SSブログ

オペラ「セヴィリアの理髪師」(3) [オペラ(実演)]

月曜日にディドナートのリサイタルを蹴った償いに(?)、昨日が最終公演の「セヴィリアの理髪師(Il Barbiere di Siviglia)」を見にコヴェント・ガーデンへ行ってきました!最後も笑って笑って、すっきりとした気分で帰ってきました。今回、この歌手陣とこの演出で見れて、本当に良かったと思います。やっぱりオペラ作品を好きになるかどうかって、最初の公演が大切ですよね。

さあ、指揮者が登場して演奏が始まるぞ、と思ったら、指揮台の上に上がって来たのは何とノビタ君!?(笑)え、エルダーはどうしたの?と思って休憩時に確認したら、この日はもともとヤング・アーティスト・プログラムに参加している指揮者ローリー・マクドナルド(Rory Macdonald)が振ることになっていたようです。そんなこと全然知らなかったので、急病の代役かなぁ?それにしてはアナウンスが無かったなぁ、などと考えながら1幕を聞いていました。有名アリアの部分はそれなりにしっかり作っていましたが、歌詞のテンポが早い所や、歌いだしのきっかけが要るところはまだまだって感じでした。時々歌手とオーケストラがずれたりしましたし、2幕終盤の「こっそり梯子を降りて逃げ出そう!」と歌う三重唱の出だしは、スペンスと指揮者で呼吸が合わなくて「チ、トチチチット」ってなってたし(^_^;)こういう部分の安定感の違いは素人の私が聞いても分かるくらいだったので、ああ、一流指揮者って凄いんだね~と改めて感心してしまいました。エルダーの指揮は、テンポがゆったり目であまり好みじゃなかったのですが、マクドナルドの指揮の演奏を聞いてからだと考え抜かれている指揮だと分かりました。

ということで、演奏は時々ハラハラものでしたが、歌手はもう皆さんノリノリで文句なかったです!指揮者が変わったからリハーサルをやったのか、いつもと違う動きをしていたり、余計な小道具が出てきたりして、3度目でも飽きることなく見ていられました。

トビー・スペンス(Toby Spence)のアルマヴィーヴァは、今日はまた伸び伸びと歌って演じて、1幕の見せ場も滑らかな声でしっかりと聞かせてくれました。装飾音をいれちゃったり、のばすところは思いっきりのばしたりしていたので、本当に好調だったのですね。最後のアリアが無いので、1幕頭以降はどちらかというと演技力の勝負ですが、もう笑った笑った!フィガロとのコンビも、兵士も、ドン・アソンソも、最高の出来でした。1幕フィナーレで髭が取れそうになってこっそり押さえてたりしていたのも含めて大笑いさせてもらいました。

前回の公演ではちょっとお疲れ気味だったジョイス・ディドナート(Joyce DiDonato)も、今回はいつもどおりの安定した歌唱に、更に磨きのかかった強気なロジーナの演技でした。特に、コロラトゥーラも低い声でもまろやかさが失われない彼女の声は、いつまでも聞いていたい!前の2回は上の遠くの方から見ていたので、今回は奮発して舞台近くの席を買ったのですが、近くで見ると彼女のコロコロと変わる表情がとても可愛らしくて、このロジーナが大好きになっちゃいました♪家具を壊して回るところも、近いとかなりの迫力!これだけのことを平然とこなすディドナートはこれからも大注目です。どこの公演でもいいので正式なDVDで早く出してもらって、いろんな人に見てもらいたいロジーナですね。

批評のひとつで「Noddy(ノディ)みたいな衣装(配色は似てるけどね)」と書かれていたフィガロのゲオルグ・ペテアン(George Petean)は、今日は出だしがちょっと?でしたが、以降はいつものようにひょうきんなフィガロを好演していました。こういうお節介な(笑)兄ちゃんは、本当にスペインのそこら辺にいそうです。近くで見ると、整った顔立ちをしているんですね。あの衣装が結構似合っているのが凄いです(笑)

バルトロのブルーノ・プラティコ(Bruno Pratico)(左)は、今日も相変わらずレベルの高い演技と歌唱で、本当にバルトロにぴったり。今日は指揮者が変わって歌いづらそうな部分もありましたが、それでも1幕最後に警備隊がやって来た時の「誰だ?」を'Who's there?'と英語で言うアドリブもでました。ドン・バジリオのレイモンド・アチェート(Raymond Aceto)(右)は今回も響き渡る低音が素晴らしかったです。演技も上手いのでこの役にはぴったり!声量もあるなぁ、と思ったらメトロポリタンのヤング・アーティストだったそうです。何だか納得。そうそう、可愛らしい小柄なおばちゃん風ベルタを毎回余裕で歌っていたのは、エリザベス・ゲール(Elizabeth Gale)でした。おいくつくらいでしょうね?いつまでもこうして元気に歌っていられるとは素晴らしいです。

という感じで、隅から隅まで楽しんだ公演でした。この最終公演は観客の反応も良くて、旅に歌手たちが何かするたびにどっと笑いが起こってました。歌手が調子よければ客席も反応し、客席が乗ってくれば歌手も乗ってくるというわけで、まさにキャッチボールが上手くいった公演だったと思います。月曜日の「椿姫」でのもやもやもすっきり解消!(笑)あ~楽しかった、と思ってふと予定を見ると、31日からは既にこのピリオド一番の注目公演「フィガロの結婚(Le Nozze di Figaro)」が始まります。マクヴィカー演出のフィガロ…今回の「セヴィリアの理髪師」のポップなものとは違って、かなりドロドロとした雰囲気のフライヤーがでているので、どうなるのか楽しみなような、怖いような(笑)


◇セヴィリアの理髪師関連記事◇

セヴィリアの理髪師
セヴィリアの理髪師(2)※ラジオ放送の音源有


nice!(0)  コメント(9)  トラックバック(2) 
共通テーマ:音楽

nice! 0

コメント 9

ロンドンの椿姫

やっぱりまた行ったんですね。羨ましい~!私も行きたかったけど、諸事情で諦めました。
しかし、指揮者が変わるとはねえ。やっぱりエルダー病気だったのでは?そうでなければROHでは新人に勉強のために振らせてみるなんてことしないと思いますけどね。
でも、同じものをちがう歌手で聴くことはあっても、ちがう指揮者でというのは珍しいですから、良い経験でしたね。

さ、次はフィガロの結婚だ! 一緒の日に行くので、またああだこうだ言い合いましょう。楽しみです。
http://peraperaopera.ameblo.jp/
by ロンドンの椿姫 (2006-01-20 00:53) 

Bowles

>「誰だ?」を'Who's there?'と英語で言うアドリブもでました。

日本でも日本語で「だれぇぇぇ?」。プラティコ・クラスになるとレチタティーヴォでのアドリブはおてのもので、ボローニャの時は第一幕、ロジーナの書き付けを追求するところでもアドリブが入り、楽員に大受け。ペーザロでも他の演目で、レガッツォとアドリブのキャッチボールをしていました。

こちらはただ今ゲルギエフの指輪第二チクルス真っ最中。明日は休憩で、土日で最後の二本です。
by Bowles (2006-01-20 05:31) 

Sardanapalus

ロンドンの椿姫さん>
行ってきました!トビー君は最終日も絶好調でしたよ!勿論、ディドナートもペテアンも良かったですけどね。

>指揮者が変わるとはねえ
ちゃんと計画されていたようですよ。彼の写真はプログラムにも載っているし。でも、本当に知らずに行ったので、いきなり10代に見える眼鏡君が指揮台に上がってきたときはとてもビックリしましたけど(笑)

Bowlesさん>
>プラティコ・クラスになるとレチタティーヴォでのアドリブはおてのもの
楽しい小話をありがとうございます!ほんと、プラティコはあの早口の部分も余裕たっぷりって感じで歌ってくれて、バルトロの意地悪さを思いっきり楽しめました(笑)

>ゲルギエフの指輪
そうでしたね!ワーグナーが苦手な私には、トムリンソンがヴォータンを歌ってくれない限り連続鑑賞はとても無理ですが、ゲルギエフの指揮はどんな感じなのか気になります。
by Sardanapalus (2006-01-20 10:07) 

dognorah

私も指揮者が変わっていたのでびっくりしましたが、家に帰ってからHouseをチェックすると、予約時からの計画でした。私は気付かずにこの日を取ってしまったみたい。21日にエルダーのやつを行っておいてよかったです。彼、Halleでエルダーのアシスタントをやっているので実現しやすかったのでしょう。
by dognorah (2006-01-20 10:46) 

keyaki

>マクヴィカー演出のフィガロ
ゴシックホラーっぽいですね。シュロットですね。

ドン・アルフォンソでもドン・バジリオでも同じ様なものですが、ちょっと気づきましたので、、、
Sardanapalusさんのレポートは面白いのでちゃんと読んでいる証拠です。(笑)
バジリオもバルトロもすごいつけ鼻ですね、歌いにくくないのかしら。
by keyaki (2006-01-20 11:03) 

Sardanapalus

dognorahさん>
>指揮者
>予約時からの計画
そのようですね。師弟関係にある指揮者の公演をひとつもらって、という形になりましたが、まずまずのROHデビューだったのではないでしょうか。しかし、マクドナルドは細いし小柄だし童顔だし、どう見ても10代にしか見えませんでした(笑)

keyakiさん>
>マクヴィカー演出のフィガロ
>シュロット
あ、やっぱりそうですか?私、シュロットを映像で見たことが無いので「シュロットっぽいけど、どうかなぁ~?」って疑問だったんです。今はロンドン中にこのポスターが貼られてますよ。本当に、どんな感じになるのやら…。

>ドン・アルフォンソでもドン・バジリオでも
ご指摘ありがとうございます。なおしておきました。なんでアルフォンソがでてきたのか不明ですが、最近劇場ばかり行っているので頭がショートしているのでしょう(^_^;)この演出、アルマヴィーヴァ、ロジーナ、フィガロ以外はコーラスまで皆付け鼻でした!ちょっと大変だったんじゃないかな~と思いますけどね。
by Sardanapalus (2006-01-20 18:32) 

agojun55

’のびた君’とは、これまたいいあてて。指揮者がロイヤルオペラデビューという’不安’など全く持たず、 歌手陣が大ノリにのっていのは衝撃でした。ハウス全体が一体になり’セビリアの理髪師’の楽しい世界でしたね.
by agojun55 (2006-01-20 19:49) 

dognorah

コメントで訊き忘れましたが、出待ちの成果はなかったのですか?
by dognorah (2006-01-21 02:34) 

Sardanapalus

agojun55さん
>’のびた君’とは、これまたいいあてて
登場した瞬間から頭の中にはノビタが(笑)でも、指揮の腕前は確かでしょう。

>ハウス全体が一体
正にそんな最終公演でしたね。お陰で単純なストーリーですが、3度目でも楽しめました。

dognorahさん>
>出待ちの成果
あの付け髭は無い方が断然かっこいいスペンスの地声はやっぱり高め、ペテアンは素顔だとラテン系(ルーマニアですが)の顔の大きい色男、ディドナートはファンにやさしくて可愛かった、って感じですか。これ、成果なのかな?(笑)皆さんジーンズだったのが新鮮でした。
by Sardanapalus (2006-01-21 09:35) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 2

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。