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オペラ「ファウスト」:2つの演出 [オペラ(音源・映像・その他)]

ようやく何とかログインできるようになってきましたね。ということで、急いで記事をアップしてみようと思います。写真もいっぱいです!(笑)

先日の記事思いっきりテンポの違う2種類の「ファウスト」をご紹介しましたが、この2つ、なんと演出のコンセプトが瓜二つだったということが分かりました。

       

一方は2004年のロンドン、コヴェント・ガーデンでのデイヴィッド・マクヴィカー(David McVicar)演出(↑)、もうひとつは2005年のニュー・ヨーク、メトロポリタン歌劇場でのスティーヴン・クロフォード(Steven Crawford)演出(↓)です。

       

メトロポリタンの方は映像は無いので、舞台写真を比べてみたかぎりだと、確かに似てる!この二つの公演で共通点と言えば、両方でファウストを歌ったロベルト・アラーニャ(Roberto Alagna)だけかと思いきや、何と演出も似てたんですねぇ~。あんなにテンポの違う演奏なのに、面白いものです。

どちらも16世紀ごろのドイツから、19世紀のフランスに舞台を移してますが、とりあえずぱっと見た感じではコヴェント・ガーデンのほうが暗いというか、陰がありそうですね(マクヴィカーの本領発揮ですか)。それから、現実感にこだわりを見せるイギリスっぽく、コヴェント・ガーデンの方が時代考証がしっかりしていると思います。特に違いが出ているのはヴァレンティンや兵士達の軍服コヴェント・ガーデンのものは色と形から普仏戦争(1870-1871)の軍服だな、と具体的に分かるのに対して、メトの方はもう少しあいまいと言うか、漠然と兵士の軍服と言った感じの衣装ですね。ディーマのヴァレンティンのカッコイイ写真はこちら(なぜ太鼓の上にのっているんでしょう?^^;)。一般兵の軍服にしてはちょっと豪華な気もしますが、そこはオペラ、見栄えも大切ということでしょう(笑)そういえば、メフィストフェレスの服のセンスが凄いのも共通してますねぇ~(片やドラッグクィーン、片や筋肉マン)。まあ、ブリン・ターフェル(Bryn Terfel)は何着てもちょっと不気味なんですけどね(笑)(写真はコヴェント・ガーデン版よりヴァレンティンの手相を見るメフィストフェレス「気をつけなさい、若者よ。」って、あんたの方が年下!^^;)

実は、フランス語ですが二つの演出を比較している批評があります(ロボット翻訳で英語になおせば結構読めるようになりますので、興味のある方はぜひ)。それによると、フランス人としては衣装は当然ながら、メフィストの「ワイン」が流れ出るのもメトの聖母マリア像(舞台全景写真左端)よりガーデンのキリスト像(分かり辛いですが全景写真中央)の方が納得がいくし、ワルツのシーン(どちらもカンカンの振り付け)も舞台上の女性全員が踊る設定のメトより、キャバレー「地獄」でショーガール達が踊る設定のガーデンの方が処理が上手い、とかなりコヴェント・ガーデン寄りです。そうそう、やっぱりアラーニャの側転(→)についても触れていました(メトではやらなかったようですね)。まあ、あそこまで徹底的にフランスに移したコヴェント・ガーデンの演出(何とファウストは年寄り作曲家=グノーでした)の後では、言ってしまえば中途半端なメトロポリタンの演出には文句も出るでしょう。日本で例えるなら、侍がチャイナ服着て出てきたとか、着物の合わせが左前だったとか、そういうことでしょうからねぇ。

しかし、これだけ似た演出をこんなに短い期間にやってしまうとは、ビックリです。しかも両方に出たアラーニャ…もしかして彼がクロフォードに「演出変えて~」とかいったのかな?と思ってしまいそうですが、そんなことはないでしょう。こうなると例え眠くなってもメトロポリタンの演出も映像で見てみたいものです。


ここから全くどうでもいい話ですが、ちょっと面白いのでメトの舞台写真を探していて見つけた「オペラ・ニュース(Opera News)」の表紙たちを並べてみました。アラーニャ、髪なが~い!何かやけに深刻な顔してますが、大丈夫でしょうか?それから、何でヴァレンティン達=スマート系、メフィスト達=ワイルド系なんでしょうね?(笑)


 


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コメント 11

keyaki

わーー、すごい力作ですね。
オペラニュースの表紙って一昔前のファッション雑誌みたいですね。
ターフェルの顔と手のデカイこと。なんか伴天連のようでもありますね。両方のメフィストのファッションは、贔屓の歌手には着て欲しくないですね。
聖母マリア像からワインというのはめずらしいですね。ぶどう酒=キリストの血ですものね。
by keyaki (2005-08-24 03:21) 

Sardanapalus

>わーー、すごい力作
えへへ(^^;)勉強してると脳が活性化して、いろいろやりたくなりません?

>オペラニュースの表紙って一昔前のファッション雑誌みたい
何故かオペラ・ニュースは毎回ちょっと古典的というか(笑)ポーズ決めすぎというか。メフィスト達は普段着でしょうか?(笑)声が低くなるにつれてカメラが遠くなっていくのもちょっと不思議です。

>ぶどう酒=キリストの血
これなら分かりやすいんですけどね。なぜメトは聖母なんでしょうかね。聖母信仰が根強い南フランスの設定なのかなぁ(マクヴィカーの方はパリでした)。
by Sardanapalus (2005-08-24 04:18) 

euridice

>>わーー、すごい力作
同感です!

>演出も似てた
これは昔からよくある現象みたい・・・ 例の伝記にもこんなことが書いてありますし・・

「演出家たちは恥ずかしげもなく他のプロダクションからアイディアを流用するということ、そして、それは自分自身のプロダクションからだけではないということに気がついたとき、私は客演では、そういうことを手本にすることにした。」(私=P.ホフマン)
もう20年以上前のことです。

>声が低くなるにつれてカメラが遠くなっていく
単なる偶然か? 意図的なのか? おもしろい!^^!
by euridice (2005-08-24 06:19) 

keyaki

>声が低くなるにつれてカメラが遠くなっていく
ほんとだ! こりゃ、面白い
そういえば、ソプラノなんか顔のアップが多いような。
パペなんか、ジーンズの着こなし特集みたい、しかもサングラスかけさせられてますよ。ターフェルは、なんか顔がほっそりみえますけど、これは、腕の太さを前面に出して、目の錯覚を利用していますね。

イギリスの「OPERA NOW」も歌手の顔写真が表紙ではなかったですか?
イタリアの「L'opera」は、オペラの舞台写真ですよ。まともですよね。

どうして、歌手の顔写真になるのか考えてみましたが、舞台写真は、著作権とか肖像権の問題とか面倒なのかなぁ、
by keyaki (2005-08-24 09:29) 

ヴァラリン

>>>わーー、すごい力作
便乗します!
>勉強してると脳が活性化して、いろいろやりたくなりません?
ワタシも勉強しようかなぁ~~そうすりゃ、もっとマシな記事が書けるかも(^^;

>>>声が低くなるにつれてカメラが遠くなっていく
こうして並べてみると面白いですね~~

>パペなんか、ジーンズの着こなし特集みたい
この時だけ、本屋で立ち読みしましたけどぉ、この表紙の写真が一番良かったです…
by ヴァラリン (2005-08-24 09:55) 

オペラニュース、よく探してこられましたね~!
>>歌手の顔写真になるのか考えてみましたが
毎号、次は誰々が表紙ですよ~って予告してますよね、そこがウリなのかなぁ
>>オペラニュースの表紙って一昔前のファッション雑誌みたい
表紙めくったら、衣装協力どこどこ、って書いてありましたよ。
>>声が低くなるにつれてカメラが遠くなっていく
低音になればなるほど背が高く(付随して脚も長く)なるというカメラマン達の間での定説なのでは(笑)…あ、クーラのもそういやどアップだったでした。ううむ。
>>一般兵の軍服にしてはちょっと豪華な気も
うんうん(笑)徴兵された新米の一兵卒じゃないの??何故に彼だけダブルのボタン??って思いました^^ROHのトロヴァトーレの時は伯爵の彼だけがなぜかシングルボタンでちょっと不満だったのですが、偉くなればなるほどボタンの数って減るんですか?いっぱいピカピカしてたほうが偉そうだけど。
by (2005-08-24 10:12) 

娑羅

Opera News、びわ湖ホールの資料室(?)に、バックナンバーがどど~んとそろっているので、ここに載っている写真はみんな拝見しました(^^)
世間一般の人に、これらの写真を見せて、「彼らは何してる人でしょう?」と質問して、「オペラ歌手!」と答える人は少ないかも!?
皆さん素敵です・・・・。
(Dimaが表紙の号は、オークションで手に入れました♪)
by 娑羅 (2005-08-24 17:40) 

Sardanapalus

わ、皆さんコメントありがとうございます!頑張った甲斐があって嬉しいです。

euridiceさん>
>昔からよくある現象
そうなんですか~。オペラの場合は元が一緒だからパクっても「私の解釈とあなたの解釈が似ていただけだ」とか言って逃げれそうですもんね。ホフマン氏のコメント、興味深いです。

>keyakiさん
>パペなんか、ジーンズの着こなし特集、しかもサングラス
この表紙じゃ一体誰なのかさっぱりですよね(^_^;)まだかっこいいから私的にはOKですけど。ターフェルなんて、まるで釣り雑誌みたいじゃないですか(笑)

>どうして、歌手の顔写真になるのか
どうしてでしょう?やっぱり肖像権関連が簡単だし、その歌手のファンに売れるから?でしょうか。オペラだけじゃなくて音楽雑誌は殆どが音楽家の写真が表紙ですよね。イギリスで舞台写真を使っているのは"Opera"誌くらいだと思います。

ヴァラリンさん>
>>わーー、すごい力作
>便乗します!
どうぞどうぞ~。
>ワタシも勉強しようかなぁ~
そうですねぇ。でも、マイナス面も多いですよ(笑)
by Sardanapalus (2005-08-24 19:54) 

Sardanapalus

りょーさん>
>表紙めくったら、衣装協力どこどこ
他の雑誌でも書いてありました!本当にオペラ雑誌、ファッション誌みたいですね~。

>>一般兵の軍服にしてはちょっと豪華な気も
>うんうん(笑)徴兵された新米の一兵卒じゃないの??何故に彼だけダブルのボタン??
リンクさせていただいた写真を見ると、はっきり言ってヴァレンティンだけ伍長、もしくは隊長レベルの軍服っぽいですよね(笑)アンサンブルと違いすぎ!(ちなみに、コヴェント・ガーデンではヴァレンティン一人だけがコートを着て区別してました)

>偉くなればなるほどボタンの数って減るんですか?
どうでしょう?普通に考えると逆だと思いますけどねぇ。見た感じもキラキラ、ごちゃごちゃしてれば偉そうだし。礼服か実務服かでも変わってくると思いますけど、私も軍服マニアとかではないのでよく分かりません…。

沙羅さん>
>びわ湖ホールの資料室(?)に、バックナンバー
へぇ~!意外な使い道がありますね、琵琶湖ホール!一度しか行ったこと無いですが、素敵なホールですよね、馬蹄形で。

>「彼らは何してる人でしょう?」
少なくとも、メフィスト達がオペラ歌手だとは信じてもらえなさそうです(笑)

ところで、歌手の声とカメラ位置、これはオペラ・ニュースだけの傾向じゃないかと思います。ドイツのDas Opernglassは、声とは関係なくアップだったり全身像だったりしてますよ。
https://www.opernglas.de/
上のページから、04 SHOP→ALTERE AUSGABENへ行っていただければ1993年からのバックナンバーが見れます。ここに来ている方に関係しているものは、1994年5月号のディーマ、1997年10月号、2001年1月号、2003年2月号のクーラ、2000年1月号のキーンリーサイド、2000年12月号のパーペくらいでしょうか。どれもなかなか良い表紙だと思いますよ。やっぱりパーペはワイルド系ですが、この雑誌の表紙は寝転がっているものなんかもあるのであまり気になりません(笑)
by Sardanapalus (2005-08-24 20:19) 

Sheva

TBさせていただきましたので、こちらに書きますね。
日本はきょうは文化の日で祝日です。
Lyricsサイト教えていただきまして大感謝です!
いやーサイモン、フランス語もステキですね~~ポワ~
これで彼の4ヶ国語を聞きました。(独仏伊英)あ、ラテン語もあったか。
ところで私はきのう、OperaのドンカルロのカレーラスのDVDを買おうと思って、「あっアラーニャがあるじゃん!」と間違って「ドン・カルロス」を買ってしまったんです。知らないって怖いですね~ これはフランス語版。聞き始めて、え?この作品仏語だった?その時初めて間違えて買ったと気づいてがががが~ん。
ショックでした。でもこの作品は画質がすごく良くて歌手も超有名どころばかりで名演ですのでまあいいかなと。
そんでもってハンプソンのでかさに驚愕。この人もターフェルぐらい、190センチぐらいありますね。カリタもでかいんでちょっとアラーニャ可哀相。
そんでもってどうみてもロドリーゴとカルロは愛し合ってる!
Simonのが楽しみですわ。
by Sheva (2005-11-03 10:37) 

Sardanapalus

Shevaさん>
TBありがとうございました。
>「ドン・カルロス」
私がオペラファンになった原因の映像のひとつですね。私も名演だと思います。初演のフランス語5幕版、いわゆる完全版だし、買って損はないはずですよ~。1幕はあった方が断然説得力があるし、ロドリーゴがフェリペに迫るところのメロディーもフランス語版のほうが好きです。イタリア語版はこれから色々削られてるだけです。

>ハンプソンのでかさに驚愕
そう、でかいですよね~。アラーニャと並ぶとまたでかい(笑)

>どうみてもロドリーゴとカルロは愛し合ってる!
はっきり言って親子でロドリーゴ取り合ってる話なんですよね、このオペラ(^_^;)またフランス語バージョンは響きがまろやかだから余計に、ね。イタリア語だともうちょっとドライな感じになりますよ。
by Sardanapalus (2005-11-03 11:34) 

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