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オペラ「ドン・ジョヴァンニ」 [オペラ(実演)]

去年秋に来日したバイエルン国立歌劇場(Bayerische Staatsoper)のモーツァルト誕生日関連イベントは、誕生日前後2週間強に渡って開催される「モーツァルト祝祭週間(Mozart Festwochen)」での一連の有名オペラ公演です。それぞれ豪華キャストを揃えた公演の中でも、今回は特に私好みの歌手が集まっていた「ドン・ジョヴァンニ」を見てきました。日本に帰国する前にミュンヘンに行くことを決めた一番の理由だった訳ですが、満点とは行かないまでも期待を裏切らない満足度の高い公演でした。気に入った歌手がいっぱいということは、記事も長いのでお時間のあるときにどうぞ~。

とにかく男声ソロ歌手陣は正に私の好みのど真ん中(笑)これ以上に個人的に注目している歌手が大好きなオペラの公演に揃うことは、これからも無いような気がします。キーンリーサイドのジョヴァンニは見れる限り何度でも見たいし(何せ同じ演出でも毎回違うんですよ^_^;)、演技も上手いスペンスのオッターヴィオは苦手なこの役への共感度を増やしてくれそうだったし、レマルはコミカルな演技が上手そうだからレポレッロはぴったりだし、更にモルの騎士長だし!という感じで見る前からワクワクドキドキ。ついでに、「みじめな(Shabby)」ジョヴァンニが見れるという演出も楽しみだったわけですけどね(笑)

序曲が終わって幕が開くと、まあ、聞いたとおり一面真っ赤の舞台が広がっています。終始とにかく赤くて薄暗い!(^_^;)ってことで目にはとっても疲れる公演でした。(休憩時間に場内の照明がつくと目がちかちかするくらいでしたから、よっぽど暗かったんでしょうねぇ)衣装はそんなに冒険的なものではなくて、女性陣は黒と赤を使ったシンプルなドレス、男性陣は黒中心の衣装で、騎士長像は真っ白けでした。演出は、一面赤くて装飾の無い舞台が微妙に変化することで場面を転換するのですが、メリハリのない舞台装置のお陰で歌手達の動き自体に集中できたのは面白かったかもしれません。それでも、屋外だろうと結婚式だろうと夜だろうとひたすら赤い舞台というのは、やっぱりちょっと退屈でした。一番印象的だったのは墓地のシーンで、騎士長を含めた10騎ほどの白い騎馬像が赤い背景にずらりと並んでいる姿はなかなか印象的だったし、騎馬像がいきなり歌いだしてビックリしたくらい静止していたモルの根性にも敬意を表したいです(笑)墓地と言うよりも記念広場みたいでしたけど。他は、ジョヴァンニの家の中の広間(のはず)の、巨大な赤い手のオブジェとそれを丸く囲んでいるキンキラキンな多数の椅子は趣味も悪いし、騎馬像になっている騎士長が晩餐にやってくるときは徒歩なのに、本物の馬に乗った死神が付き添ってくるのは何故なのか気になるし、ツェルリーナとマゼット、アンナとオッターヴィオの場面はなんとも工夫の無い演出で、これで演技の出来ない歌手が揃っていたら部分的に寝ちゃいそうです(笑)

ということで、今回のキャストはこの演出には大正解の選択だったと思います。

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オペラ「売られた花嫁」 [オペラ(実演)]

最近怒涛のように劇場に通っていますが、20日には珍しいベドジッヒ・スメタナ(Bedrich Smetana)のオペラ「売られた花嫁(The Bartered Bride)」を見に、コヴェント・ガーデンへ行ってきました。といっても原語のチェコ語でやるわけではなく、英語翻訳での上演です。歌手も、いつもはENOで活躍している、英語を歌いなれた歌手達を揃えています。特筆すべき歌手としては…この前のビリー・バッドで生真面目なヴィア艦長だったティモシー・ロビンソン(Timothy Robinson)が、打って変わって三枚目役のヴァシェクを歌っています。

あらすじ:貧しいながらも熱愛カップルのマジェンカイェニクだが、マジェンカの父親は多額の借金を帳消しにしてもらう条件で、金持ちミーシャの頭の足りない息子ヴァシェクとマジェンカを結婚させることを約束してしまう。そこからは相思相愛のマジェンカとイェニクを別れさせるため、マジェンカは父親が、イェニクは結婚仲介人ケカルが説得に当たることになる。借金があるから頼む、と言われたマジェンカは、ヴァシェクの元へ密かに近づいて「結婚を約束したマジェンカはあなたのことを殺しかねない」と単純なヴァシェクを怖がらせて結婚の約束を破綻させようとする。一方マジェンカを諦めて遠い故郷へ戻るように、と金をちらつかせて説得するケカルを最初は頑として聞き入れなかったイェニクだが、そのうちころりと態度を変えて「マジェンカはミーシャの息子と結婚すること」「この結婚でマジェンカの父親の借金を必ず帳消しにすること」を条件に、マジェンカを諦める契約書にサインをしてしまう。それを知ったマジェンカは最初は信じないが、イェニクがサインしたことを認めると、それならいっそ一生独身でいると言い張るが、ケカルと父親の必死の説得で半ばやけっぱちで結婚証書にサインをする。その直後にイェニクはミーシャの失踪した長男であることを打ち明け、マジェンカは契約の通り、「ミーシャの息子」である自分と結婚するのだ、と宣言する。ヴァシェクはヴァシェクで村にやって来たサーカスの綱渡りのエスメラルダと恋に落ち、2組の幸せなカップルが誕生して幕。

まあ、ストーリーは田舎臭いと言うか、よくある話と言うか、どうでも良いような話と言うか(笑)1幕でイェニクが裕福な家に生まれたけれども父の後妻に家を追い出されて放浪してこの村にやって来た、という暴露話をマジェンカにするのですが、その直後にミーシャの息子は実は2人いたけど長男はもう長い間行方知れずだ、という話が出てくるので、話の冒頭の段階で、ミーシャの長男=イェニクという一番の複線が見てる人皆にバレバレ(笑)だから、イェニクが証書にサインする時も、結末を予想しながらのんびりと見ていられるオペラでした。一番の盛り上がりは、3幕頭のサーカスシーンでしょうか。本当に曲芸師やピエロが登場して、空中ブランコやジャグリングを見せてくれるのです。ここは客席も大いに盛り上がってましたね。

音楽としては、思いっきりスメタナ色が出ている東欧の民族音楽を多用したもので、まるでオペラと民族音楽とスメタナの交響曲を同時に聞いているかのようなお得な作品でした。

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オペラ「セヴィリアの理髪師」(3) [オペラ(実演)]

月曜日にディドナートのリサイタルを蹴った償いに(?)、昨日が最終公演の「セヴィリアの理髪師(Il Barbiere di Siviglia)」を見にコヴェント・ガーデンへ行ってきました!最後も笑って笑って、すっきりとした気分で帰ってきました。今回、この歌手陣とこの演出で見れて、本当に良かったと思います。やっぱりオペラ作品を好きになるかどうかって、最初の公演が大切ですよね。

さあ、指揮者が登場して演奏が始まるぞ、と思ったら、指揮台の上に上がって来たのは何とノビタ君!?(笑)え、エルダーはどうしたの?と思って休憩時に確認したら、この日はもともとヤング・アーティスト・プログラムに参加している指揮者ローリー・マクドナルド(Rory Macdonald)が振ることになっていたようです。そんなこと全然知らなかったので、急病の代役かなぁ?それにしてはアナウンスが無かったなぁ、などと考えながら1幕を聞いていました。有名アリアの部分はそれなりにしっかり作っていましたが、歌詞のテンポが早い所や、歌いだしのきっかけが要るところはまだまだって感じでした。時々歌手とオーケストラがずれたりしましたし、2幕終盤の「こっそり梯子を降りて逃げ出そう!」と歌う三重唱の出だしは、スペンスと指揮者で呼吸が合わなくて「チ、トチチチット」ってなってたし(^_^;)こういう部分の安定感の違いは素人の私が聞いても分かるくらいだったので、ああ、一流指揮者って凄いんだね~と改めて感心してしまいました。エルダーの指揮は、テンポがゆったり目であまり好みじゃなかったのですが、マクドナルドの指揮の演奏を聞いてからだと考え抜かれている指揮だと分かりました。

ということで、演奏は時々ハラハラものでしたが、歌手はもう皆さんノリノリで文句なかったです!指揮者が変わったからリハーサルをやったのか、いつもと違う動きをしていたり、余計な小道具が出てきたりして、3度目でも飽きることなく見ていられました。

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オペラ「椿姫」 [オペラ(実演)]

去年からかなりの回数コヴェント・ガーデンに通ってますが、ここまでガッカリ度が大きかったのは初めてでした。そんなに怒ってはいませんが、コヴェント・ガーデンでこんな状態のオペラを見なくてはいけないとは、本当にガッカリです。「仮面舞踏会」の初回も主役3人のうち2人が不調でしたが、それでも主役のテノールが絶好調だったので何とか見れました。今回は、主役が駄目だと駄目なのね、という良い例だったと思います。

ヴェルディ:歌劇《椿姫》全曲 今回のは、何年も前から繰り返し再演されている人気演出(ゲオルギュー主演でDVDになってます)の、去年に続いてまたまたの再演の「椿姫(La Traviata)」です。あらすじは、もう言わずもがななので省きます。

実は、このオペラ私は苦手なんです。もう、アルフレードのガキ度が許せない(笑)映像で見てみようと挑戦するたびに、気がつくとツッコミを入れつつリモコンの停止ボタンを押していたのも1度や2度ではありません。でも、今回はこの前「仮面舞踏会」に誘った友達が「オペラなら『椿姫』が見たい!」と言うし、結構王道の演出で見られる機会だったので「見るならこれかな」と思って見に行ったのです。苦手意識を変えてくれるかも、という期待もあったのですが、こんな歌手の出来では余計に「もういいわ」という感じです(^_^;)

まずヴィオレッタ(椿姫)のアナ・マリア・マルティネス(Ana Maria Martinez)がいただけません。絶不調と言っていいでしょう。特に1幕は酷かったです。歌うときも物凄く気合を入れている感じで見ていて疲れるし、ピッチもふらふら。そして、1幕の最後の盛り上がり部分も…なんだなんだ、この高音の不安定さは!と、ハラハラしてアリアを楽しむどころではありませんでした。こんな基本の部分でハラハラするのは「ドム・セバスティエン」初日のフィリアノティ以来だわ~と、おかしなことを思い出しているうちに、短い1幕なんかはあっという間に終~了~。2幕以降はそれなりに持ち直したと思いますが、それでもとても手放しで喝采できるような出来ではありませんでした。

え、アルフレードは?とか、「乾杯の歌」はどうだったの?とか聞かないでください(笑)何せマルティネスに輪をかけて印象が悪かったのがアルフレードのチャールズ・カストロノーヴォ(Charles Castronovo)だったのです。

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オペラ「セヴィリアの理髪師」(2) [オペラ(実演)]

1月12日追加:ラジオ放送を聞きました
スペンスの調子は予想より良くて一安心。ディドナートは生で聞いたほうが声が柔らかいですね。舞台の可笑しいシーンを思い出しながら楽しく聞きました。

<ラジオ音源より> ※直リンが駄目な方はこちら
第2幕、アルマヴィーヴァ、ロジーナ、フィガロの3重唱
リンドーロ=アルマヴィーヴァと分かって喜ぶロジーナとアルマヴィーヴァがラブラブなデュエットを歌う傍らで「早く逃げだそう」と急かすフィガロ(終わりの方の観客の爆笑は、窓にかかる梯子が外されてしまったことに対するもの)
フィナーレ


先月の21日に見に行って、とっても気に入ったコヴェント・ガーデン「セヴィリアの理髪師」にまたまた行って来ました!今回は、ロンドンの椿姫さんのお友達が行けなくなってしまったということで譲っていただいた、Upper Slipsの席での鑑賞。どんなとこかというと、こんなとこ→です。今回座ったのはその中でも一番舞台が見やすい席(赤丸)。それでも下手側を見るには乗り出さないと駄目ですが、音は抜群に良いです。まるで自室で大音量で5.1サラウンドの音源を体験しているのかと思うくらい、どの音もはっきりしっかり聞こえます。ということで、オーケストラの音としては前回よりも断然楽しめました。マーク・エルダー(Mark Elder)の指揮はちょっとゆっくりめなのですが、前回はだれてしまったところも今日はちゃんと集中できました。聞こえ方のお陰でしょうか。

この公演の演出や歌手それぞれについては前の記事を読んでいただくとしましょう(笑)やっぱり、このポップな演出はかなりツボです!どうなるか分かっているのに笑っちゃうんですよね~。とにかく、序曲が終わってから最初に出てくるフィオレッロが頭だけにょきっと登場するシーンから、笑い上戸の私は笑いっぱなしです。特に、シャツのネオンが光るフィガロの登場シーン、酔った兵士に扮したアルマヴィーヴァの匍匐前進での登場シーン、ロジーナの家具破壊のシーンは本当に可笑しい!今日もいっぱい笑いました。

途中調子を崩して、4日の公演を本当にドタキャンしたアルマヴィーヴァ役のトビー・スペンス(Toby Spence)は、今日は休養充分だからか、21日よりも絶好調、歌も演技もノリノリでした。いつもこんな感じだったら最期の大アリアも歌えるんじゃないかと思いますけど~。それにしても、収録日に調子を崩すとは…勿体無いなぁ!反対に、ロジーナ役のジョイス・ディドナート(Joyce DiDonato)は今日はちょっとお疲れ気味か、コロラトゥーラが乱れたり、高音にずれがでたりしていました。それでも勿論そこそこ聞かせてくれるのですが、21日は音階やコロラトゥーラに全く不安の無い歌唱で素晴らしかったので、ちょっとでもミスが出るとドキドキしてしまいました(^_^;)

さて、この公演、既に年末にBBC4でテレビ放映されましたが、今度は明日の19時からBBC Radio3でラジオ放送されます。今回こんなに気に入ったのに手元に音源が無くて、仕方なく去年のツナミ・ガラのキーンリーサイドの「私は街の何でも屋(Largo al Factotum)」←だけ繰り返し聞いている私には朗報です!(写真から音源にリンク。かなり軽快な、というか先走ってるフィガロです^_^;)

おそらく映像と同時収録されたものなので、アルマヴィーヴァの出来が今一の音源でしょうけど(^_^;)

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オペラ「セヴィリアの理髪師」 [オペラ(実演)]

23日イブニング・スタンダード紙の無料版に劇場ガイドの広告としてスペンス@伯爵が載っていたので追加しておきます。朝から思い出し笑いをさせてもらいました。

        
          1幕、木の上でセレナーデを歌う伯爵の図


今日はクリスマス・シーズンということでか、めずらしく平日なのにマチネ公演の「セヴィリアの理髪師(Il Barbiere di Siviglia)」を見にコヴェント・ガーデンに行ってきました。

とにかく楽しかった~!(^o^)

実は大分前に一度だけ正統的な演出の舞台映像を見ただけで、この有名なオペラを生で見るのは初めてのことでしたが、最初から最後まで笑いっぱなしの約2時間半でした。本当に久しぶりにオペラ・ブッフォを楽しめて、すっきり爽快な気分です(笑)

◇あらすじ◇

第一幕
アルマヴィーヴァ伯爵は、マドリッドで見かけたロジーナに一目惚れ、彼女の家のあるセヴィリアまで追いかけてきたが、後見人の医者バルトロの保護下にあるロジーナを見ることすらできないでいた。そこへ、旧知の機転の利く理髪師(18世紀当時は「何でも屋」)のフィガロが通りかかり、伯爵はロジーナに会えるように協力してくれるように頼む。フィガロの提案で改めて窓辺に向かって歌いかけると、窓からロジーナが顔を出し、伯爵の身の上を尋ねる手紙を落とす。伯爵は「身分や金じゃなく、自分自身を愛して欲しい」と名前と身分を偽って、貧乏学生のリンドーロと名乗る。バルトロの邪魔が入って遅々として進まない二人の仲をとりもつ見返りの金の約束を取り付けると、早速フィガロは酔った兵士に変装して、彼女の家に上がり込む作戦を提案。一方バルトロは、金目当てでロジーナの後見人から夫になるためにあの手この手で大忙し。ロジーナの音楽教師兼神父のドン・バジリオに相談して、今日中に結婚するための準備を進める。そこへ酔っ払った兵士に扮した伯爵が乱入、大騒ぎの中ロジーナと伯爵はようやく会話を交わすが、あまりの騒ぎで警備隊が登場、警備隊が逮捕しようとした兵士(伯爵)の見せた紙(身分証明)に、バルトロの家の中は更に大混乱になる。

第二幕
騒ぎが静まったころ、伯爵は今度は音楽教師ドン・バジリオの偽弟子ドン・アロンソとして、「病気」の師匠の代わりにロジーナの歌のレッスンをしにやってくる。ロジーナからの手紙を伯爵の愛人から手に入れたとロジーナに伝えて、彼女が遊ばれていたと説明するから、というドン・アロンソにすっかり騙されてレッスンをつけさせるバルトロ。途中でドン・バジリオがやってきて伯爵の大ピンチになるが、金で大人しく帰らせることに成功して難を逃れる。バルトロがロジーナのアリアで居眠りしている間に、2人は愛の言葉を語り合い、伯爵は夜中のロジーナ救出計画を説明する。夜になってドン・アロンソが存在しないことを知ったバルトロは、アロンソに化けていた伯爵から手に入れていたロジーナの手紙を見せて、リンドーロがロジーナを伯爵に渡そうとしている、と嘘をつく。バルトロの言うことをすっかり信じ込んだロジーナは、救出計画のことをバルトロに打ち明け、部屋で悲しみにくれる。真夜中に梯子でやって来た伯爵とフィガロは、実はリンドーロが伯爵だったとロジーナの誤解を解くが、熱々のカップルがもたもたしているうちに梯子が下ろされてしまって逃げ場のなくなる3人。フィガロは機転を利かせ、バルトロを探してやってきたドン・バジリオと公証人を使ってさっさと伯爵と自分の姪(実はロジーナ)を結婚させてしまう。そこへ踏み込んできたバジリオも、持参金は要らないという伯爵の言葉に大喜び、フィガロも報酬をもらって皆幸せの大団円で幕。

Il Barbiere Di Siviglia (2pc)モーツァルト作曲の「フィガロの結婚」の前の話としても有名ですが、とにかく楽しいシーンが満載の、クリスマスの浮かれた感じにぴったりのオペラです。今 回のプロダクションは新演出カラフルでポップで、センスのいい舞台と衣装がとても気に入りました!(見て無いんですけど、最近DVDになったこの映像←と少し似た雰囲気かも…)演出のテンポも良く、歌と演技のバランスも良く、スター歌手はいなくてもとっても質の高い公演だと思います。

何色ものストライプが入った箱型の舞台、おとぎ話風の月と背景、カラフルな水玉模様の椅子、半分現代、半分18世紀のデザインが融合した衣装…。まるでイギリスのおしゃれな文房具屋ペーパーチェース(Paperchase)の店内をそのまま舞台にしたかのようです(って、分かりにくい例えでごめんなさい)。特にアゴスティーノ・カヴァルカ(Agostino Cavalca)担当の衣装はなかなか工夫がしてあって面白かったです。

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オペラ「ビリー・バッド」(4) [オペラ(実演)]

Britten: Billy Budd / Hickox, Langridge, Keenlyside, et alさて、皆さん「どうせ(4)もあるでしょ」と思われていた通り、ENOの「ビリー・バッド」最終日の公演へ行ってきました。2日前に一番安い券を買おうとしたら「安い席はもう無いよ~。当日朝並んでもらえばDay seat(当日販売する席)があるけど」ということだったので、朝から並びましたとも!前日までのぬるい気候はどこへやら、極寒(といっても3度くらいですが)の中、30分ほど待って10ポンド(2000円)の席を買いました。金は無いけど体力はあるんです!とか言って(笑)でも、寒かったな~。勿論頑張って並んだ甲斐のある、素晴らしい公演でした。

この公演が最後のビリーになるキーンリーサイドは、本当に全力を注いでビリーを演じ、歌っていたと思います。ぶら下がるところも、初日は手ごろな高さのバーだったのに、最後の2公演は一番高いバーにぶら下がってましたし、いつも命綱をつけて降りていた舞台を垂直に縦断する梯子も、17日は綱無し…これって防災規定に違反してるんじゃないの?(笑)いつもどおり聞き取りやすくて表現力のある歌声も会場に気持ちよく響いて、聞かせどころはばっちりだったし、どもってしまうシーンも本当に上手い。処刑を待つ間、酒とビスケットの差し入れを持ってきたダンスカーに別れの言葉を告げた後、自分の人生にも別れを告げるのですが、それまでの独り言の静かな声とはがらりと変わった、正に迷いの吹っ切れた声で朗々と歌い上げる部分は本当に感動的でした。一応先日のラジオ中継からの音源からの抜粋はこちら。やっぱり何言っているのか分からないと魅力の無いオペラなんですねぇ(笑)

この日は観客の反応も良かったです。「フランス人は嫌いだ」がうけていたのはいつもどおりですが、クラッガートとビリーの応答、「文字は読めるか」「いえ、でも歌えます!」「歌はどうでもいい!」でもかなり笑いが起きていました。確かに、オペラにしといて「歌はどうでもいい」ってねぇ(笑)他には、クラッガートに反逆罪を問われて答弁しようとした時に言葉が出てこないシーンで、私の後ろに座っていたお姉さんが思わず「彼、どもっちゃってるよ!」と口に出して言ってました。でも、それも仕方ない。

このシーンはクラッガートの容赦無い冷酷さが出るほど効果抜群なのですが、この日はトムリンソンも絶好調。彼の轟くような低音が観客全員が「嘘」だと分かっている罪状を述べた後に響くヴィアの「ビリー・バッド、答えなさい!」という金切り声のような叫び、それまで饒舌に「艦長の近くにいられる役職にしてください」と語っていたビリーの突然の沈黙とどもり…。物凄い緊張感で、後ろのお姉さんだけじゃなくて私の周囲の観客達は皆どうなることかとハラハラしながら状況を見ていました。って、やっぱりこれはオペラじゃなくて音楽付き劇じゃないか(笑)英語で演技のできる歌手を揃えないとさぞかし退屈なことでしょうねぇ。

ロビンソンはちょっとお疲れか、声は高音部が時々苦しそうでしたけど、なよっちいヴィアを最後まで好演していたと思います。クラッガートの追求にどもってしまったビリーに対して「ゆっくり、ゆっくり」と声をかける時や、裁判で助けを求めるビリーの方を振り返れない時、最後に「きらめく星のヴィア、神のご加護を!」と言われてはっと振り返る時の表情の表現力が素晴らしいです。


さて、クラッガート、ビリーとくれば最後はエドワード=フェアファックスヴィアの視点から見た「ビリー・バッド」ということになるんですけど、この人、この3人の中では一番「普通」の人ですね。第一出番も少ないし、全体的に語るような旋律が多いから演技の出来ない歌手だとガックリだと思います。「悪」として生きることしかできないクラッガートと、余りにも純粋すぎる(天然すぎる?^_^;)ビリーの2人に挟まれて頭を悩ませる一般常識人というのが私の印象です。でもヴィアは艦長だからこの戦艦上社会の統治者でもあるわけで、彼の決定が制度上は絶対的である点が他の船員達と違うところ。生真面目な彼がビリーの生死決定権を持っていたというのは彼にとって不幸以外の何でもないと思います。

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オペラ「ビリー・バッド」(3) [オペラ(実演)]

さて、今日も(笑)行ってきました、ENOの「ビリー・バッド」。今日はわざわざパリとブリュッセルからやってきたオペラファンのおじさんたち2人と、イギリス人の劇場ファンの4人で開演前からワイン片手にオペラ話で大盛り上がり!外から見たら変な団体だっただろうな(笑)

今回は短い期間で3度目ということでいい加減話の展開も頭に入ってきたし、聞き取りにくい!と文句を言っている歌詞もほぼ聞き取れるようになりました。更に、今回の座席は最前列ということで、歌手の表情もはっきり見えてかなり理解度が深まった気がします。3度目にして、ようやくオペラ自体に感動しました。このオペラ、歌詞が聞き取れないと感動半減ですね。ってことは、音楽自体に力が無いってこと?(^_^;)

前回はクラッガートの視点で見たので、今回はビリーの視点で見てみたのですが、改めてビリーって精神的にガキだな~と思いました。だからキーンリーサイドは17歳の年齢設定にしているんでしょうけど、それにしても世間をしらなすぎる。最初に連れてこられて名前や素性を聞かれている間も、最初はそわそわしているのに脇に控えている仕官の気をつけの姿勢を真似して既に乗組員を気取ってみたり、役職が決まったとたんに待ちきれないように梯子を駆け上ったりするところも興奮しているガキそのもの(笑)

とにかく、退屈だった以前の生活に比べて、下っ端とはいえ軍艦での緊張感とやりがいのある仕事をもらえて前途洋洋、いっぱい友達も出来たし、「きらめく星のヴィア」艦長に気に入ってもらえるように頑張るぞ!何だか唯一年下のノヴィスって奴が反乱のリーダーになってほしいとかなんとかいってきたけどちゃんと断ったし、一生懸命働いてるからもうすぐに昇進できるはず!どうせなら艦長の近くにいる役職が良いなぁ~楽しみだな~というプラスの方向にしか意識が行かないんですよね。だから艦長に呼ばれた時もすっ飛んできて(ここは本当に階段を3段抜かしくらいで駆け上がってました)「分かってます!昇進の話ですよね!」と大喜びな訳です。「違う話」と言われても、クラッガートが実際にビリーの反逆罪に言及するまで、自分が危険な状況に置かれているなんて全く気づいていないんですから、はっきり言って鈍感すぎ

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オペラ「ビリー・バッド」(2) [オペラ(実演)]

連日大入りのENOの「ビリー・バッド」へまた行ってきました。批評も良いのがいっぱい出ましたからね~。お陰でバーは混みまくって身動きが取れませんが、ENOは席が埋まってくれて嬉しいことでしょう。前回は上手側、今回は下手側で見たのですが、この演出は下手から見るのが良さそうです。今回の方が全体として演出を楽しめました。

今回は遊び疲れからか頭痛が酷かったので頭痛薬を飲んで行ったらば、眠くて眠くて大変でした(笑)特に上官たちのおしゃべりとか、最後のヴィアのシーンは…記憶飛んでます(^_^;)やっぱりオペラ全体としては好みじゃないし、盛り上がりもいまいち無いし、苦手ですね~。なんで後1枚チケット持ってるんでしょうか、私(笑)でも、今回自分に合った見方を発見したので、次回はもっと楽しめると思います。それはクラッガートの視点で見てみること。よく考えれば、ミュージカル「レ・ミゼラブル」でもジャン・バルジャンよりはジャベール警部の方が感情移入しやすい私ですから、最初からクラッガートの立場で考えてみるべきだったのでしょう(笑)

今回の演出は、クラッガートの出てくる場面は全体的に「暗い」です。照明も絞って、ソロの部分なんてクラッガート以外は闇の中だったりして、トムリンソンの迫力のある声と合わさると怖さ満点!前回はこの演出が彼の「悪」としての性格を強調しているように思ったのですが、今回は彼の「強迫観念」や「孤独感」を感じました。

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オペラ「ビリー・バッド」 [オペラ(実演)]

早速初日の批評が出たので、写真とリンクを追加しました。舞台写真は、ぶらさがってるのがガーディアン紙から、他がmusicOMH.comからです。それにしても、結構な数の批評家が「同性愛嗜好的」な演出って書いてますが、個人的にはそんな騒ぐほどに感じなかったんですけど…演劇でもっとあけすけなのを見慣れているからかな?星は3つから4つですね。キーンリーサイドは概ね好評、トムリンソンとロビンソンは評価が割れてますが、公演全体としてはほぼ良い評価がでています。※12月6日更に批評追加。批評についてる写真が殆ど動きまくってるビリーの1シーンというのが笑います。写真家も撮りがいのある被写体でしょうね(笑)


◆ネット上で読める批評と舞台写真◆

ガーディアン紙(☆☆☆☆)写真有
タイムズ紙(☆☆☆☆)
musicOMH.com(☆☆☆)写真有
テレグラフ紙写真有
インディペンデント紙(☆☆☆)
ファイナンシャル・タイムズ紙
Online Review London
Music & Vision写真多数・各ページ左下のContinue>>で次ページへ
The Stage Online写真有
Seen & Heard写真有


今日からいよいよ今年のオペラ鑑賞の最後を締めくくる演目、イングリッシュ・ナショナル・オペラ(English National Opera)「ビリー・バッド(Billy Budd)」が始まりました。このブログではフライヤー→を散々馬鹿にしていましたが、いつになく豪華なキャストを揃えているし、元々英語のオペラ公演の初日ということで満席かと思いきや、バルコニー(最上階)席は空席もちらほら…でも、普段よりは埋まっていたようです。

あらすじ:後日アップします

まずは演出から。今回は初日だし、私はこのオペラを生で見るのは初めてだし、どうせ良い席は残ってないだろうし、と思ってバルコニー席で節約&舞台全体を見ることにしたのですが、とりあえずこの選択は正解でした。舞台の中央に長方形の巨大な上下動する板があって、それに高さの違う階段をつけたり外したり、板を斜めにしたり、高くしたり低くしたりして場面転換するのですが、はっきり言って、これ1階席からだと首が痛くなると思います。ヴィア船長の部屋とか、かなり高い位置で止めていたし、傾いた状態でぐるぐる回転したりするし、そこだけ見てたらなかなか工夫していて面白かったんですけどね~。いかんせん、それ以外の舞台スペースがガラ~ンとしている場面が多かったのは残念です。タダでさえ男しかでて来ない重たいオペラなので、退屈なシーンは寝ちゃいそうでしたから(^_^;)衣装は結構しっかり軍服作って、まじめに階級別に分けていたと思います。余り詳しくないから良く分かりませんけど。ビリーもその他の船員と分け隔てない、ふつ~の格好しています。2000年のコヴェント・ガーデンの演出では舞台上で絞首刑を行ったそうですが、今回は下手の袖から刑の様子がライトで照らされるようになっていました。それでも刑の直前の'Starry Vere, God bless you!'までビリーが舞台上にいるので、言われてビリーの方をはっと振り向くヴィアとビリーの目線が交差するのが印象的ですね。個人的にこの演出で一番印象的だったのは、ビリーにクラッガート殺害の判決が言い渡される場でした。「船長助けてください!」とビリーがヴィアに訴えかけるシーンで、ヴィアに駆け寄るビリーを士官達が無理やり押さえつけて、そのまま部屋の外に放り出す(ビリーは階段の下へ転がり落ちます)所は、部屋から放り出されたビリーの呆然とした顔まで含めて物凄いリアリティでした。もう、ビリーが可哀想で可哀想で。このシーン、ヴィアが無言でいるのがビリーには余計にきついですね。ここで「お前は有罪だ」とか、「命令に従うように」とか言えないヴィアはやっぱり卑怯だなぁ。映像でもCDでも「ヴィアのこういった部分ってむかつく」と思っていたのですが、それは生でも感じちゃいましたね(^_^;)個人的には「きらめく星のヴィア」よりもクラッガートの方がよっぽど人間として逃げ道の無い生き方をしていて潔いと思います。と、そんなことは置いといて。

歌手は、とにかく主役3人が素晴らしいです。ビリーサイモン・キーンリーサイド(Simon Keenlyside)は「ここ2、3年オファーすら来なかったから、自分はもうビリーには年取りすぎてる」ので、これが最後のビリーだと公演前に宣言しているのですが、あの~舞台上ではむっちゃ若く見えるんですけど…(^_^;)席が遠かったからかな。歌の方は全く心配してませんでしたが、正に適材適所ですねぇ。状況に応じた声のトーンの使い分けが物凄く細かくて、歌っているというより語っているような印象を受ける場面もいっぱいありました。こういうところが好きなんですけどね!文字通り舞台を跳ね回る、軍艦の乗組員になれて興奮している17歳の少年って感じでした。細かい仕草がいちいち「ビリー」なんですよ。仲間とじゃれあってたり、寝言を言いながらノヴィスを足で退けてまた寝ようとしたり(笑)、ヴィアに呼ばれて「今は昇進の話じゃない」と言われた後、「分かりました」と口では言いつつ思いっきりがっかりした(もしくは「一人で盛り上がっちゃってオレってカッコ悪い~」という)顔をしたり、本当に生き生きとしたキャラ作りでした。メモ欄で紹介した'In Tune'でも「やり過ぎは馬鹿みたいだけど、役として要求される程度は動けるようにすべき」と言っている通り、期待を裏切らずに動きまくってくれました。階段を2段抜かしで駆け上がる、舞台を垂直に横切る梯子を滑り降りる、舞台の端から端まで走り抜ける、訳の分からないところから階段に飛び乗ってくる、階段から転がり落ちる、上述の長方形の下についているバーに飛びついたかと思うと片手片足でぶら下がって歌う↓…まあ、とにかく元気いっぱいでした。あ、期待を裏切らないといえば、今回も1幕の後半はずっと半裸だったなぁ(笑)本人も堅苦しい衣装を着なくて済んで嬉しいことでしょう。

       
                     …猿ですか?

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