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オペラ「スティッフェリオ」 [オペラ(実演)]

ロイヤル・オペラハウスのヴェルディのオペラ「スティッフェリオ(Stiffelio) 」の公演は、前回公演(12年前)でハウスデビューだったホセ・クーラ(Jose Cura)が再びスティッフェリオ役を歌うということが唯一の話題ともいえる公演でした。オペラ自体があまり有名ではないので、のんびり当日券でも買って見ようかと思っていたところ、またまたロンドンの椿姫さんから格安&音響最高のチケットを譲っていただいたのでした。ありがとうございました。

あらすじを簡単に書くと…熱心なプロテスタントの牧師スティッフェリオは、他人の不倫に関しては「広い心で許せ」などと説教をしておきながら自分の妻リーナが浮気をしたと知って大激怒。浮気相手を探し出して殺そうとするが、結局は妻の父スタンカーが家の名誉をかけて間男を殺害する。妻の「愛しているのはあなただけ」という訴えも聞かずスティッフェリオは離婚するが、後に教会にやってきた元妻を許して幕。

より詳しいあらすじや写真などはdognorahさんの記事と、ロンドンの椿姫さんの記事と、りょーさんの記事(ラジオ音源有)を参考にしてください。珍しく?悩み苦しむテノールが主役で聞けるオペラです(笑)

この演出はホセ・カレーラス(Jose Carreras)のスティッフェリオで映像になっているようですが、私はメトロポリタン・オペラの演出しか見たことがありませんでした。ストーリー展開には無理はないけれど、ツッコミどころはあっても誰にも感情移入できないオペラだな~というのが正直な感想でした。今回実演で見ても、ぜひまた見たい!と思うような作品ではありませんでしたね(^_^;)元々昼ドラが苦手なので、不倫とか三角関係とかねちねちした感情の渦巻くシリアスな話はどんなものでも好きになれないんです…。ただ、この演出は良く作りこまれているし、音楽としては悪くないと思います。それぞれのアリアもなかなかですが、重唱がどれも素晴らしく、特に最後の合唱部分で繰り返される「ペルドナーター(許したまえ)」は耳に残ります。

ということでオペラ自体には興味が沸きませんでしたが、今回は声の大きな歌手が揃っていてガンガンに響くヴェルディの音楽を聞けたのは面白かったです。スティッフェリオ役のクーラはいつもより更に声を暗くして歌っていたように感じました。アリアを歌うというよりも台詞を喋るように歌っていたので、何を言っているのか字幕を見なくてもよく分かりました。ありがたいことです。鍵をいとも簡単にこじ開けたりと、牧師にしては体育会系すぎな気もしましたが、クーラの外見から考えるとあれくらい爆発するほうが信憑性はあるかもしれません。

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オペラ「ラクメ」 [オペラ(実演)]

久しぶりにオペラを見てきました。演目はレオ・ドリーブ(Leo Delibes)「ラクメ(Lakme)」。スロヴェニアのマリボール歌劇場の来日公演ですが、今注目のコロラトゥーラ・ソプラノのデジレ・ランカトーレ(Desirre Rancatore)が主役のラクメを歌うという以外全く知識の無いまま見に行きました。

あらすじ:19世紀大英帝国支配下のインド。帝国の支配に反発するバラモン教の司祭ニラカンタの娘で巫女のラクメは、ある日寺院の聖域に侵入してきたイギリス軍人ジェラルドに一目ぼれしてしまうが、父に見つかる前に彼を逃がす。一方、ジェラルドも婚約者がありながらラクメの美しさの虜になってしまう。聖域を汚したイギリス人を許せないニラカンタは、街の市場でラクメを歌わせて、その歌に導かれて姿を現したジェラルドを刺す。重傷を負ったジェラルドだったが、ラクメが森の中にかくまって献身的に介護したおかげで意識を取り戻す。これからは二人だけで暮らしていくことにして、ラクメが結婚の誓いの聖杯に入れる水を汲みに行っている間にジェラルドの友人フェルナンドが隠れ家に現れて「婚約者がいることと軍人としての義務を忘れるな」と忠告していく。その言葉で元のイギリス軍人としての意識を取り戻したジェラルドは、泉から戻ってきたラクメに以前ほどの魅力を感じなくなっていた。ジェラルドの心変わりに気付いたラクメは、もはや生きている意味が無いと猛毒の花を噛み、彼女の異変に気付いたジェラルドはその必死の望みどおり聖杯を交わす。そこへニラカンタが踏み込んできてジェラルドを殺そうとするが、ラクメが「彼が聖域を侵した罪は、聖杯を交わした私の命で償います」と言い残して死んでいく。嘆き悲しむジェラルドの横でニラカンタが「ラクメは永遠の命を得た!」と叫ぶ中、幕。

あはは~もう、この頃(19世紀末)のヨーロッパのオリエンタリズム満載のストーリーですね(^_^;)細かいところにツッコミを入れ始めるとキリがありませんが、あらすじでバラモン教となっているのはヒンドゥー教のことのようです。元々ヒンドゥー教はバラモン教(紀元10世紀ごろには消滅)から派生していますし、司祭のことをバラモンと呼ぶので混合したのでしょうか。とにかく、このオペラに登場する神様はブラフマー、ドゥルガー、シヴァ、ヴィシュヌ、ガネーシャなどのヒンドゥー教の神々で、特にブラフマー(ヒンドゥー教の最高神、三神一体の内の宇宙創造を司る神)は最高神として、ガネーシャ(象の頭を持つ財産の神)はニラカンタの僧院の主神として、ドゥルガー(10本の手を持つ戦闘女神、ライオンに乗っている)は街で催行されるお祭りの主神として何度も登場します。これから東京公演を見に行かれる方はバラモン教とヒンドゥー教の関係と、大英帝国統治下のインドについて少し知識を入れておくと良いかもしれません。オペラの中のバラモン教(笑)は実際のヒンドゥー教とは微妙に違っていますが、そういう基礎知識があるとないとでは楽しめる要素がかなり違ってくると思います。

Wikipediaヒンドゥー教ヒンドゥー教の神の項はとても便利です。
東京グランドクラシックス名古屋公演のサイト東京公演のサイトでは、演出や歌手の解説や舞台写真と動画も見られます。

実際のオペラを見ての感想ですが、やはり耳に残るのはオペラハイライトCDやリサイタルなどで聞くことも多い「花の2重唱」「鐘の唄」ですね。

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オペラ「ドン・パスクワーレ」 [オペラ(実演)]

ちょっと前の話になってしまいましたが、コヴェント・ガーデン2005-2006シーズン最後の演目「ドン・パスクワーレ(Don Pasquale)」(ドニゼッティ作曲)を着物で見てきました。前回、というか1週間前までは快適な気温だったロンドンもこの日は非常に暑く、最高気温34度というような異常事態。それでも折角の機会なので大汗をかきつつ出かけました。それにしても、あのサウナ状態のロンドンの地下鉄にクーラーがつくのは2009年とか言ってますが、そんな呑気なことで大丈夫なんでしょうかねぇ。

あらすじ:資産家の老人ドン・パスクワーレは甥のエルネストと若くて貞淑な女性を結婚させ、自分の財産を相続させようとしているが、エルネストは未亡人のノリーナと相思相愛なのでそんな女性を結婚するつもりはない、と縁談を断る。それを聞いたドン・パスクワーレは、ならば自分がその女性と結婚し、新しく出来た子に遺産の全てを渡すと宣言、居候していたエルネストを無一文で追い出してしまう。失意のエルネストから別れの手紙を受け取って動揺するノリーナだが、2人の友人でドン・パスクワーレの侍医でもあるマラテスタの計画にのって、「若くて貞淑で世間知らずの妹」を演じてドン・パスクワーレの花嫁となることにする。しおらしい花嫁に大喜びのドン・パスクワーレだったが、結婚証明書にサインした途端に豹変し、我が物顔に振舞う花嫁に仰天、結婚を後悔し始める。膨大な金額の請求書、平手打ち、更には愛人の発覚でついに離婚を決意したドン・パスクワーレは相談相手のマラテスタと一緒に花嫁と男が夜の庭で密会している場面に飛び出し、金目当ての花嫁との離婚と、エルネストとノリーナを結婚させて遺産を相続させることを宣言する。そこへ物陰に隠れて様子を伺っていたエルネストが登場、花嫁がノリーナだと暴露し、ドン・パスクワーレは自分が騙されていたことを知るが、広い心で皆を許し若いカップルを祝福する。

暑い日にもかかわらず、この演出での歌手達は白塗りに分厚いコートの見るからに暑そうな衣装!舞台いっぱいに作られた「家」を駆け回って大騒ぎで大変そうでした。初演ではフローレスがエルネストでしたが、今回はそこまでの有名歌手は登場しません。しかもシーズン最後ということでチケットは余りまくっていたようですが、全体的に演技も歌もレベルの高い歌手達にいっぱい笑わせてもらいました。この演出では、パスクワーレじいさんの家が3階建てのドールズ・ハウスつまり人形の家になっていて、登場人物は皆人形の格好をしています。居候エルネストの部屋は3階の屋根裏部屋、2階にパスクワーレの書斎と寝室、1階がキッチンと玄関となっています。更に舞台の床は巨大な市松模様(ドールズ・ハウスが置かれている家の床という設定)でしたし、舞台前方にはこのドールズ・ハウスの鍵が転がっているなど、歌手達が人形に見えるように色々と工夫してある演出でした。

喜劇オペラですから、面白くなかったら寝ちゃうかも~と思っていましたが、そんな考えは杞憂でした。いっぱい登場する召使達は家中で盗み聞きするし、マラテスタはパスクワーレとの用事を済ませた後キッチンでつまみ食いするし、パスクワーレはまだまだ若い!と変な体操するし、ノリーナの買いあさる商品はヴェルサーチにグッチにシャネル…というように次々と小ネタが飛び出してきて、幕が上がってからずっと笑いっぱなしでした。特にパスクワーレとマラテスタのコンビが息ぴったりで、パスクワーレのふかふかベッドに2人でぴょん!と飛び乗ったり、エルネストに家を譲ったパスクワーレが巨大な鍵をよっこらせ、と持ち上げて、「それは届かないでしょう~?」と身振りで示すマラテスタを踏み台にしてドールズ・ハウス2階部分にある鍵穴に差し込もうとしたりして最後まで楽しませてくれました。

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PROMS 2006-Prom2 モーツァルトのオペラ特集 [オペラ(実演)]

いよいよ金曜日から始まった夏のクラシック音楽の祭典、プロムス(Proms)に早速行ってきました。プログラム内容はモーツァルトのオペラ特集!去年と同様、当日立ち見券を買ったのですが、値上がりして5ポンドになってました。日本円だと約1000円なのでそれでも安いといえば安いのですが、最近のロンドンのインフレ率は物凄いですね。

プログラム前半はモーツァルト初期のオペラからアリア特集、後半は人気の後期オペラからアリア・名場面集という感じの構成になっていて、チャイナ服のおじさんことロジャー・ノリントン(Roger Norrington)の指揮、演奏はスコティッシュ・チェンバー・オーケストラ(Scottish Chamber Orchestra)でした。歌手達は皆正装で、特に演出などは無さそうでしたが、オーケストラの前にスペースがつくってあって、そこでかなり自由に動き回って歌っていました。

それぞれの曲を演奏する前に、サーの称号を疑いたくなるほどオチャメなおじさんノリントンのMCが入るのですが、これが可笑しいの何の。こんな解説付ならオペラ初心者でも楽しめること間違い無しです。でも演奏自体はいたって真面目で、「できる限りモーツァルトの時代の奏法にこだわっている」ノリントンらしい、ビブラートをかけない奏法を使ったかなりアップテンポなものでした。今回ピリオド楽器だったのはホルン、トランペット、ティンパニだけでしたが、それだけでもかなり音が変わってきて新鮮でした。

「イドメネオ」のバレエ音楽で始まった前半は、「ポントの王ミトリダーテ」「ツァイーデ」「ルチオ・シッラ」からのアリアと「後宮からの逃走」の2幕フィナーレが演奏されました。この中のハイライトは、やっぱり「後宮からの逃走」の素晴らしい重唱だったと思います。ベルモンテを歌ったイアン・ボストリッジ(Ian Bostridge)よりも、従者のベンジャミン・ヒューレット(Benjamin Hulett)の自然な演技が好印象でした。他は、美しいけれどただそれだけといった印象のイタリア語オペラのアリアに比べて、サイモン・キーンリーサイド(Simon Keenlyside)が楽譜を見ながら歌った「ツァイーデ」の'Nur mutig, mein Herze'はやっぱりカッコイイし力強い旋律が耳に残りました。でも、CDにも入れたんだから歌詞くらい覚えてきてよ(^_^;)

後半は有名オペラがずらり。大好きな「皇帝ティートの慈悲」前奏曲、「ドン・ジョヴァンニ」ドン・オッターヴィオのアリア'Dalla sua pace'、「フィガロの結婚」第3幕'Hai gia vinta la causa'+訴訟の場面、「魔笛」パミーナのアリア'Ach, Ich fuehl's'、「ドン・ジョヴァンニ」フィナーレと、正に名曲、名場面揃いです。

当然オッターヴィオはボストリッジで、退屈な美しいアリアをしっとりと歌っていました。私はどうも彼の声質が好きじゃないのですが、とっても紳士的なオッターヴィオで、会場からはブラボーの声もあがりました。ですが、この日のハイライトはこの後の「フィガロの結婚」と「ドン・ジョヴァンニ」だったと思います。

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オペラ「ツァイーデ」 [オペラ(実演)]

モーツァルト未完のオペラ「ツァイーデ(Zaide)」を、セミ・ステージ形式とはいえピーター・セラーズ(Peter Sellars)が演出するということを知って、急遽聞きにいってきました。会場は、ロンドンでセミ・ステージオペラといえば、のバービカン(The Barbican)です。

あらすじ:ソリマン(大守)の捕虜ゴマツはソリマンのお気にいりの侍女ツァイーデと恋に落ち、大守の部下のアラツィムの力を借りてムスリムに変装して領地から逃げだすが、大守の手下オスマンによって捕らえられてしまう。逆上した大守はアラツィムの非難を受けつつも二人の死刑を宣告するが、ツァイーデとゴマツは逆らわずに静かに死後の平安を神に祈る。(未完)

演出の時代設定は現代でした(まあ、セラーズですからね)。そしてテーマはずばり奴隷制度。ソリマンはアフリカの奴隷主で、オスマン以外は皆劣悪な環境で長時間労働に使役されて寝袋で雑魚寝する奴隷という設定です。ツァイーデはアジア人、キリスト教徒のゴマツも黒人が演じるということで、白人が一人も登場しない構成が新鮮でした。

遠い国のおとぎ話にしないで、現代社会の暗黒面を鮮烈に描きだす所は流石セラーズといったところでしょう。モーツァルトがどこまで真剣に奴隷制度や人権というテーマを考えていたか誰も分かりませんが、このツァイーデに関しては、登場人物達それぞれの本音や心の動きを見事に表現する音楽だったと思います。どのアリアも説得力があって、音楽としてもかっこよくて名曲ばかり。後の「後宮からの逃走」や「魔笛」などで聞くことができるモーツァルト独特の調子もあちこちに登場してきます。日の目を見なかったとはいえ、気合いをいれて作曲しただけのことはありますね。

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オペラ「アーサー王」 [オペラ(実演)]

前回「アリオダンテ」でちょっと見直したENOにまた行ってきてしまいました。見てきたのはヘンリー・パーセル(Henry Purcell)「アーサー王(King Arthur)」です。17世紀末に作曲されたこの英語のオペラ、本来は歌と語りとダンスと音楽が含まれている作品だそうですが、今回は台詞はカットされていて、休憩含めて2時間弱という短い作品でしたが、とても楽しかったです。

               

台詞が無いので当然話が飛び飛びになって展開が良く理解できないのですが、それでも興味をひかれたのは、マーク・モリス(Mark Morris)の演出だからです。バロック・オペラにモダンダンスを組み合わせるのは最近の流行ですが、この演出もその枠に入るでしょう。時代を全く無視した演出だったので見終わった今でもどんな話なのかよく分からないのですが(笑)、耳に心地良い音楽と目に楽しいダンスが両方楽しめたので、これは分からなくてもいいような気がします。とりあえず、アーサー王の率いるブリトン系とサクソン系の闘いが基にあって、サクソン側に拐われたアーサーの婚約者を奪回しにいく途中様々な障害にでくわす話とか何とからしいです。

演出の時代設定は現代ということですが、最初は半分現代、半分時代の衣装(というか普段着に鎧とか、ジャージに貴族のかつらとか)でしたが、次第にダンサーはマリン・ルック、歌手達はタキシードやドレス姿に変わっていきます。第4、5幕は船もしくは港の設定のようでした。歌手達にもちょっとした手の動きやステップ等が振り付けられていましたが、やはり圧巻はダンサー達。

とにかくソリストの歌手達が歌っている間、マーク・モリス・ダンス・カンパニーのダンサー達が舞台狭しと踊りまくります。「笑う」と歌えば笑い、「踊る」と歌えば踊り、「がぶ飲みする」と歌えば次々とグラスを空け、「飛ぶ」と歌えば腕をパタパタさせ、「侵略」と歌えば戦闘体勢になり、とかなり分かり易いものでした。あまりにも歌詞と動きが一致していてつい笑ってしまう部分もありましたが、全体的にはそれをグループ分けしたり時間差で踊らせたりする、かなりスマートな印象の振り付けでした。第4幕では間奏曲にあわせて本格的なメイポール・ダンスを披露してくれて、これが見れただけでもかなり得した気分です(^^)

この公演で一番気に入ったのは、「アーサー王」というテーマの重厚さを現代の若者文化で解体してしまったところです(おかげでストーリーは分かり辛いですが)。

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オペラ『トスカ』 [オペラ(実演)]

今回の渡英最大の目玉のひとつ、コヴェント・ガーデンの新演出の『トスカ』へようやく行ってきました。初日を歌ったあと2回休演したマルチェロ・アルヴァレス(Marcelo Alvarez)も元気に登場、久しぶりにイタリアオペラを見た!という満足感で満たしてくれる公演でした。

私は有名な旧演出(ゼッフィレッリ)を見ていないので、正統的な演出を素直に楽しめました。教会の場面は2階構造で一段高くなった奥が身廊、手前が聖域になっていて、マグダラのマリアの絵の位置や階段の使いかたも面白かったです。処刑場も観客に向かって発砲する形ですが、処刑の進行や話の流れなどは正統的なもの。音楽の盛り上がりとよく合っていて感動的でした。演出で唯一気に入らなかったのは、スカルピアの執務室。全体的に暗いトーンで、舞台奥は一面の本棚になっているのですが棚は空っぽ。中央には巨大な大理石の天使ミカエル像がドドーンとくっついてますが、スカルピアの机は折り畳み式のちゃちなもので、書類が散らかり放題です。こんな所で仕事できるの?っていうくらい廃墟のようなセットなのは何故なんでしょう??

歌手は文句ありません。痩せて美人に戻った(笑)アンジェラ・ゲオルギュー(Angela Georgieu)はトスカにぴったり。声もよくでていたし、元気のいいトスカを熱演していました。スカルピアを刺すシーンでは勢い余ってナイフを折ってしまったほど!まあ、ブリン・ターフェル(Bryn Terfel)が相手ですからそれくらいしないと本当に襲われちゃいますけど…。そのターフェルのスカルピアは、ぱっと見どこかの海賊の船長のようです(笑)

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オペラ『アリオダンテ』 [オペラ(実演)]

今回の滞在では全く行く気のなかった英語専門オペラハウスのENOなんですが、フライヤーを見たら去年バイエルン国立歌劇場が日本にもってきたデヴィッド・オールデン(David Alden)演出の『アリオダンテ』をやるじゃないですか。歌手も若手中心で良さそうだし、実際に評価もいいようなので、当日券で最終日に行ってきました。

あらすじはシェイクスピアの『恋の空騒ぎ』をもとにしたもので、舞台はスコットランド。王女ジネヴラと恋仲の騎士アリオダンテは結婚式を挙げることになるが、王位とジネヴラを狙うポリネッソの策略でジネヴラらしき女性(侍女ダリンダの変装)がポリネッソを誘いこむのを見たアリオダンテは絶望のあまり海に身をなげ、アリオダンテの弟ルルカーニオはジネヴラの不実を王に訴える。王はジネヴラと絶縁し、濡衣を着せられたジネヴラは深い悲しみに沈む。奇跡的に命をとりとめたアリオダンテはポリネッソに捨てられたダリンダと偶然出会い、事件の真実を知ってジネヴラの元へと帰る。結局ポリネッソはルルカーニオのとの決闘に敗れて命を落とし、直後に帰ってきたアリオダンテとダリンダが事情を説明してジネヴラも許されて、アリオダンテとジネヴラ、ルルカーニオとダリンダがそれぞれ結ばれて大団円。

この公演、とにかく素晴らしかったのは歌手達でした。アリオダンテを歌ったアリス・クーテ(Alice Coote)←は細いしカッコイイし声も男前だし、もちろん技術も完璧で素晴らしいの一言です。まるで宝塚の男役スターみたいでした。ジネヴラはコヴェント・ガーデンでも御馴染みレベッカ・エヴァンズ(Rebecca Evans)、彼女はちょっとポッチャリさんですが、声は文句なし。色々変な動きをさせられてましたが、しっかり歌いきっていたと思います。日本ではカウンターテナーが歌ったポリネッソはパトリシア・バードン(Patricia Bardon)というメゾ・ソプラノでした。ヘンデルのオペラで活躍しているという彼女は初めて聞く歌手でしたが、元々カストラートのための役をしっかりした声で苦もなく歌い、嫌らしい演技もなかなかうまくてビックリしました。侍女のダリンダは黒いドレスがよく似合うサラ・ティナン(Sarah Tynan)。彼女は細めのソプラノが綺麗で、演技もうまくて好印象でした。

男性はルルカーニオのポール・ニロン(Paul Nilon)は、まあまあ合格のテノール歌手ですが、王を歌ったバスのピーター・ローズ(Peter Rose)は歌唱技術も演技も堪能しました。大柄なのでドタバタするのが難点でしょうか。それにしても、装飾音やらコロラトゥーラやらがてんこ盛りのうえに、それを英語で歌ってしまう歌手達は本当に凄いですね(^^)

大満足だった歌手陣にくらべて、演出は残念ながらあまりピンとくるものではありませんでした

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着物でオペラ [オペラ(実演)]

今回のロンドン滞在で初めての劇場通いは、18日の着物でのオペラ観賞となりました。姿勢にも気合が入るからか、いつもよりぐっと真剣にオペラを聞けたような気がします(笑)

今回行ったのはロイヤル・オペラではなく、クラシカル・オペラ・カンパニー(The Classical Opera Company)という若手歌手と古楽器オーケストラを使うオペラカンパニーの公演でした。会場もコンパクトなサドラーズ・ウェルズ(Sadler's Wells)なので一番安い15ポンドの席で舞台も音楽も充分楽しめます。

しかし、今回の演目は個人的にモーツァルトのオペラのなかで一番苦手な『コジ・ファン・トゥッテ』!開演前は、せっかく着物で来たのに途中寝ないかしらと変なことを心配していましたが、工夫された演出のお蔭でしっかり楽しむことができました。

指揮者も兼ねるイアン・ペイジ(Ian Page)の演出は、舞台の真ん中に金のプロセニアム(額縁)で囲まれた小さな四角いステージを置き、その周りのスペースに衣装や小道具やスタッフを配置しているシンプルなもの。勿論ボートは出てこないし、庭の場面も安い作り物の植木がいくつか四角い舞台上に運ばれてくるだけですが、中々話が進まない上に時代錯誤な女性蔑視的言動の多いこの作品には、この演出は大当たり!だったと思います。

とにかく四角いステージの上ではオペラをキッチリ上演していきますが、一旦そのステージをおりると歌手もスタッフもごく普通の人間になるのです。フェッランドがアリアを歌っている間暇なグリエルモがステージをおりてバナナ食べたり、急な代役という設定らしいデスピーナが出番直前にあたふたと衣装をつけてもらっていたり、出番じゃない歌手同士が舞台後方でだべっていたり、というように舞台裏も『見せる』演出でした。それもただ単におふざけばかり見せるのではなく、最後の仲直りに納得がいかないグリエルモ役の歌手が照明の動きからはずれて、ステージの外でこんなのやってられん!という態度をとっているのをドン・アルフォンソが無理矢理連れ戻したり、かなり興味深い解釈をしている部分もありました。

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オペラ「フィガロの結婚」 [オペラ(実演)]

さて、既にかなり前の話になってしまいましたけど、今回帰国する直前の2月2日にコヴェント・ガーデンで絶賛公演中の「フィガロの結婚(Le Nozze di Figaro)」を見てきました。個人的に、デヴィッド・マクヴィカー(David McVicar)の演出に、エルヴィン・シュロット(Erwin Schrott)のフィガロ、ジェラルド・フィンリー(Gerald Finley)のアルマヴィーヴァ伯爵、ドロテア・レシュマン(Dorothea Roeschmann)の伯爵夫人というだけで、見る前から大興奮でした。あらすじは、書いたらそれだけで記事が終わりそうなので省略です。

まずは演出ですが、このフィガロは床屋じゃありません(笑)フィガロもスザンナも、いっぱいいる使用人のうちの2人で、衣装も待遇も特別なところはありませんでした。序曲が始まると同時に、舞台は18世紀半ばのスペインなのに1830年代のフランス風のお屋敷の朝が始まります(時代進みすぎじゃん!というツッコミはおいといて^_^;)。幕が上がると早速召使いたちがぞろぞろと登場、上手に並ぶ大きな窓を曲の盛り上がりに合わせて順番に開けていきます。その後、召使いは朝礼(身だしなみチェック)を終えて朝の掃除、女中たちは洗濯物籠をいくつも運びます。その間もカップル同士が投げキスやウインクで合図しあったり、召使い仲間たちで今日結婚するフィガロのズボンを下げていたずらしたり、使用人頭がそれをたしなめたり、最初から目が離せません。序曲が終わると同時に、フィガロの部屋が下手から音も無く出てきて、伯爵家の広間はあっという間に半分物置状態の新婚カップルの部屋へ様変わり。このとき、上手と部屋の裏に「廊下」を確保していて、カップルの熱々ぶりやマルチェリーナとスザンナの口喧嘩を仲間たちが覗き見している様子も見れて、二重に可笑しかったです。

しかし、この日の席はいつもより近いけれど見切れ席。最上階(Amphitheatre)の2列目最下手席ということで、舞台の左半分は全く見えません。更に運の悪いことに、フィガロの部屋は舞台下手…ということは、演技も楽しみなマクヴィカーの演出なのに、1幕は殆ど何も見えませんでした(T_T)それでも、スザンナ「伯爵に狙われてるのよ!」、フィガロ「伯爵、調子にのりすぎちゃいけないぜ!」、スザンナとマルチェリーナ「伯爵のお気に入り!」「年増!」、ケルビーノ「スザンナ助けて~」、伯爵「いい加減私のものになってくれ」、バジリオ「ごきげんよう~伯爵にしなさいよ」、伯爵「皆が何を噂してるって?」辺りのドタバタ加減は殆ど見えなくても笑いっぱなし!セットを縦横無尽に使い切った演出で、字幕も可笑しくて劇場中が大爆笑の連続でした。「フィガロの結婚」のこういう畳み掛けるような展開は良い演出で見ると本当に面白いですね♪

ドタバタの1幕から一転、2幕が始まると、フィガロの部屋とは別世界の、広くて明るい夫人の部屋に音も無くへんし~ん。この公演は、久しぶりに舞台転換の見事さに感心しました。さすがは流れを止めないマクヴィカー。この夫人の部屋は、広くて静かで落ち着いていて、あんなドンちゃん騒ぎがあった同じ屋敷とは思えません(笑)ここでの伯爵夫婦のやり取りは真面目も真面目、ちょっとしたユーモアのかけらすらも感じられません。特に伯爵は物凄い勢いで嫉妬していて、カッとなって夫人を平手打ちまでしちゃってちょっとビックリ!正に「あの愛の日々はどこへ?」でした。これくらいやってしまうと、この後女性陣に「疑り深い人は…」といじめられても同情する余地はないですね。それにしても、この嫉妬魔の伯爵の印象が強すぎてフィガロは一体どこへやら?というのは問題じゃないかと思うんですけど(笑)

休憩の後の第3幕の前半は、長机のある伯爵の書斎のような場所で繰り広げられます。左の写真は眼鏡をかけて書類を読む伯爵に嘘の約束を取り付けるスザンナ。この後の伯爵の「訴訟に勝ったと?」は、再び烈火のように怒っている伯爵の大迫力にタジタジ(^_^;)フィンリー怖すぎだよ~。後半、庭のシーンは背景に屋敷の外壁が置かれて、その前に広く取られたスペースに様々な小道具が置かれてそれぞれの登場人物のアリアを盛り上げます。最初に上から落ち葉が雪のように降ってくる以外はあまり動きの無い単調な舞台ですが、その代わり歌手が色々と動いてくれるので、最後まで退屈することはありませんでした。フィナーレは、深い哀しみに沈む夫人に本気で謝る伯爵と、その後の「私は広い心で許しましょう」という夫人が熱烈なキスを交わします。周りの人達も「やれやれ、一件落着」とほっとした表情で見守っているこのシーンはとても気に入りました(^o^)こういう演出だと、あの最後の重唱も素直に楽しめますよね。ここで既に2人の関係は冷え切っていて体面だけを取り繕うような演出もありますが、このように伯爵が自分の行動の愚かさに気づいて夫人の元に帰ってくる方が私は好きです。

歌手はイメージにぴったりの豪華キャストだったと思います。特に、とことんシリアスで冗談の通じない伯爵のフィンリーは、歌も演技も素晴らしい。

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