SSブログ

オペラ「フィガロの結婚」@ROH [オペラ(実演)]

現在ROHでは「ダ・ポンテサイクル」と銘打たれた「ドン・ジョヴァンニ」「コジ・ファン・トゥッテ」「フィガロの結婚」の3作連続上演が進行中です。…しかし、音楽監督パッパーノが指揮する「フィガロの結婚」以外のチケットは大量に売れ残り、格安オファーが出たりする始末であまり盛り上がっていないような状況です。モーツァルトの作品の中でも人気の3作ですが、同じ演出であまりにも頻繁に上演されている上に今回はスター歌手の登場が少ないというのがその理由ではないかと思います。ただ、「ドン・ジョヴァンニ」は2パターンのキャストのどちらも個人的にはなかなか魅力的だと思うんですけれどね~。

そのなかで私が狙ったのは、当然サイモン・キーンリーサイドが伯爵を歌う「フィガロの結婚」でした。しか~し、会社から休暇も取り、飛行機もチケットも手配し、準備万端!あとは出発するだけ、となった時にキーンリーサイドは全公演をキャンセルという残念なお知らせが…。(理由はこちら)わざわざ昨年のザルツブルクの公演をスルーしてこのロンドンを非常に楽しみにしていたのに、一瞬もうイギリスに行くのもやめようかとも思いましたが、他にも行きたいところはあるしキャンセルになったものは仕方がないということで、今回の公演ではアントニオ・パッパーノ(Antonio Pappano)の指揮と、フィガロを歌うイケメンバス歌手イルデブランド・ダルカンジェロ(Ildebrando D'Arcangelo)を楽しみに見に行きました。

歌手の中では、期待通りフィガロ役をのびのびと余裕たっぷりに歌い演じてくれたダルカンジェロが素晴らしく、それに一歩も引かないで充実した演技と歌唱を披露してくれたスザンナ役のアレクサンドラ・クルチャク(Aleksandra Kurzak)とのコンビがとにかく最高!(^^)やっぱりこのカップルが安定していると落ち着いて見ていられますね。ダルカンジェロは、顔もイケてますが、あのばりっとした声が本当にかっこいいと思います。今回は初日と2回目の公演を見たのですが、それぞれの日で演技も変えていて、本人もフィガロという役を楽しんで演じている様子が分かりました。クルチャクを生で聴くのは久しぶりでしたが、しっかり歌えて演技もできる、私の好きなタイプの歌手であることを再確認しました。この作品はスザンナがあちこちの場面で登場しますが、いつ出てきても生き生きとした役作りで楽しませてくれました。アナ・ボニタティバス(Anna Bonitatibus)の小柄で元気のいいケルビーノとの姉弟のような絡みも楽しかったです。

そんなきびきびした頭の回転の速い2人に比べて、伯爵夫妻はどうものほほんとしているなぁ、という印象を受けました。伯爵役のルーカス・ミーチェム(Lucas Meachem)も伯爵夫人役のレイチェル・ウィリス=ソレンセン(Rachel Willis-Sørensen)も、歌唱は合格点ですがいわゆる直立で歌い上げるタイプで、表現力や演技力はあまり感じられなかったです。それでもミーチェムはコミカルな場面などは頑張っていたのですが、演技力の無さは隠せるものではありません。逆にウィリス=ソレンセンはほとんど演技をしないことでその一時代前の美人顔を生かして高貴な雰囲気を出すことには成功していたと思います。ただ、伯爵夫人にはもっと芯の強い部分やお茶目な部分を見せて欲しい私としては、退屈な役作りでした。特にこの演出では、フィガロ&スザンナを代表とする使用人達と伯爵夫妻の間の冷ややかな対決というか、緊張感のある主従関係というのが面白い点だったりするのですが、この主人達では使用人達に良いようにあしらわれていそうでした(^^)逆に、そういう「毒」が抜けていた分、最後に伯爵が「夫人よ、許しておくれ」と謝る場面で伯爵が本心から謝罪をし、夫人も本心から許して元の鞘に戻っているように見えたのは読み替え演出全盛のご時世、逆に新鮮ではありましたが。

他の歌手達も素晴らしく、バルトロ役のカルロ・レポーレ(Carlo Lepore)とマルチェリーナ役のアン・マレー(Ann Murray)、そしてバジリオ役のボナベンチュラ・ボットーネ(Bonaventura Bottone)の「ずっこけ3人組」は自然な演技も面白く、歌唱面でもしっかりと役を演じきっていました。この演出では使用人として大勢出演する俳優達(歌なし)も隅々まで細かく演技がつけられていて、音楽だけでなく演技も楽しみたい私にとっては大満足の再演でした。

ただ、今回の公演で一番の拍手を送りたいのは、素敵な音楽を提供してくれた指揮者のパッパーノです。やはりキーンリーサイドの伯爵が見たかった~とあちこちで感じながらの鑑賞でしたが、いつも通り熱のこもったパッパーノの指揮が素晴らしかったおかげで作品としては非常に楽しめました。この演出の初演でも同じように感じましたが、パッパーノの振るモーツァルトは隅々まで気配りが行き届いているので安心して聞いていられますし、テンポ設定に疑問を感じることもなく純粋に作品を楽しめます。今回は、伯爵夫人の部屋に閉じ込められたスザンナとケルビーノがどこから逃げ出そうかと歌う場面でかなりの弱音でひそひそ話のように歌わせていたのが面白かったです。歌手が2人とも演技が上手いので、顔の表情なども見ていて可笑しくて、客席からも笑いが起こっていました。最近、音楽活動への貢献が認められて女王から爵位を授かりSir Tonyとなったパッパーノ、これからもこういう素敵な音楽をどんどん指揮していってほしいです!

パッパーノが音楽監督を務める聖チェチーリア管弦楽団からのサプライズ祝…やっぱりこの曲ですか(^^)






Le Nozze di Figaro

Director: David McVicar
Revival Director: Leah Hausman

Figaro: Ildebrando D'Arcangelo
Susanna: Aleksandra Kurzak
Count Almaviva: Lucas Meachem
Countess Almaviva: Rachel Willis-Sørensen
Cherubino: Anna Bonitatibus
Don Basilio: Bonaventura Bottone
Marcellina: Ann Murray
Bartolo: Carlo Lepore

Conductor: Antonio Pappano
Royal Opera Chorus
Orchestra of the Royal Opera House
nice!(0)  コメント(6)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 0

コメント 6

Kew Gardens

それでもやっぱり見どころのあるNozzeだったんですね。 パッパーノ大将は、ハープシコード弾きながら指揮するという八面六臂の活躍だったのでしょうか?

聖チェチーリア管のサプライズ祝は、本当にうれしそうですね。 ”すごく感激だよ。 それにすごくイギリス的”なんて、しっかりほめているのは流石ですね。 でも、控えめなイタリア語は、イギリス人が、がんばって話していますという感じかしら。 
by Kew Gardens (2012-02-23 23:31) 

Sardanapalus

Kew Gardensさん>
>それでもやっぱり見どころのあるNozze
はい!私はパッパーノも大好きですから(^^)でも、そうでなくても非常に満足できる公演でしたよ。当然パッパーノは、
>ハープシコード弾きながら指揮するという八面六臂の活躍
でした!しかも、今回は老眼が進んだのか?楽譜とにらめっこしながらの演奏だったので、折角椅子が用意してあるのにずっと中腰での演奏になってました(笑)

>聖チェチーリア管のサプライズ祝は、本当にうれしそう
この動画、大好きです。そう、パッパーノってイタリア系のくせにイギリス生まれアメリカ育ちだからか、イタリア語はあまり滑らかじゃないですよね。そこもまたお茶目に感じてしまうんですけどね~。
by Sardanapalus (2012-02-24 23:54) 

galahad

伯爵はちょっと残念でしたが、理想のフィガロヴォイスダルカンジェロ、クルチャク(彼女ってほんとに生き生きしてますよね)が聴けて良かったということで。 大根気味なひとがいてもお芝居としておもしろいっていうのは、実に鑑賞しがいがありますよね。
Sir Tonyのモーツァルトって過剰でないピリオド風味があるとこが好きです。

by galahad (2012-02-25 00:21) 

Primrose

先日はお会いできて嬉しかったです。まだまだフィガロ祭は続いてます。昨晩は6公演目、あと2公演を残すのみです。ダルカンジェロのフィガロを絶賛して下さりありがとうございます!歌声だけでなく、美しくて正確なディクションに私はメロメロです。あの響く声がたまりません!おまけに超ハンサムですし。すみません、ついつい嬉しくて長々とコメントしてしまいました。またお会いできる日を楽しみにしています。
by Primrose (2012-02-26 06:37) 

Sardanapalus

galahadさん>
>ダルカンジェロ、クルチャク(彼女ってほんとに生き生きしてますよね)が聴けて良かった
はい、この2人のおかげで本当に楽しめました。

>Sir Tonyのモーツァルトって過剰でないピリオド風味があるとこが好き
そうそう、そうなんですよ!あの絶妙なピリオド風味が感じられる演奏が、私もお気に入りです(^^)
by Sardanapalus (2012-02-26 11:05) 

Sardanapalus

Primroseさん>
こちらこそ、お久しぶりにお会いできて嬉しかったです♪結構長い公演期間になってますが、歌手の皆さんには最後までキャンセルなく頑張っていただきたいですね。

>ダルカンジェロ
>歌声だけでなく、美しくて正確なディクションに私はメロメロ
そうそう、レチタティーボも多いですからディクションも大切!この点でも、ダルカンジェロは◎ですね。ダルカンジェロのフィガロはずっと生で見たいと思っていたので、念願かなって大満足でした。
by Sardanapalus (2012-02-26 11:11) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。