購入で良かったと思いますが、せっかく足を運んだのに売り切れで入れないというのは悲しいですからね(^^)チケット代は20ポンド(4000円)とかなりいい値段します。Upper Slips席の方がかなり安いんですよね~。まあ、収録・中継費用などを考えるとこれくらいにしないと赤字なのかもしれませんが、映画のチケットよりは随分と高額ですね。

さて、そんな感じで映画館へ着くと、ちゃんと壁にはポスターが貼ってあります。既にロビーは着飾った中高年のカップルでごった返していました。その脇をこそこそと通り抜けていくジーンズ姿の若者達は、オペラではなくアート系の映画が目当てでしょう(^^)オペラ観客の中では私が最年少か!?というくらい年齢層の高いイベントでした。とにかく人波を抜けてボックスオフィスへ到達し、予約していたチケットを発行してもらいます。席位置はほぼ真ん中ですが、比較的小さい部屋だったので、それでも近いくらいでした。


入場すると、既に中継映像が来ていて、まるで映画館の客席にROHの客席が繋がっているように見えて雰囲気満点。他にも、ROH内の装飾や緞帳などのハイビジョン映像が開演まで楽しめて、なかなか素敵でした。しっかり時計を見ていたわけではないですが、おそらく定刻どおり開演5分前に中継開始。セント・ポール大聖堂を背景に、ミレニアムブリッジ上でバレリーナがバレエレッスンしている映像が流れます。彼女はその後、ROHまでロンドンを駆け抜けて、最後は客席までカメラを導いて消えていきます。おそらく、劇場の精とかいう位置づけなのだと思いますが、見ている人の気分も盛り上がるし、なかなか上手く作ってあります。

ところが、その美しい映像が終わった次にアップで映し出されたのが音楽監督アントニオ・パッパーノ(Antonio Pappano)の顔で、思わず声を上げてしまうくらいビックリしました(^_^;)彼がホストを勤めるのはある意味で順当ですが、喋りもつたなくて見ているほうがハラハラしてしまいましたよ~。指揮だけしていればいいんではないでしょうか。もっと喋りの上手い人は山ほどいるのに…自分でやるって言ったのかな?パッパーノによる簡潔なストーリー解説の後、本日の指揮者チャールズ・マッケラス(Charles MacCerras)が登場し、いよいよ演奏開始です。オペラの演出や歌手については次の記事で書く予定ですので、今回は中継された音声と映像について感想を書きたいと思います。
音声はサラウンドのスピーカーを使った臨場感に溢れたもので、音量も私の行った映画館では非常に快適でした。ROHの客席で言うならUpper Slips席の聞こえ方に似ているでしょうか。当然ですが、きちんとミキシングされてバランスの取れた音でした。問題点は、各歌手がカツラの中につけているマイク(歌わないときはOFF)のスイッチングが時々ずれて重唱部分で声が聞こえてこなかったり、帽子をかぶると声がこもってしまったりしたことですね。これは改善できるのならば、今後のオペラ中継では何とかして欲しいものです。

映像の方は、Blu-rayのDVDを大画面で見ているような気分です。テンポ良く画面が切り替わりますし、カット割りもまずまずセンス良かったです。ただ、やはりアップ画像の大きさが尋常ではないので、特に女性の顔のしわなどが気になる方にはきつい部分もあるかもしれません。あと、「ドン・ジョヴァンニ」のようなタイプのオペラでは様々な歌手が同時に色々なことをしているので、自分が見たい部分を映してくれないイライラもありますね。映像に関する問題点としては、字幕が時々追いつかなかったことと、ジョヴァンニが地獄落ちする場面で、ジョヴァンニが苦しもうがレポレッロが叫ぼうが騎士長だけを映し続けていたことでしょうか。これには思わず心の中で「そりゃないよ~」と恨み節でした!この瞬間のジョヴァンニを見ないなんて、「ドン・ジョヴァンニ」じゃない!!(^^)

中継のレベルに関しては、初回にしては回線も比較的安定していたし、映像と音声の質も高くて満足のできるものでした。カット割りも最後以外は楽しめたので、初心者オペラファンにはお勧めのイベントだったと思います。前奏曲の間にキャスト紹介の映像が挿入されて、それぞれ役になりきったポーズをとる歌手の顔と役名を一致できましたしね。でも、METの中継では休憩時間にキャストインタビューなどが盛りだくさんだということでそういった「おまけ」を楽しみにしていたのですが、今回は指揮者マッケラスへの事前インタビューと、こちらも事前撮りのバックステージ紹介だけで、少々物足りませんでした。指揮者だけでなく、歌手にもインタビューして欲しいなぁ~。バックステージも、もっと専門家インタビューとかどうやってメイクと衣装をつけていくのかなんていう部分を実際に支度しながら紹介してくれれば楽しめたのに…と、期待していただけに不満が出てきてしまいます。

ということで、全体的なレベルは高かったですし十分楽しかったですが、何でもかんでも見に行きたいというよりは、好きな作品や歌手が出るときには見に行ってもいいかな、という印象でした。(イギリス在住ではないのでどうせ行けませんが^_^;)とにかくチケット代が高いのがネックです(>_<)
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コメント 10

sarahoctavian

わ!いいですね~。実は私もつい最近、ミュンヘンのさる映画館で年間通して折々オペラの生中継をするってニュースを知ったばかりなんです。音質良いでしょうし、劇場にいるような気分になれそう。私も行く~っ。情報によると東京でもそういったイベントがあるそうですね?
by sarahoctavian (2008-10-01 02:59) 

keyaki

劇場中継でも、歌手が隠しマイクつけてるんですか? 初耳です。そんな必要があるとは思えないし、かえって変じゃないですか? 

中央駅のトラヴィアータでは、頬にマイク、耳にはイヤホンでしたが、あんなところでもうまく音が拾えているのには感心しました。
by keyaki (2008-10-01 16:50) 

Sardanapalus

sarahoctavianさん>
ミュンヘンでも中継ですか。楽しみですね!それはMETの作品ですか?それとも国立歌劇場のもの?東京でも、生中継ではないですがMETのオペラを上映していますよ。今年はROHのDVDになっている作品なども上映会があるようです。って、これは首都圏を中心にしたイベントなので、私のような田舎在住者には縁のない話です(^^)
by Sardanapalus (2008-10-01 19:26) 

Sardanapalus

keyakiさん>
>劇場中継でも、歌手が隠しマイクつけてるんですか?
どうやら、最近録音機器を一新したROHはピンマイクで各歌手の声を拾うシステムを採用したようです。グラインドボーンのDVD作品も、最近のものは全てこの方法で収録されてるようですよ。

ホールに響く声は各自の差が出やすいので、発声元で音を拾った方が後で歌手間の声量や音のバランス調節がし易いのではないかと思います。ただ、マイクをつけるとやはり歌手達の動きが制限されるので、演技も重視して楽しむ者としては複雑です(^_^;)衣装によってはコードが見えてしまって興ざめですし。

>中央駅のトラヴィアータ
翌日の仕事のことを考えて、やはり寝てしまったのですが、keyakiさんのアップしてくださった映像を見ました~。最近のAV機器の性能は凄いですね。ソプラノの高い声もキンキンしていないし、とても聴きやすかったです。
by Sardanapalus (2008-10-01 19:42) 

sarahoctavian

映画館オペラ&バレエ中継は主にMETとロイヤルオペラのようです。あとマドリッド、サンフランシスコも。ミュンヘンにあまり見られない有名どころや演出を見るのに最適でしょうね。
by sarahoctavian (2008-10-01 20:53) 

しま

>チケット代は20ポンド(4000円)

そ、それは高いですね;;; 都内のMETのなんちゃって“ライブ”ビューイングでさえ3000円です。それでも、よほど興味のある演目じゃないと行く気がしません。
なんて言っても、やっぱり映画館で上映してくれるのは昔から考えたら画期的で、アリガタイ話ですよね。好きな歌手のドアップだって見られますし。

>マイク
>最近のものは全てこの方法で収録

音がきれいに聴こえるのは嬉しいですが、臨場感が無いというか、誰々の声が小さいだのかき消されただのというツッコミがしにくくなって、ネタ的にはおいしくないです(笑)

>頬にマイク

ワタシ、そーゆーのを使う仕事に携わっているんですが、マイクが口の前にくると鼻息とかズゴゴゴーとスゴイんですわ。顎や頬あたりがちょうどいいんです。
by しま (2008-10-01 21:21) 

Sardanapalus

sarahoctavianさん>
ミュンヘンのレパートリーは癖があると思うので、これは丁度いい企画ですね。

>マドリッド、サンフランシスコも
マドリッドはROHと合同で中継企画をしているので抱き合わせですが、サンフランシスコの作品も上映とは、羨ましい!私が一番好きなマクヴィカー演出の「ドン・ジョヴァンニ」を見られるはずです。もし放送されるようでしたら、ぜひ見てみてください!


by Sardanapalus (2008-10-01 22:51) 

Sardanapalus

しまさん>
>>チケット代は20ポンド(4000円)
>そ、それは高いですね;;; 都内のMETのなんちゃって“ライブ”ビューイングでさえ3000円
本当ですよねぇ。今回は大好きなオペラで大好きな歌手が揃っているので仕方ない、と思いましたが、この値段設定では客席が中高年で占められるのも当然ですね。こちらは正真正銘「ライブ」中継ですが…それでも高いです(^_^;)

>>マイク
>ネタ的にはおいしくないです(笑)
そうそう、ツッコミどころが少なくなっちゃうのは寂しいですね。まあでも、一般のオペラファンにとっては、DVDの音声は安定している方が喜ばしいのでしょうけど。

>顎や頬あたりがちょうどいい
おおーこういうマイクを扱うお仕事なんですか!ミュージカルなどでもマイクは頬かおでこですよね。オペラ歌手の声なら、カツラの中で十分でしょう(^^)
by Sardanapalus (2008-10-01 22:59) 

babyfairy

rosina転じてbabyfairyです。

>チケット代20ポンド

・・・そう言えば、遂にアイルランドでもメトのライヴビューイングが観られるようになったのですが、1回につき25ユーロですから、ほぼ同じですね。『げ、高い』と言いそうになりました。

>マイク

一昨日、グリゴーロ君が出た『椿姫』の生中継放送(インターネット)を観てましたが、確かに時々声の聴こえ方が変わってたような気がします。


by babyfairy (2008-10-02 23:36) 

Sardanapalus

babyfairyさん>
>アイルランドでもメトのライヴビューイングが観られるようになったのですが、1回につき25ユーロ
えええ~それは高いですね。ここ2日ほど暴落してユーロが安くなりましたけど、ひと月前のレートなら5000円近いですよ!?

>>マイク
>時々声の聴こえ方が変わってたような
当然生で聴くのとは違いますからね。弱音なんかは上手くひろえないのではないでしょうか?このジョヴァンニのストリーミングは、あら捜しという意味でも楽しみです(^^)
by Sardanapalus (2008-10-04 00:54) 

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