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オペラ「タンホイザー」@中京大学文化市民会館 [オペラ(実演)]

今年初オペラ、チェコ国立ブルノ歌劇場(Nardoni divadro Brno)の来日公演のワーグナー作「タンホイザー(Tannhaeuser)」へ行って来ました(今回の来日公演を詳しく紹介してくれているブログはこちら)。ワーグナーにしては小編成に見えたオーケストラと、メリハリの無い指揮には感心しませんでしたが、殆ど初耳の歌手たちにはかなり楽しませてもらいました♪それから、今や珍しい「なんちゃってヨーロッパ中世」風の衣装だったのも嬉しいです(^^)公演のリハーサル写真や、出演者からのメッセージが見たい方はチケットスペースまでどうぞ。

「タンホイザー」を生で見るのは2度目、前回はバイエルン国立歌劇場の来日公演でした。歌手目当てで行きましたが、オーケストラのレベルの高さ、特に金管パートの美しさが非常に印象に残っています。今回のオーケストラは、派手に音を外すことはなくてもイマイチ音程の定まらない金管と、チェロのトップ以外は全体的に元気の無い弦パートで、期待はしていなかったけれど、お世辞にも上手いとは言いがたい出来でした。しかも、大雑把な印象のゆったりした指揮で、ソロ歌手と合唱とオーケストラが空中分解するんじゃないかとハラハラしてしまう部分がいくつかありました。まず、初っ端からあんなに盛り上がらない前奏曲は初めてです。その後もメリハリが感じられず、歌合戦の場面なんて周りで舟を漕ぐ人々が続出…(^_^;)もう少しテンポアップしてくれれば、歌手にもオーケストラにも聴衆にも優しかったはずですが、あまり高望みは出来ませんね。

「なんちゃってヨーロッパ中世」演出は、ワーグナーの意図したストーリーと乖離しないながらも、所々に深読みできる部分があって演奏よりは楽しめました。長い前奏曲や間奏曲の間は幕が上がらないのはこのオーケストラのレベルでは間が持たずに辛かったですし、ヴォルフラムを含めた騎士達と合唱(巡礼・歌合戦の招待客)が突っ立ちだったことには不満が残りますが、アングラ劇のような演出よりは好みです。ヴェーヌスの配下(?)の赤い全身タイツのダンサー達はセクシーさ満点で頑張っていたし、衣装は着たきりだけどきちんと作ってあったし、全体的に作品に対する誠意を感じました。狩に来ているのにずるずるマントやローブを引きずっている騎士達とか、楽しいツッコミ所もありましたしね。また、最後にタンホイザーが大きな十字架にすがって救済される様子を騎士達と巡礼全員が周囲で見守る、という終わり方はタンホイザーの「救済」がローマ教皇からもたらされたものではなく、エリーザベトが直接神に祈ったことによるものだという意図が感じられて興味深かったです。ここで「処女の犠牲により教皇の許しがでた」という展開になると顰蹙ものですが、これなら納得できます。フィナーレの音楽がどどっと押し寄せるべきところで迫力不足でしたけど、この終わり方で全て許せてしまいました。

チェコのオペラハウスの来日公演ということで、当然チェコやスロヴァキアの歌手が多かったのですが、その中で名前を知っていたのはヴォルフラム役のウラディミール・フメロ(Vladimir Chmeloだけ。チェコのオペラハウスが来日するときにもよく名前を見る歌手ですね。名古屋で歌うかどうか最後まで分からなかったので、キャスト表に名前を見つけたときは嬉しかったです~。上で紹介したページに載っているリハーサル写真ではつるぴかですが、本番はちょっと不自然な(笑)カツラ着用でした。突っ立ち演技のせいか、エリーザベトへの愛情も、タンホイザーへの友情もあまり感じられませんでしたが、聞かせどころは外さない歌唱で「夕星の歌」も◎。ひとつ残念だったのは、ヴォルフラムの決め台詞「ハインリッヒ、君は救われた!(Heinrich, du bist erluest!)」が聞こえなかったこと。確かにヴェーヌスの悲鳴が凄かったですが、ここは負けじと決めて欲しいところ!ここが聞こえないと結局タンホイザーがどうなったのか良く分からないじゃないですか?(^_^;)

今回フメロ以上に印象的だったエリーザベト役のダナ・ブレショヴァー(Dana Buresova)は、豊かな声量の清らかな声と凛とした立ち居振る舞いがとても素敵なソプラノで、「清らかな乙女」エリーザベトのイメージそのまま!バイエルンの時に聴いたピエチョンカも良かったですが、私ならブレショヴァーを選びます。だれていた歌合戦の場面も、彼女が歌いだした途端に勢いが出て、表現力豊かな歌唱で全体をぐいぐいと引っ張っていってくれました。チェコのオペラハウスの来日公演で「ルサルカ」なんかも歌っているようですが、今後どんどん活躍してくれそうな歌手です。そして、彼女と同じくらい気に入ったのがヘルマン役のマルティン・グーバル。長身で深い声のバスで、若いながらも領主としての威厳は十分でした。今までヘルマンと言えばおじいさん歌手でしか見聞したことが無かったので、若くて力強い領主が歌うたびにドキドキ(笑)そこに立っているだけで彼の治めている領土の広さを感じさせてくれました。領主はこうでなくっちゃ!

上の3人とは逆に「まあこんなものか」だったのがヴェーヌス役のチルラ・ボロシュ(写真中央)。メゾなのにキンキン声で、声のコントロールが出来ていない感じでした。音を外さなかっただけでもマシでしょうか。それから、あまりにも声を温存しすぎだったのがタンホイザー役のヘンドリック・フォンク(Hendrik Vonk)(写真左・ちなみに右はフメロ)。サラサラの金髪にとがった鼻とパッチリした目のなかなかのイケメンで、太っていない(重要!)ので見た目は合格でしたが、いかんせん2幕まで声量抑えすぎ、アクセントが変てこ、指揮とタイミングがずれすぎ!!「あれ、こんなメロディラインだったっけ?」と言いたくなる場所がいくつもありました。ヴェーヌス賛歌も、1度目は半音上ずっていたし(低すぎ?)、かといって3度目は高音がきつそうだったし(高すぎ?)でイマイチ。だらだらした指揮にも問題はありそうですが、騎士達と合流してからも一人声量が無い主役というのは悲しい…。2幕に入って、絶好調のエリーザベトと重唱になると途端に存在感がなくなってしまうし、歌合戦でも身ぶりだけは大きくして誤魔化しているといった感じでした。ところが、このまま「ローマ語り」するの~?寝ちゃうかもな~、などと思っていたら、3幕目は人が変わったように声量が安定して、ようやく演技の大きさと合った歌声を聴くことができました。日程的に厳しいスケジュールなのは分かりますが、そこまで抑える必要があったのかしら?3幕目はよくても、名前を覚えようという気にはなりませんでした。

こうして書き出してみると、色々と物足りない点もありましたが、値段の割りに楽しめた公演だったと思います。とにかく、プレショヴァーのエリーザベトを聴けただけでも元は取りました(笑) 


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euridice

目下公演中のタンホイザーですね。Sardanapalus さんの記事を読んでいると、行きたくなってしまいます。

それにしてもリンク先にある広告の「美味しく召し上がれ!」にはちょっと唖然^^; 安易にテレビコマーシャルから借用しちゃって・・って、招聘元があの通信会社ってわけでもないんでしょ?
by euridice (2008-01-15 07:13) 

Sardanapalus

euridiceさん>
東京公演はまだ間に合いますよ!エリーザベトだけでも聴きに行く価値はあると思います。

>広告の「美味しく召し上がれ!」
もう、最近は変なコピーはスルーするようになってしまいました(^_^;)ここまでされると、「見た」と公言するのが恥ずかしくなってしまいますね。
by Sardanapalus (2008-01-16 23:03) 

euridice

公演回数、少ないですね。行ける日がありません・・
残念!
by euridice (2008-01-17 07:53) 

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はじめまして。
こちらは、「UK-Japan2008」公式WEBサイトの運営を行うUK-JAPAN2008WEBサイト運営事務局です。

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by UK-JAPAN2008WEBサイト運営事務局 (2008-01-17 15:09) 

Sardanapalus

euridiceさん>
残念でしたね。でも、東京では新国でもやっていたし、無理して見に行くこともないかと思います。地方在住者にとっては嬉しい公演でした。
by Sardanapalus (2008-01-21 00:35) 

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